働き方改革により、広がりを見せている「副業」
自社社員の副業を認める会社もでてきており、さらなる広がりが予想される。
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン(令和2年改定分)」では、自社社員の副業に対する企業の基本的な対応として、原則、副業を認めることが適当であるとしている。
このように、今後、副業は働き方の選択肢のひとつとして広がっていくだろう。
しかし、目につくのは、自社の正社員に対しての、副業の可否についての話題が多い。雇用形態が多様化しているにもかかわらず、正社員(期間の定めのない雇用契約を結んでいる社員)以外の雇用形態について、副業の可否はあまり語られない。
例えば「派遣社員は副業可能なのか」、そういう疑問をもっている派遣社員の方もいるだろう。
当記事では、大手派遣会社のテンプスタッフを例に、派遣社員の副業について解説していきたい。
記事の内容
- テンプスタッフは副業可能?
- 就業規則で副業に関する規定があるか
派遣お役立ちコンテンツ - テンプスタッフで副業OKの求人は存在するか
ジョブチェキ - テンプスタッフの副業:雇用形態による違い
- 無期雇用社員の副業について
funtable(ファンタブル) - 契約社員の副業について
- テンプスタッフで副業した場合の対応
- 副業した場合の年末調整
国税庁のホームページ - テンプスタッフ以外に、業務委託やクラウドワーカーとしての収入がある
テンプスタッフ以外に、給与収入がある - 育休中に副業した場合
テンプスタッフの登録者向けの情報 - 副業としてアルバイトを掛け持ちした場合
- テンプスタッフの副業について総括
テンプスタッフは副業可能?
テンプスタッフの派遣社員は、副業が可能かどうかについて検証したが、明確なものは確認できなかった。
そのため、下記の観点で、副業の可能性を検証してみた。
- テンプスタッフの就業規則で副業に関する規定があるか
- テンプスタッフで「副業OK」の求人が存在するか
就業規則で副業に関する規定があるか
テンプスタッフの派遣社員としての就業規則に、副業に関する規定があるのかは、確認できなかった。
推測になるが、派遣先の仕事に支障をきたしてしまう副業は避けてほしい、という思いがあるのかもしれない。そのため、派遣社員の就業規則に副業の規定があった場合、その旨が記載されている可能性がある。
テンプスタッフが、派遣社員、および派遣登録者、これから登録しようとしている人に広く公開している「派遣お役立ちコンテンツ」によれば、副業を選ぶ際に気をつけたいポイントとして解説しているのは、下記のとおりである。
このように、テンプスタッフの派遣社員としての就業規則に、もし副業に関する規定があれば、派遣社員としての業務に支障をきたさないようにするという規定がある可能性がある。
テンプスタッフで副業OKの求人は存在するか
テンプスタッフのお仕事情報によれば、「副業OK」と標記されている求人が存在する。
テンプスタッフの求人検索サイト「ジョブチェキ」によれば、下記のとおり「副業OK」と標記されている求人がいくつか存在する。
週3日の就業や、午後からの就業など、フルタイム勤務でない求人については、副業が可能としている可能性があるのではないだろうか。
テンプスタッフの副業:雇用形態による違い
例えば、派遣社員以外の、テンプスタッフの無期雇用の社員、契約社員などといった、雇用形態/社員区分の違いによって、副業に対する留意点などは違いがあるのかもしれない。
結論からお伝えすると、明確な情報は得られなかったが、本章においても、情報に基づき推測していきたい。
- テンプスタッフの無期雇用の社員の副業について
- 契約社員の副業について
無期雇用社員の副業について
テンプスタッフで無期雇用の社員として働く場合の、副業に関する規定は確認できなかった。推測ながら、この雇用形態の場合、テンプスタッフはあえて副業を進める可能性は低いと推察する。
なぜなら、テンプスタッフの無期雇用の社員は、将来的には、派遣先の直接雇用されることをめざすからである。
テンプスタッフに、期限の定めなく雇用され、未経験から事務職へとチャレンジする、funtable(ファンタブル)によれば、下記のとおり、派遣先企業の直接雇用をめざすと明記されている。
就業規則上、副業が許可されるかどうかの情報は確認できなかったが、少なくとも、この雇用形態(funtable)であれば、テンプスタッフの社員である間に、スキルアップし、派遣先への雇用の切り替えをめざす意味合いから、テンプスタッフが無期雇用の社員に副業を強く進める可能性は低いと言えるのではないだろうか。
契約社員の副業について
テンプスタッフの契約社員としての副業については、情報はさらに少なく不明である。
テンプスタッフの派遣元社員(派遣先担当営業や派遣社員の登録、仕事へのアサインを担当するコーディネーターなど)の立場での契約社員の場合がある。
加えて、テンプスタッフ、およびグループ企業が「契約社員の人材紹介を行い、派遣先/紹介先の契約社員になる場合がある。
前者であれば、テンプスタッフの社員としての就業規則を確認しなければならず、後者であれば派遣先/紹介先の就業規則を確認しなければならない。
テンプスタッフで副業した場合の対応
仮に、テンプスタッフの派遣社員として就業し、副業を行った場合はどのように対応すべきだろうか。
特に、今まであまり副業や掛け持ちをしたことがない人であれば、基本的な事項を知っておく必要があるだろう。
本章では、下記の内容について、基本事項と、留意点を解説したい。
- 副業した場合の年末調整
- 育休中に副業した場合
- 副業としてアルバイトを掛け持ちした場合
副業した場合の年末調整
副業した場合は、テンプスタッフでの年末調整だけでは足りず、確定申告をする必要がある。以下、いくつかのケースで確認していく。
国税庁のホームページでは、確定申告が必要な人に対して下記のようにまとめている。参照しながら、以降の解説を確認していただきたい。テンプスタッフ以外に、「20万円以上」の収入がある場合、確定申告が必要である。
派遣社員として就業している人が副業した場合、わかりやすく該当するのは、下記(2)(3)のケースである。
テンプスタッフ以外に、業務委託やクラウドワーカーとしての収入がある
テンプスタッフの派遣社員としての収入以外に、業務委託契約(クラウドワーカー含む)など、仕事単位で請け負う仕事の収入が20万円以上ある場合、確定申告が必要である。
なぜなら、給与収入以外に所得が発生しているため、所得税の計算をしなおす必要があるからである。
昨今、クラウドワーカーや地方での副業など、さまざまな副業があるが、雇用されずに、仕事単位で請け負う仕事も多い。そのような場合は自分で売上と必要経費を記録し、確定申告を行う必要がある。
テンプスタッフ以外に、給与収入がある
テンプスタッフの派遣社員としての給与以外に、給与としての収入が20万円以上ある場合、確定申告が必要である。
なぜなら、年末調整は基本的に収入が多い方の会社1社でしかできないからである。そのため、所得税の計算を行い、確定申告で申告しなければならない。
「給与としての収入がある」ということは、テンプスタッフ以外にも雇用されて収入を得ているケースである。例えば、他の派遣会社で雇用され派遣会社として働く場合や、直接雇用されて、アルバイト、契約社員として働いているケースが該当する。
育休中に副業した場合
テンプスタッフの派遣社員として、就業期間中に育児休業を取得した場合の副業においては、下記に注意する必要がある。
- 休業中に受け取る賃金が通常の8割を超えないこと
- 1か月間の就労日数が10日(10日を超える場合は80時間)以下にすること
なぜなら、上記を超えてしまうと、育児休業給付金を受給するための資格を失うからである。
なお、テンプスタッフでは、産前産後休業・育児休業、また介護休業は取得できる。休業の本来の意味に立ち返り、無理のない範囲で副業を行うことをおすすめする。
テンプスタッフの登録者向けの情報では、福利厚生の情報として、下記休暇の取り扱いについて明言されている。参考にしてほしい。
副業としてアルバイトを掛け持ちした場合
テンプスタッフの派遣社員として働き、アルバイトを掛け持ちした場合は、上記でも触れたが、アルバイトの収入が20万円を超える場合は、確定申告が必要である。
なぜなら、年末調整は基本的に収入が多い方の会社1社でしかできないからである。そのため、所得税の計算を行い、確定申告で申告しなければならない。
「給与としての収入がある」ということは、テンプスタッフ以外にも雇用されて収入を得ているケースである。アルバイトも該当する。
総括:テンプスタッフの副業について
テンプスタッフでは、派遣社員が副業をする場合の就業規則上の規定など、明確なものはサーチできなかった。一方で副業可の求人もあり、明確に禁止していることでもなさそうである。
現在、国は副業を解禁するよう企業側に働きかけており、一人ひとりの収入を何とか増やそうとしている。
働く個人の側面においては、派遣社員であれ、正社員であれこの機会に副業を検討することは、選択肢のひとつとなり得るだろう。
一方で、派遣社員として副業する場合、副業が現在の派遣先での勤務に、悪い影響を及ぼしてしまうことは避けなければならない。また、確定申告の必要性の有無を確認し、対応を間違わないようにした方がいい。
しっかりと派遣社員としての責任、働く個人としての責任を果たしたうえで、副業を検討するようにしよう。