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世界三大絵画は時代と範囲の偏りが:近代以前の世界三大西洋画では?

世界にはさまざまな有名な絵画がある。

レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」、パブロ・ピカソの「ゲルニカ」、フィンセント・ファン・ゴッホの「ひまわり」などなど、タイトルを聞いただけで頭の中に思い浮かぶ名画も多い。

それでは世界三大絵画と聞くと、どの作品が思い浮かぶだろうか。

実は現時点で世界三大絵画に該当する作品は4つある。

その4つの中から、3つを選んで世界三大絵画と呼んでいるのだ。

では、どの作品が世界三大絵画に含まれているのか、詳しく見ていこう。

世界三大絵画

記事の内容

  • 世界三大絵画とは?
    エル・グレコ「オルガス伯の埋葬」
    レンブラント「夜警」
    ダ・ヴィンチ「モナリザ」
  • 世界三大絵画① ラス・メニーナス
    ラス・メニーナスを描いたベラスケス
  • 世界三大絵画② オルガス伯の埋葬
    オルガス伯を描いたエルグレコ
  • 世界三大絵画の2つはスペインにある
  • プラド美術館には世界三大絵画以外にも名画がたくさんある
  • 世界三大絵画の絵画は範囲が限定されている?

世界三大絵画とは?

まず確実に世界三大絵画に含まれるのは、ベラスケスの「ラス・メニーナス」だ。1656年に描かれた作品で、寸法は318cm×276cmで、現在はプラド美術館にある。

残りの2つは以下の3つの中から選ばれる。

  1. エル・グレコ「オルガス伯の埋葬」
  2. レンブラント「夜警」
  3. ダ・ヴィンチ「モナリザ」

エル・グレコの「オルガス伯の埋葬」は1586年~1588年に描かれた作品で、寸法は460㎝×360㎝で、サント・トメ教会にある。

レンブラントの「夜警」は1642年に描かれた作品で、寸法は363㎝×437㎝、アムステルダム国立西洋美術館にある。

レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」は1503年~1519年頃に描かれた作品で、寸法は77㎝×53㎝と他の3作品に比べると、だいぶ小さい。

ベラスケスの「ラス・メニーナス」はどの説でも含まれているため、世界三大絵画の組み合わせは以下のようになる。

Aパターン

  • ラス・メニーナス
  • オルガス伯の埋葬
  • 夜警

Bパターン

  • ラス・メニーナス
  • オルガス伯の埋葬
  • モナリザ

Cパターン

  • ラス・メニーナス
  • モナリザ
  • 夜警

ここからは世界三大絵画の中から、スペインにある「ラス・メニーナス」と「オルガス伯の埋葬」について詳しく解説していく。

世界三大絵画① ラス・メニーナス

ラス・メニーナス

「ラス・メニーナス」は、大型の油彩画で、現在はスペインのプラド美術館に所蔵されている。

1666年の目録には「家庭の絵」「王家一家」というタイトルで記録されており、宮廷の侍女たちのことを示す「ラス・メニーナス」という題がつけられたのは19世紀に入ってからといわれている。

画面中央で光に照らされているのはマルガリータ王女だ。王女の取り巻きである侍女や慰めものたちには、王女よりも少し柔らかい光が照らされている。さらに薄暗いところに付き人や、作者であるベラスケスが描かれている。こうした光の明度により、遠近感が表現されている。

遠目から見ると、髪の毛一本一本まで緻密に描かれているように思えるが、実際近くで見ると、素早い筆致で描かれていることが分かる。ドレスやリボンなどはかなり荒々しい筆致であり、印象の違いに驚かされる。

「ラス・メニーナス」はスペイン史上最高の名画とも言われており、多くの芸術家たちに影響を与えた。

中でもピカソは大きな影響を受けており、「ラス・メニーナス」から受けたインスピレーションをもとに58枚もの連作を制作している。

ラス・メニーナスを描いたベラスケス

「ラス・メニーナス」の作者は、バロックの巨匠であるスペインの画家、ディエゴ・ベラスケスである。

ベラスケスはスペイン南部の都市セビリアに生まれた。何をしても上手にこなすベラスケスに対して、最良の教育をと考えた両親は、11歳のときに画家のフランシスコ・パチェーコのもとに修行に出した。

パチェーコは、美術研究家でもあり、教養が高い理論家だったため、ベラスケスはさまざまな知識を吸収していった。

そうして、ベラスケスはパチェーコの娘であるファナと結婚する。さらに24歳のときに、フェリペ4世から肖像画を依頼される。

フェリペ4世は芸術に対して惜しみなく投資する王であった。フェリペ4世に気に入られたベラスケスは、巨匠ルーベンスと交流したほか、30代と40代のときにはイタリアを訪問して、どんどんキャリアを積んでいった。

イタリア滞在から戻ったベラスケスは王宮配室に就任する。そうして世界三大絵画となる「ラス・メニーナス」を描いた後、60歳でサンディアゴ騎士団の称号を獲得する。

しかし、画家としてだけでなく、王宮の重職も担うことになったベラスケスは過労により、翌年61歳でこの世を去ってしまう。

ベラスケスの功績を称え、「ラス・メニーナス」の中に描かれた彼の胸元には爵位を表す十字章が描き加えられた。

印象派の先駆者であるエドゥアール・モネはベラスケスのことを「画家の中の画家」と呼んでいる。

ベラスケス

世界三大絵画② オルガス伯の埋葬

オルガス伯の埋葬

「オルガス伯の埋葬」はマニエリスム最大の画家エル・グレコの最高傑作の1つと言われている。

タイトルにもなっているオルガス伯爵とは、サント・トメ聖堂の再建に尽くした人物で、1323年に没している。「オルガス伯の埋葬」は、このオルガス伯爵の逸話が題材になっている。

画面上部では、イエス・キリストに導かれて天上へと昇天していくオルガス伯の魂が描かれている。また、画面下部では当時の知識人や有力者たちに囲まれて埋葬されているオルガス伯の肉体が描かれている。

画面が二部されており、上部の天上の世界と下部の地上の世界を同時に表現しているところが特徴である。

また、描き方も上部では神秘的な雰囲気が描かれているのに対して、下部では現実的な描写で描かれている。マニエリスムの影響が強く、人体のプロポーションが引き延ばされており、ポーズが強調されている。

オルガス伯を描いたエルグレコ

エル・グレコはヴェネツィアやローマ、スペインで活躍した画家である。

1541年ギリシャのクレタ島に生まれ、ヴェネツィアやローマで暮らし、ヴェネツィア派の影響を受ける。

1572年には自分の工房を構えるが、この当時はほとんど個人向けの作品を手がけていた。

その後、30代後半にスペインのトレドに移住したエルグレコは、サント・ドミンゴ・エル・アンティグオ教会の祭壇画などを手がけることになる。しかし、彼の暗い色調や引き延ばされた独特なプロポーションは批判を受けることもたびたびであった。

ついには当時の絶対的な権力者であるフェリペ2世の不興を買ったことで、宮廷画家への道が閉ざされることになる。

彼が脚光を浴びるようになったのは、セザンヌがエルグレコを評価したからであった。さらにはピカソたちが独自性を評価したことで、スペイン絵画史上初の偉大な著名人と呼ばれるようになる。

エルグレコ

世界三大絵画の2つはスペインにある

世界三大絵画に選ばれている4作品のうち、2点はスペインにある。

ベラスケスが描いた「ラス・メニーナス」があるのはマドリードのプラド美術館だ。

プラド美術館には、スペイン王家のコレクションを中心に、幅広いヨーロッパ絵画が展示されている。約8,000点以上の油彩画、約1,000点の彫刻、約4,800枚の版画、約8,200枚の素描、さらには多くの美術史に関する書類が収められている。

エルグレコが描いた「オルガス伯の埋葬」はサント・トメ教会にある。

サント・トメ教会は12世紀にアルフォンソ6世が建造した教会である。当時、荒廃していた教会をオルガス伯爵が私財を投じて、14世紀に再建した。

このオルガス伯爵の逸話にちなんで描かれたのが「オルガス伯の埋葬」である。エルグレコの最高傑作とも言われ、サント・トメ教会の1番の見所だ。

マドリード

プラド美術館には世界三大絵画以外にも名画がたくさんある

スペインのマドリードにあるプラド美術館は、数々の重要な傑作が収蔵されている。

その中の1つがベラスケスの「ラス・メニーナス」である。もちろん、それ以外にもたくさんの名画がある。

中でもフラ・アンジェリコの「受胎告知」は人気だ。

受胎告知とは、聖母マリアがキリストを妊娠したことを天使ガブリエルによって伝えられている出来事のことである。宗教画の中でも人気があるシーンで多くの画家がこの場面を描いている。

画面左には、人類の始祖であるアダムとイブが描かれている。彼らは禁断の知恵の実を食べたことで、エデンの園を追放されている。

アダムとイブを「原罪」として描くことで、「無原罪」の聖母マリアが引き立つような構図になっているのだ。

ちなみに人気のファミレス、サイゼリヤにもフラ・アンジェリコの「受胎告知」が飾られている。ただし、プラド美術館にある作品とは別の作品である。

プラド美術館

世界三大絵画の絵画は範囲が限定されている?

世界三大絵画と言われているのは、ベラスケスの「ラス・メニーナス」、エル・グレコの「オルガス伯の埋葬」、レンブラント「夜警」、ダ・ヴィンチ「モナリザ」の4点だが、「あの作品は入らないの?」と感じる人も多いかもしれない。

たとえば、ミケランジェロの「最後の審判」などは、多くの人が傑作と認める作品だ。しかし、世界三大絵画はあくまで「絵画」のため、壁画の作品は対象外なのだそうだ。同じ理由ではダ・ヴィンチの「最後の晩餐」も候補から外れている。

また、気になるのがすべて西洋画であるという点だ。

世界三大絵画といいながら、すべてがヨーロッパに偏っている。日本を代表する葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」などが候補に入っていてもおかしくない。

さらに時代の偏りも気になるところだ。

世界三大絵画に挙げられている4点は、すべてルネサンスからバロックにかけて描かれたものである。その後に登場するゴッホやゴヤ、ピカソなどはまったく候補に挙がっていない。

それらを踏まえると「世界三大絵画」と言うよりかは、「近代以前の世界三大西洋画」といった方がふさわしい気もするが、どうだろうか。

総括:世界三大絵画について

世界三大絵画についてまとめておこう。

世界三大絵画と呼ばれる作品は4点ある

  1. ベラスケス「ラス・メニーナス」
  2. エル・グレコ「オルガス伯の埋葬」
  3. レンブラント「夜警」
  4. ダ・ヴィンチ「モナリザ」

この中から選んだ3点が世界三大絵画と呼ばれている。

ただし、改めてそれぞれの作品を見てみると、近代以前の作品しかなかったり、西洋画しかなかったりと、「世界」と題するには範囲が偏っていることが分かる。

もちろん、だからといって上記の作品が悪いということはまったくない。どれも傑作であることは多くの人が認めるところだろう。

時代の範囲を広げて、世界中から作品を選ぶなら、あなたはどの3点を選ぶだろうか。

 

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