タレントやアイドル、アーティスト、クリエイターなどを応援するファンには、コアな層からライトな層まで、さまざまな熱中度の人がいる。
そんな中で、近年のインターネット上で話題になっているワードが「ガチ恋勢」だ。
単なるファンの域を超えて、応援対象に「ガチで恋をしている」人を指すこの言葉。
ガチ恋勢の実態や、界隈における扱い、ガチ恋勢が巻き起こした騒動などの情報をまとめてみた。
記事の内容
- ガチ恋勢とは
- 最近は配信者のガチ恋勢が話題に
- ガチ恋勢はファンの中でも特殊:賛否両論
- 「ガチ恋勢は気持ち悪い」という声も
- 迷惑行為が問題になることも
- 実際に起こったガチ恋勢のトラブル2つ
1.神楽めあによる「ガチ恋勢裁判」
2.小金井ストーカー刺傷事件 - ガチ恋勢と結婚について
ガチ恋勢は推しと結婚したい?
ガチ恋勢は推しの結婚を許容できる? - ガチ恋勢と推しの結婚を描いた漫画「ガチ恋粘着獣 ~ネット配信者の彼女になりたくて~」
- 自分が「ガチ恋勢」か診断してみよう
- 総括
ガチ恋勢とは
ガチ恋勢は、その名の通り「推し(応援対象)にガチで恋をしている勢力」のことを言う。
推しのビジュアルや作品、活動を単に応援しているだけでなく、推しのことを「本気で恋愛対象として見ている」のが一般的なファンとガチ恋勢の最大の違いだ。
もともとは男性ファンが女性アイドルなどに向ける言葉だったが、最近では女性のファンが男性アイドルやアーティストなどに向けて使うこともある。
女性ファン側の呼称としては「リアコ(リアルに恋してる)」というほぼ同じ意味のワードが元々あるが、近年では「ガチ恋勢」と「リアコ」の使い分けは曖昧になっている。
最近は配信者のガチ恋勢が話題に
なお、2020年7月のみのYouTubeスパチャ世界ランキングでは、トップ10のうち7人はホロライブになるっていう
もちろん会長1位やねんで!! pic.twitter.com/px5u82rV2p
— くみん@桐生会🐉会長愛してんで❗ (@qoolkumin) August 23, 2020
もともとタレント、アイドルなどのファンの間で使われてきた「ガチ恋勢」という言葉。あくまで一部の界隈だけで通じるワードだったが、この言葉が大きく知名度を広げたきっかけが、バーチャルYouTuber(Vtuber)をはじめとした動画配信者ブームだ。
Vtuberに関してはYouTubeスーパーチャット(スパチャ)の「投げ銭」が大きな注目を集めており、投げ銭だけで1億円以上を稼ぐ人気Vtuberも誕生。スパチャの世界ランキングTOP10のうち7組を日本のVtuberが占めたというニュースも出た。こうした応援、ある意味での「貢ぎ」においても存在感を発揮しているのが、ガチ恋勢である。
数千円、ときには一万円以上の投げ銭が平然と飛び交うトップVtuberのスーパーチャットは圧巻だ。
ガチ恋勢はファンの中でも特殊:賛否両論
推しに本気で恋をしているガチ恋勢は、一般的なファンとはまた違った価値観を持っていることが多い。
例として、アイドルなどのガチ恋勢の多くは「同担拒否」という文化を持っている。
これはSNSなどでファン同士が繋がる際に、「自分が最も推しているメンバーと同じメンバーを推しているファンとの繋がりを拒絶する(同じ担当を拒否する)」というものだ。
こうすれば、少なくとも本人の主観の範囲内では、自分以外に推しを応援している人を見なくて済む。
「推しには自分以外にも多くのファンやガチ恋勢がいて、一ファンでしかない自分には手が届かない……」という逃れようのない現実の中で、せめて目に見える部分では推しと自分だけの世界に浸りたい。そんな思いが込められたのが、この同担拒否という文化だ。
しかし、この文化が騒動を生むこともある。同担拒否について知らない同担ファンからSNSフォローをもらったガチ恋勢が、その相手に喧嘩腰で苦情を言ったりする例は多い。
エスカレートすると、そうした他のファンを自分のフォロワーの前に晒し上げたり、下手をするとわざわざ同担を探して喧嘩を売りに行ったりする「過激派」もいるそうだ。
こうした極端なガチ恋勢は全体のごく一部だろうが、注意しておきたい。
「ガチ恋勢は気持ち悪い」という声も
Vtuberのおっかけ、キモいを通り越してもはや怖いと話題に https://t.co/nxjTDN7ZH7 pic.twitter.com/bEZET5qSMT
— ゴルシウィーク@ウマ娘 (@gorushiweek) June 19, 2020
推しを純粋に応援しているファンの中には、「ガチ恋勢は気持ち悪い」と感じている人もいるという。
その理由として、一部のガチ恋勢が見せる空気の読めない言動が挙げられるようだ。近年はYouTubeの配信上でのVtuberガチ恋勢によるコメントが、そうした意見を呼ぶ例が目立つ。
「自分は推しから認知され、特別視されている」「自分だけは他のファンとは違う」「自分の推しへの思いは純粋に異性としてのもので、推しにもそれが伝わっている」という、ほぼ確実に当人の勘違いまたは思い込みだと考えられる思考。
こうした思考に至り、傍から見ると「痛い」コメントを書き連ね、注意されても一向に気づかない……このような異質なガチ恋勢によって、静かに推しを想っているだけの良識的なガチ恋勢にも風評被害が及んでいるのではないだろうか。
迷惑行為が問題になることも
ガチ恋勢の行きすぎた行為は、明確に推しに迷惑をかけることも多い。
前述の過激な同担拒否や、勘違いしてしまった痛いコメントがその典型例だろう。
これらは周囲に「怖い・不愉快だ」と感じさせるだけでなく、もっと深刻な被害をもたらすこともある。それが「ファン離れ」「ファンのコミュニティの崩壊」だ。
他のファンに恐怖心や不快感を与え続けるガチ恋勢がいると、被害を被った・またはその暴走を目にした他のファンは「〇〇は好きだけど、〇〇のファンは怖い人や変な人が多いから活動を追うのをやめよう……」と離れていくことがある。
そうした人が続出し、ファンのコミュニティそのものが崩壊する場合もある。さらに「〇〇のファンの民度が低いのは、〇〇がちゃんと管理していないせい」とタレントやクリエイター側に批判が及ぶこともあるそうだ。
実際に起こったガチ恋勢のトラブル2つ
ガチ恋勢によるトラブルには、ネット上で大きな話題を呼んだり、刑事事件に発展したりした例もある。
その例を見てみよう。
1.神楽めあによる「ガチ恋勢裁判」
Vtuberとそのガチ恋勢の騒動として有名なのが、人気Vtuber神楽めあによる「ガチ恋勢裁判」だ。
この裁判の「被告」となったのは、彼女のガチ恋勢として有名だったリスナー。多額のスパチャを投げるコアなファンである一方で、コメント欄を自身の大量のコメントで埋めるなどの行為が他のリスナーから顰蹙をかっていた。
さらに、他のVtuberに対してセクハラ発言を公然と行ったり、自分と他のリスナーを差別化しようとする言動をしたりと、モラルのない行為が問題視されていたそうだ。
それに対して、神楽めあは自身の配信で「裁判」を実行。ジョーク要素も強い裁判ではあったが、被告は配信者界隈では有名な悪質リスナーだったこともあり、大きな反響を呼んだ。
ガチ恋勢の「認知されたい」という欲求が暴走し、本人のモラルの欠如も合わさった結果、このような事態になったのだと考えられる。
2.小金井ストーカー刺傷事件
こちらはニュースなどでも大きく取り上げられ、全国的に有名になった事件。
当時芸能活動を行っていた女性に対して、ファンを自称する男がSNS上でのストーカー行為を執拗にくり返し、最終的にはライブハウス前で女性を待ち構え、包丁で襲った。
女性は意識不明の重体に陥るものの後に意識回復して一命をとりとめ、一方で犯人は殺人未遂などで逮捕され、裁判の結果懲役14年6か月を言い渡された。
犯人は動機として「女性への好意を伝えたが拒否された」ことを挙げており、この事件も「ガチ恋勢」が感情を暴走させた結果とも言える。
また、マスコミがセンセーショナルな見出しを求めて被害者女性を「地下アイドル」と事実とは違うかたちで報道したり、事前に相談を受けていたにもかかわらずストーカー事件として対処しなかった警察の対応不備が指摘されたりと、「推し」「ガチ恋」文化を取り巻く偏見や認識の問題も浮き彫りになっている。
ガチ恋勢と結婚について
これまでに解説した通り、推しへの本気の恋愛感情を持っているガチ恋勢。
では、ガチ恋勢は推しとの「恋の成就」や、その果ての「結婚」を目指しているのか?また、ガチ恋勢は「推しの結婚」をどう捉えるのか?情報をまとめた。
ガチ恋勢は推しと結婚したい?
大抵の場合、恋愛のゴールは「結婚」である。そのため、ガチ恋勢にも「できるなら推しと結婚したい」と思っている人はいるだろう。
実際に、推しと結婚した未来を想像して、その幸せな生活に浸ることを楽しみのひとつにしている……というガチ恋勢は多いそうだ。
なかには「自分は推しとの結婚しか考えていないから日常の中の恋愛は要らない」「推しとの結婚のために(家事や料理を勉強するなど)準備や努力をする」「推しと結婚しているかのような生活をする」というガチ恋勢もいるという。
もちろん、ほとんどのガチ恋勢は自身の恋がゴールインする可能性は極めて低いと分かっているだろうが、「推しとの結婚をリアルに想像して生きる」というロールプレイングもガチ恋勢なりの人生の楽しみ方なのだろう。
ガチ恋勢は推しの結婚を許容できる?
みんな、犬山たまきは結婚してないから
のりおママが結婚したんだよ— 野良猫君 (@Rknoranekokun) April 15, 2021
どんなに多くのガチ恋勢から応援されていようと、タレントやアイドル、声優、Vtuberたちも一人の人間なので、プライベートでいい相手と巡り合って結婚することもある。
では、ガチ恋勢は「推しの結婚」についてどのように考えているのだろうか。
やはり多くの人は、「ショックだけど祝福する・応援する」という意見のようだ。「好きな人が他の人と結婚して自分は恋に破れたけど、その人が幸せになってほしいと思う」というのは、有名人へのガチ恋でなくても誰もが共感できる気持ちだろう。
また、Vtuberについては、その担当声優(中の人)の結婚報道が出たときに「〇〇の中の人は結婚したけど〇〇自身は結婚してないから」と言い切るガチ恋勢のたくましい声もあったという。
ただ、中にはショックのあまり推し本人や、ひどいときは推しの結婚相手に対してSNS上で暴言を吐いたり、ときには脅迫めいたことを言ったりするガチ恋勢もいるそうだ。これも、「思いが強すぎて暴走」した例なのだろう。
ガチ恋勢と推しの結婚を描いた漫画「ガチ恋粘着獣 ~ネット配信者の彼女になりたくて~」
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ガチ恋勢と推しの恋愛・結婚は、漫画の題材にもなっている。それが星来さん作「ガチ恋粘着獣 ~ネット配信者の彼女になりたくて~」だ。
人気配信者グループのメンバーと、彼らに「ガチ恋」する女性ファンの恋愛を描いた本作は、さまざまな感情や思惑が入り乱れるあまりのドロドロ具合が大きな反響を呼んだ。単にガチ恋勢を描いた作品というだけでなく、本気の愛憎ヒューマンドラマとして注目だ。
自分が「ガチ恋勢」か診断してみよう
ガチ恋勢について見ていく中で、「もしかしたら自分もガチ恋勢なのかもしれない……」と、自身の推しへの思いの強さが気になった人もいるのではないだろうか。そんな人に試してほしいのが、ガチ恋勢の度合いを診断できる「ガチ恋ビンゴ」だ。
ビンゴメーカーという誰でもビンゴを作れるサイトで制作されたガチ恋ビンゴは、さまざまな質問に答えることで、自分の「ガチ恋度」を診断して可視化できる。自分が推しに対してどの程度熱中しているのか目安になるので、ぜひチャレンジしてみよう。
総括:ガチ恋勢について
ファンの中でも群を抜いた熱量で推しを応援し、ときには暴走してしまうガチ恋勢。
好きな有名人に本気の恋心を抱く、というのは珍しい経験ではないし、誰かを好きになるのはもちろん悪いことではない。しかし、感情をエスカレートさせれば、推しに迷惑をかけたり、犯罪に発展してしまったりすることもある。
誰かに「ガチ恋」をしたときは、そんな点をしっかり覚えておこう。また、自分の推しの周囲に過激なガチ恋勢がいたら、トラブルにならないように要注意だ。