家の中に黒い蛾がいることはないだろうか。よく考えてみれば、蛾は他の昆虫類と比べても、得体のしれないところがあり、いきなり遭遇するとびっくりしてしまうのではないだろうか。
昆虫専門家でもない限り、蛾に関する知識が、我々一般人には乏しい。
そんな、謎に包まれた「黒い蛾」について、専門家の文献を引用しつつ、紐解いていきたいと思う。
黒い蛾は・・
- 家の中にいる小さな黒い蛾とは(画像あり)
- 食品への害が大きいメイガ
- 大量発生するメイガ
- 毒をもっているドクガ
- 蛾の駆除方法
- 黒い蛾の幼虫の判別(画像あり)
ノシメマダラメイガの幼虫
ドクガの幼虫 - メイガの駆除方法
- ドクガの駆除方法
- 黒い蛾のスピリチュアルな意味合い
- 蛾と蝶は一緒?
- 擬態がもたらす神秘性
- 黒い蛾のスピリチュアルな意味合いは蝶と同じ?
家の中にいる小さな黒い蛾とは(画像あり)
家の中にいる黒い蛾について、「家屋害虫」というキーワードで検索し、漆黒ではなく、どちらかといえば黒い蛾も含めて調べてみると、小型の蛾、メイガという種類の蛾がよく出現する。
それぞれについて、害の内容、家で大量発生する可能性を調べていくこととする。
- 食品への害が大きいメイガ
- 大量発生するメイガ
食品への害が大きいメイガ
メイガの中でもノシメマダラメイガとよばれる蛾は、食品への被害が比較的小さい蛾である。
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構の食品害虫図鑑によると、穀類、小麦粉などの穀粉、油分の多い乾燥加工食品などを食べてしまうので、害の大きい蛾である。幼虫は、包装容器を食い破って侵入する。
家庭でも、食品を保存しているところで発生するケースもあるようだ。一般家庭にも脅威だが、農家にとっては大敵である。
駆除方法は、殺虫剤メーカーは直接的な殺虫剤や米びつの中に入れる防虫剤をすすめているが、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構は、根本的な対応策を提示している。
清掃や食品の低温管理を軸に、米の乾燥・調製・貯蔵施設で最も発生頻度が高い害虫のため農家向けには、貯蔵の仕方もアドバイスしている。
以下、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構の食品害虫図鑑から、ノシメマダラメイガの形態を引用する。画像とともに判別のヒントにしていただきたい。
【卵】長径が0.4mm内外の楕円形。乳白色。
【幼虫】老齢幼虫の体長は10mm-12mm。頭部は茶褐色、腹部は系統や環境により黄白色、淡赤色、淡緑色など。
【蛹】体長は8mm前後。黄褐色。
【成虫】体長7-8mm。翅を広げると14mm内外。頭部は紫赤色、腹部は灰白色、 前翅の基半分は淡黄色、灰褐色で仕切られたあと半分は赤褐色。
参考:アース製薬
大量発生するメイガ
ノシメマダラメイガもそうだが、メイガは食品がある場所で発生するので、家の中も含めて大量発生する可能性がある。
山梨県の衛生環境研究所にわかりやすい資料があったので画像を引用する。
このように、食品がきっかけに発生するため、家の中でも大量発生することがある。
また、メイガは耐熱性と耐寒性があること、年3回から5回の発生機会があることが、家屋の大量発生につながっている。
毒をもっているドクガ
ドクガはその名の通り、毒毛針(どくしんもう)をもっていて、大きさは大小さまざまなことが特徴である。
国土交通省の国土技術政策総合研究所が提供している「公園管理者のための生物被害対処ガイド」によると、毒を持っている蛾は、「イラガ科」と「ドクガ科」に分かれるが、特にドクガ科は卵、幼虫とその脱皮殻、蛹、成虫のすべての段階で毒針毛を持っており、通年で気をつけなければならない。
なお、代表的なドクガの画像を、岐阜聖徳学園大学教育学部川上研究室の理科教材データベースより引用し、下記に掲載する。判別に役立てていただきたい。
また、ドクガが発生した場合は、地方公共団体のホームページでも掲載されることがある。自分の住んでいる地域で発生している場合は気を付けていただきたい。
蛾の駆除方法
家屋や身近な場所で蛾が大量発生するなどした場合の、蛾の駆除方法について、以下のポイントで確認していきたい。
- 幼虫の判別
- メイガの駆除方法
- ドクガの駆除方法
黒い蛾の幼虫の判別(画像あり)
成虫ではなく、幼虫の段階で発見できれば、被害を食い止めることもできる。
さまざまな資料から、画像を引用していく。幼虫の判別に役立てていただきたい。
ノシメマダラメイガの幼虫
画像引用:国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構の食品害虫図鑑
ドクガの幼虫
画像引用:岐阜聖徳学園大学教育学部川上研究室の理科教材データベース
メイガの駆除方法
ノシメマダラメイガが家屋内で発生した場合の駆除方法は、比較的容易である。市販の殺虫剤などで効果が期待できる。ただし、卵や幼虫は小さいため、発生場所の食品(米、乾燥食材など)ごと廃棄した方がよい。
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構の食品害虫図鑑には、メイガの駆除方法が詳しく掲載されている。
【家庭で発生した食品害虫の殺虫方法】
◆ 廃棄
虫の発生した食品に直接殺虫剤を噴霧することは、健康のためにもお勧めできません。 たくさんの虫が発生している場合は、食品を廃棄するしかありません。
◆ 冷凍殺虫
食品が少量で虫の発生が少ない場合は、冷凍殺虫することが出来ます。しかし、冷凍殺虫後、死体を食品から取り出す必要があります。小さな卵や幼虫を完全に取り出すのは難しいでしょう。
こういった殺虫後の食品を食べる場合は、虫が完全に取り除けていないことを覚悟する必要があります。覚悟ができない場合は廃棄した方がいいでしょう。
◆ 高温殺虫
昆虫類は60℃以上の温度で数分間処理をすると効果的に殺虫できます。しかし、冷凍と同様に虫の死体は残りますので、取り除く必要があります。
◆ 電気掃除機
食品から発生したコクゾウムシが歩いている、あるいはノシメマダラメイガの成虫が飛んでいるといった場合は、「電気掃除機」で吸い取り、ゴミ袋ごと捨てるという方法が簡単です。
数日間はこまめに吸い取ることで、成虫が新しい食品を食害したり、産卵したりすることを防止できます。
◆ 直接薬剤
貯穀害虫に直接薬剤を用いる場合は、市販されているスプレーと呼ばれるエアゾール剤やゴキブリ用のくん蒸剤を使って殺虫できます。
◆ トラップ
餌や性フェロモンを用いたトラップも市販されており、発生初期の貯穀害虫を発見することができます。
ただし、性フェロモントラップが市販されている害虫種は限られていますので、殺虫という点では効果はあまりありません。
このように比較的駆除は簡単だが、卵や幼虫は小さいため、できるだけ食品ごと廃棄することをお勧めする。
ドクガの駆除方法
ドクガは、触れずに駆除する必要がある。
なぜなら、毒毛針(どくしんもう)という毒を持っているからだ。
新潟県柏崎市のホームページには、ドクガの幼虫の駆除方法を紹介している。
画像引用:新潟県柏崎市のホームページ
北海道札幌市のホームページには、ドクガの成虫の駆除方法を紹介している。
画像引用:北海道札幌市のホームページ
注意点としては、卵、幼虫、成虫、そして死骸にも、毒毛針がついているため、決して触れてはいけない。
なお、万が一触ったり、刺された場合の対処方法として、国土交通省の国土技術政策総合研究所が提供している「公園管理者のための生物被害対処ガイド」から、対応策を引用しておく。
〈刺されたときの対処・応急手当等〉
- 粘着テープを何度も当てる、水で洗い流す等して、毒棘や毒針毛を取り除く。
- 痒みがあっても、かいたりこすったりしない(毒針毛は肉眼では見えず、こすると症状が広がる恐れがある)。
- 目に入ってしまったときは、こすらず流水で洗い流す。
- 抗ヒスタミン成分含有のステロイド軟膏があれば、患部にそっと塗る。
- 痒みや腫れがひどい場合は、医療機関(皮膚科)を受診する。
黒い蛾のスピリチュアルな意味合い
海外も含めて、蛾は神秘的に捉えられることが多い。例えばフランスでは、蝶と蛾を区別せず、「Papillon(パピオン)」というように、蛾と蝶を区別しないことから、蝶と一緒に神秘的に扱われる文化もある。
なぜ、蛾や蝶にスピリチュアルな意味合いがあるのか考察してみたい。そして、蛾のもつスピリチュアルな意味合いは何なのか、調べてみたいと思う。
蛾と蝶は一緒?
蛾にスピリチュアルな意味合いがあるのは、蝶の影響を受けている(正確に記述すると、蝶と蛾は分類が同じだという影響を受けている)のではないかと推察する。
なぜなら、前述のとおり、文化的に蛾と蝶は区別されない文化がある。また生物分類学的にも、蛾も、そして蝶も鱗翅目(りんしもく)と言われる同じ分類である。
このように、文化的にも生物学的にも、蝶と蛾が区別されていないことが、蛾に蝶と同じ神秘性をもたらす結果になっているのではないか。
擬態がもたらす神秘性
蛾にスピリチュアルな意味合いがあるのは、擬態(背景と同化したり、葉っぱなどにそっくりまねたりすること)という習性が、人々を引き込む神秘性があるからではないか、と推察する。
農業・食品産業技術総合研究機構の鈴木誉保氏の2016年の論文によると、
蝶や蛾の翅の模様は多様に富み,特に枯葉や樹皮などへの擬態模様は多くの人々を魅了してきた
このように、擬態という形や色、模様の多様性ということ自体が、神秘的なのではないだろうか。
黒い蛾のスピリチュアルな意味合いは蝶と同じ?
調べてみると、蛾のスピリチュアルな意味合いは、蝶と同じであるか、あるいは蝶と一緒に語られることが多い。
蝶と同じように幸運をもたらすような意味合いもあれば、蛾には、金運があるという運のよさそうな意味合いもある。一方で今は自己中心的になっているので気をつけた方がよいといった意味合いもあるようだ。
スピリチュアルな意味合いを実際に調べてみても、蛾と蝶が一緒に扱われることが多い。
総括:黒い蛾について
身近に存在しているものの、他の昆虫類に比べて知識に乏しい蛾。
大量発生したり、食べ物に害をもたらしたり、あるいは毒を持っていたりと、ネガティブな側面もあるが、一方、蝶とともに語られ、スピリチュアルな意味合いも持っている。
まだ分類できていない蛾や、昆虫と成虫が同定できていない種もあるなど、まだまだ研究途中の種類も存在している。
正しい知識をアップデートし、害になるようであれば正しく対処することが必要だが、蝶と同じようなスピリチュアルな意味合いを感じて、楽しみをもって鑑賞することもひとつの楽しみ方かもしれない。
本記事を見ている人は次のページも読んでいます