ネルソン・マンデラという人物がいる。
南アフリカ共和国の政治家で、弁護士でもあった。ネルー賞やユネスコ平和賞、アフリカ賞、サハロフ賞、レーニン平和賞、ノーベル平和賞などなど、さまざまな賞を受賞している人物だ。
南アフリカの指導者として、多くの人に支持されていたが、2013年に95歳で亡くなっている。
そんな彼にまつわる奇妙な話がある。
彼が1980年代に死亡したという記憶を持っている人が大勢現れたのだ。ただ、死んだというだけでなく、その後に起こった出来事まで同じように記憶していたのだ。
このように事実と異なる記憶を不特定多数の人が共有している現象をマンデラ効果(マンデラエフェクト)と呼ぶ。
マンデラ効果は学術的なものではなく、都市伝説のようなものだが、このネルソン・マンデラの話以外にも、さまざまな事例がみられる。
ここでは、どうしてマンデラ効果が起こるのか、その発祥の経緯と、さまざまなマンデラ効果の事例を紹介していく。
記事の内容
- マンデラ効果の定義
- マンデラ効果の普及
- マンデラ効果が起こる理由や例
- ミッキーマウスの例
- マンデラ効果の例:アニメ編3つ
1.ピカチューのしっぽの先の色は?
2.おさるのジョージにしっぽがある?
3.巨人の星のオープニングで星飛雄馬は重いものを引いていた? - マンデラ効果の例:映画編3つ
1.羊たちの沈黙
2.白雪姫
3.スター・ウォーズ - マンデラ効果の例:日本編3つ
1.ファンタ・ゴールデンアップル
2.キットカット
3.ドラえもん - 地図におけるマンデラ効果の例
- 歴史におけるマンデラ効果の例
- ツイッターに見られるマンデラ効果
- 事前知識による補填が原因か
- 総括
マンデラ効果の定義
マンデラ効果とは、大勢の人々が事実と異なる記憶を共有している現象を指す俗語である。
マンデラ効果を提唱したフィオナ・ブルームによると、情報源が一切存在せず、社会的・地理的に関わりない不特定多数の人によって記憶が共有されていることがマンデラ効果の要件となっている。
そのため、限られた集団の中でだけ信じられているような共同幻想などは、これには含まれない。
マンデラ効果=多くの人々に印象付けられた集合的記憶の表象(象徴化された記憶像)が、関連する記憶に干渉して起きたもの。
集団的表現:Collective representations elicit widespread individual false memories
マンデラ効果の普及
フィオナ・ブルームはアメリカの超常現象研究家である。
彼がイベントスタッフから聞いたマンデラ獄中死の話は、事実は矛盾する架空のものであったが、追悼式の様子やマンデラ夫人の演説、その後の南アフリカ各地で起こった暴動など、さまざまなエピソードを共有している人たちがいた。
フィオナ・ブルームは「The Mandela Effect」というサイトを開設し、似たようなエピソードがないかどうか募集したところ、同じような経験を持つ人たちから多数のコメントが寄せられた。
その後、2015年に子供向け絵本の『バーンスタインベアーズ』のスペルを誤って記憶していた人が相次いで現れたことにより、マンデラ効果がネット上で普及していった。
マンデラ効果が起こる理由や例
マンデラ効果が起こる原因は、いくつかの説が出ているが、決定的な定説は確立されていない。
その中で有名なのがパラレルワールド説だ。
パラレルワールドとは、ある世界(時空)から分岐して、それに並行して存在する別の世界のことだ。並行世界、並行宇宙、並行時空とも呼ばれている。
つまり、別の時空にもう1つの現実が存在するという考えだ。SFではポピュラーなアイディアとなっている。マンガや映画などで見たことがある人も多いかもしれない。
今と同じような世界がどこか別に存在しているのだが、細かいところに違いがある。そうした別の世界から無意識のうちにこちらの世界に移動してきた結果、自分の記憶とこちらの事実が違うという現象が起こってしまう。
自分の時空ではそうだったのに、こちらの時空では違っていたということだ。
しかし、他はほとんど元の時空と変わりがないため、自分が別の時空から移動してきたという意識はない。同じ時空から移動してきた人が何にもいるため、同じような記憶を持っているというわけだ。
何とも不思議な話である。
もちろん、こういった考えがすべての人に受け入れられるわけではない。懐疑主義の人たちは、人間の記憶の不確かさからくる虚偽記憶だと主張している。
虚偽記憶とは、実際に起こっていないはずのエピソードに関する記憶のことだ。
記憶を定着する際に、脳内で無意識に捏造してしまったり、似たようなエピソードと混同して記憶してしまったのではという可能性が指摘されている。
ミッキーマウスの例
有名なマンデラ効果の例として挙げられるのがミッキーマウスだ。
ここで自分の記憶を探ってみて欲しい。ミッキーマウスが履いているズボンにサスペンダーはついているだろうか。
正解は「ついていない」だ。
もし、頭の中で思い描いたミッキーマウスがサスペンダーつきの半ズボンを履いていたならば、マンデラ効果の可能性がある。
ネット上を検索してもらうと分かるのだが、ディズニーの公式の画像で、サスペンダーがついたズボンを履いたミッキーマウスの画像は1つもない。そのため、昔はついていたけれども、今はついていないというわけでもないのだ。
それにも関わらず、サスペンダーをしていたと記憶している人は多い。
マンデラ効果の例:アニメ編3つ
今度はアニメに関するマンデラ効果の例を紹介する。
果たして自分の記憶が正しいかどうか、確認してみて欲しい。
1.ピカチューのしっぽの先の色は?
大人気ゲーム『ポケットモンスター』。アニメにもなっており、たくさんの劇場版も公開されている。
ポケモンには、さまざまなモンスターが登場するが、中でも人気があるのがピカチュウだ。誰でも一度は見たことがあるだろう。
では、ピカチュウのしっぽは何色だろうか。
- すべて黄色
- 先が黒色
正解は「すべてが黄色」である。
しっぽの先に黒のギザギザがあったと記憶している人はいないだろうか。
2.おさるのジョージにしっぽがある?
『おさるのジョージ』は子供向けの人気アニメである。おさるのジョージと黄色い帽子をかぶったおじさんの暮らしを描いたほほえましいアニメだ。
では、おさるのジョージにしっぽはあっただろうか。
- しっぽがある
- しっぽがない
正解は「しっぽがない」である。
それにも関わらず、木の枝にしっぽをくくりつけているジョージの姿がイメージできないだろうか。
3.巨人の星のオープニングで星飛雄馬は重いものを引いていた?
『巨人の星』の主題歌に「思い込んだら」という歌詞がある。
これを「重いコンダラ」と聞き間違えて、「コンダラ」という重いものを星飛雄馬が引いていたと記憶している人がいる。そのため、『巨人の星』のオープニングで、星飛雄馬が何か重いものを引いていたと記憶している人がいるかもしれない。
しかし、実際はオープニングで星飛雄馬が重いものを引いているシーンは一切ない。「コンダラ」どころか、整地ローラーや古タイヤを引いているシーンもないのだ。
ただし、本編の中で、主題歌をテーマにローラーを引いているシーンがあり、それを記憶違いしているという説がある。
マンデラ効果の例:映画編3つ
映画の中にもマンデラ効果の例がいくつかある。
あなたの記憶とよく照らし合わせて欲しい。その記憶は、本当に現実のものだろうか。
1.羊たちの沈黙
『羊たちの沈黙』は、天才的な頭脳を持つレクター博士が有名である。彼は犯罪者でありながら、獄中からFBIにアドバイスをするほどの人物だ。
そんなレクター博士の有名なセリフとして「ハロー、クラリス」がある。
レクター博士がクラリスと初めて会ったときに言ったセリフと記憶している人もいるかもしれない。
実はこんなセリフはないのだ。
実際のセリフは「グッドイブニング、クラリス」なのだが、なぜか多くの人が「ハロー、クラリス」だと思い込んでいる。
2.白雪姫
『白雪姫』の有名なセリフと言えば「鏡よ鏡、鏡さん」だ。
壁にかかった鏡に対して、このように呼びかけながら、誰が一番美しいのか尋ねているシーンが思い浮かぶかもしれない。
しかし、劇中にはこのようなセリフは出てこない。
実際は「壁にかかった魔法の鏡よ」であり、もっと命令口調なのだ。
それにも関わらず、多くの人が「鏡よ鏡、鏡さん」というセリフを記憶している。
3.スター・ウォーズ
『スター・ウォーズ』の人気キャラクターとしてロボットのC-3POとR2-D2がいる。シリアスなシーンが続く中で、デコボココンビの2人のやり取りは見ていて微笑ましい。
C-3POといえば全身金色のイメージだが、実は右足の下は銀色なのだ。
それにも関わらず、2015年に公開された『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』を見た観客は、C-3POの右足が銀色のことに違和感を覚えたようだ。
しかし、実際に映画でC-3POを演じていた俳優アンソニー・ダニエルズ氏は、初めから足は銀色だったと言っており、多くの観客が記憶違いをしていたことになる。
マンデラ効果の例:日本編3つ
日本人に馴染みがあるマンデラ効果の例には、以下のようなものがある。
あなたの記憶は、正しい記憶、マンデラ効果の記憶のどちらだろうか。
1.ファンタ・ゴールデンアップル
今での定番ジュースであるファンタ。
グレープやオレンジといった定番のものから、期間限定のものまで、さまざまな味が発売されている。
その中の1つにゴールデン・アップル味がある。
ゴールデン・アップル味は確かに存在しているのだが、なぜか多くの人が発売されたよりもずっと前に存在していたと記憶しているのだ。
実際に発売されたのは1990年代なのだが、それよりも10年以上前に飲んだことがあるという人が数多くいる。
2.キットカット
ロングセラーのお菓子、キットカットにもマンデラ効果の話がある。
キットカットのロゴを想像してみて欲しい。
KitKatだろうか、Kit-Katだろうか。
正解はハイフンが入っていないKitKatである。
それにも関わらず、真ん中に横線が入っていると記憶している人が多い。
3.ドラえもん
国民的人気アニメ『ドラえもん』は、長く続いているせいもあり、さまざまな都市伝説が存在している。
マンデラ効果として知られているのが「タレント」と「行かなきゃ」だ。
「タレント」は、内容も作画もめちゃくちゃだ。のび太とドラえもんが地下世界に行く。地下世界で案内人に連れられて地球の模型の前に立つと、それが真っ二つに割れて赤い液体が流れて終わりというものである。
これだけ意味不明のエピソードにもかかわらず、1984年7月20日に見たと記憶している人が多くいる。日付までが一致しているのが何とも不気味である。
「行かなきゃ」では、深夜にオープニングもなく、いきなり本編が始まり、のび太が1人でずっと歩き続けている映像が流れる。それが10分ほど続き、のび太が少し振り返って「行かなきゃ」と一言だけ言って終わってしまう。
まったく謎のストーリーなのだが、放送された日が藤子F不二夫先生が亡くなった日と言われており、追悼の意味を込めて放送されたのではとも言われている。しかし、実際にマスコミが藤子先生の訃報を放送したのは、その翌日であり、矛盾が指摘されている。
地図におけるマンデラ効果の例
地図に対してマンデラ効果を感じる人も多い。
有名なものでいうと、オーストラリアの位置だ。
世の中には「オーストラリアの場所はもっと右側にあった」と感じる人が一定数いる。
つまり昔見ていた地図と今の地図に違いがあるというのだ。
しかし、実際にオーストラリアが右側にある地図を探してみても、そういったものが見つかることはない。
もし地図図法の違いや測量の誤りがあったならば、オーストラリアの位置が違う地図があってもおかしくはないはずだ。
かなりの人が「オーストラリアはもっと右にあった」と感じるものの、実際にそのような地図は見つからないことから、これもマンデラ効果の一環であると考えられる。
歴史におけるマンデラ効果の例
アメリカの大統領であるジョン・F・ケネディは1963年11月22日に暗殺されている。
当時、彼はテキサス州のダラス市内を車でパレードしており、そこを銃撃されている。世界的にも有名な事件のため、映像などで見たことがある人も多いだろう。
このときケネディ元大統領を乗せていた車は何人乗りだっただろうか。
車が4人乗りだったと記憶している人は、マンデラ効果の可能性がある。
実際に彼が乗っていた車は6人乗りだった。
当時の映像を見ると、車が6人乗りだったことが確認できるはずだ。
ツイッターに見られるマンデラ効果
ツイッターを見ると、今でもさまざまなマンデラ効果について知ることができる。
昨日、小林亜星さんの訃報を聞いて、何年か前に亡くなられた記憶があったから、あれ?と思っていたら、同じことを思っている方々がいた!!
(フォロワーさんのRTで知った)— ほほこ (@shizen_ga_suki) June 15, 2021
小林亜星さんには大変申し訳ないんですが
めっちゃマンデラ効果すぎてビビった……こわいこわいこわいこわい。
ワイの時空が歪んでる……
— SS🌲🌲🌲💎 (@ss_ss47324989) June 14, 2021
俺も尻尾の先端が黒いピカチュウを探してんだがな
他にも見たって言ってる奴がいるんだ
それをマンデラ効果など
#速報が流れた時間— 黒威 (@Schwarzen_Ei) June 12, 2021
大山のぶ代さんって、アルツハイマーで亡くなったんじゃ! えっ? 生きてらっしゃるの? 完全にマンデラ効果の…世界線変わってる? 不思議。
— せつよHSP (@nashinashiyouna) June 16, 2021
事前知識による補填が原因か
マンデラ効果が起こる原因として、考えられている要因のひとつが事前知識による補填だ。
たとえば先述したC-3POの場合、多くの人は彼の上半身に注目して、それだけを記憶していることが多い。
そうすると「上半身が金色のため、下半身も同じように金色だろう」という一般的な事前知識を使って、記憶を作ってしまうのだ。
同じようにピカチュウの場合も顔だけを記憶していることが多く、「耳の先が黒だから、尻尾の先も黒だろう」と勝手に思い込んでしまうのだ。
現代はネットを使えば正しい情報はいくらでも手に入れられるにも関わらず、このような誤った記憶を多くの人が共有しているのは、とてもめずらしい現象であるといえるだろう。
このような不鮮明な記憶を推測で補ってしまう脳のメカニズムは、以前からも確認されている。
マンデラ効果は、そういった脳のメカニズムが引き起こす現象なのかもしれない。
総括:マンデラ効果について
事実がなかったにも関わらず、なぜかあったと記憶している不思議な現象がマンデラ効果だ。
今回挙げた実例の中に「自分もそう思っていた!」というエピソードがある人も多いかもしれない。むしろ、すべてが正しい記憶である人の方が少ない気もする。
まだまだ謎が多いマンデラ効果だが、どういった現象なのかの研究が進めば、何か新しい未来の扉が開かれるのかもしれない。
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