男女平等パンチは一種のネットスラング:元ネタやフェミニズム的視点

男女平等な社会の実現が大きな関心を呼んでいる現代。アニメや漫画などの表現でも男女平等に関する議論が展開されることもある中で、最近にわかに注目を集めているのが「男女平等パンチ」だ。

その名の通り「悪人や敵であれば男女問わず平等にパンチを浴びせる」という行動や、そうしたスタンスのことを指しており、もとは人気ライトノベルを原作としたアニメ「とある魔術の禁書目録」から広まった、一種のネットスラングである。

そんな男女平等パンチについて、元ネタはどこにあるのか、人権やフェミニズム的な視点からはどのように見られているのか、現実社会で男女平等パンチを放ったらどうなるのか等、さまざまな観点から見ていこう。

記事の内容

  • 男女平等パンチとは
  • 男女平等パンチの元ネタ
    「とある魔術の禁書目録」の上条当麻と一方通行が有名
    「鋼の錬金術師」が元ネタという説も
    ライトノベル「魔術士オーフェン」にも男女平等パンチのルーツが?
  • 男女平等パンチとフェミニストに関する議論
  • アニメ「このすば」は男女平等パンチで荒れた?
  • 男女平等パンチをリアルでやるとどうなる?
  • 海外の男女平等パンチが話題に
    海外の反応
  • 総括

男女平等パンチとは?

男女平等パンチは、名前からも容易に想像できる通り「相手の性別を問わずパンチを浴びせる(自分が男性で相手が女性だからといって容赦はしない)」という行為のことだ。

一般的に、男性が女性に手を上げることは禁忌とされてきた。これは生物学的に男性の方が力が強い場合が多く、女性に怪我を負わせてしまう可能性が高いという懸念のほかに、紳士のマナーや矜持といった文化的な理由も考えられる。

一方で、特にアニメなどフィクションの中では「女性キャラクターが照れ隠しなどで男性主人公を殴ったり蹴ったりする」という、いわば「女性が男性に暴力を振るう」描写がコミカルなものとして認められてきた。

こうした女性キャラクターはときに「暴力系ヒロイン」などと呼ばれ、理不尽な理由で主人公が過剰な暴力に見舞われることまでコメディ描写の一環とするような作品では「このヒロインは不快」「女なら男を殴ってもいいのか」と非難を浴びることもあった。

そんな中で、男女平等な社会の実現を呼びかける声が現実の中で高まるとともに注目を集めたのが、男女平等パンチだ。

男女平等パンチとは

男女平等パンチの元ネタは?

「男女平等パンチ」の元ネタとされる作品は、実はいくつかある。
その代表的なものを紹介していこう。

「とある魔術の禁書目録」の上条当麻と一方通行が有名

「男女平等パンチ」というワードを作り上げたのは、鎌池和馬による大人気ライトノベルと、そのアニメ化作品である「とある魔術の禁書目録」だと言われている。

本作の主人公である上条当麻は、異能を持つ人々が多く存在する世界で「右手の拳で異能を打ち消す」という能力を持った存在。また、性格は困っている人であれば誰でも助けようとし、敵でさえ言葉で語りかけるという「超お人好し」だ。

作中ではたびたび「異能を使って暴走する敵に長い口上で説得を試み(ファンの間では「説教」と呼ばれている)、最後に敵の異能を打ち消すために拳をお見舞いする」という展開をくり広げてきた上条当麻。

相手が男であろうと女であろうと、その異能を打ち消すために「右手をぶつける」行為が必要であるため、自然と「男女平等にパンチする」という流れが生まれたのだった。そのため、彼に関しては「悪い奴なら男女問わず殴っていい」と考えているわけではないと推測できる。

しかし、「相手の意識を確実に奪って暴走を止め、相手を救う」ためにも毎回顔面に強烈なパンチを叩き込んでいることから、見た目のインパクトが絶大な「男女平等パンチ」が話題になったのだと考えられる。

上条当麻が作中でパンチを浴びせた主な女性は、クールな美女のシェリー=クロムウェルや修道女のアニェーゼ=サンクティス、妖艶な大人の女性オリアナ=トムソンなど、相手の容姿も立場もまったく考慮されていない。男性キャラまで含めれば、彼がパンチをくり出した人数は両手の指では足りないほどになる。

相手の立場に一切関係なく行われるパンチは、確かに「男女平等」と言えるのかもしれない。

また、本作の人気キャラクターの一人で、スピンオフ作品「とある科学の一方通行」では主人公を務める一方通行(アクセラレータ)も、男女平等パンチの担い手の一人。

彼の場合は多くの場面で、自分に懐いた少女・打ち止め(ラストオーダー)を守るために相手を問わず殴り飛ばしているので、上条当麻とはまた状況が違う。

しかし、同じ「とある~」シリーズの登場人物で「男女問わず殴る」という行動を見せたため、彼の男女平等パンチもまたファンの間では話題になった。

「鋼の錬金術師」が元ネタという説も

「男女平等パンチ」という言葉を世に知らしめたのは「とある魔術の禁書目録」だが、そのルーツのひとつになったのではないかと言われている作品が「鋼の錬金術師」だ。

本作のエピソードのひとつに、大切な懐中時計をパニーニャという少女に盗まれてしまった主人公エドワードが、彼女を「ぶっ飛ばす」と宣言するシーンがある。

この際に弟のアルフォンスは「相手は女の子だよ?」と諭すが、エドワードはそれに対して「男女平等!」と答えるという一幕があった。最終的に、エドワードは時計を取り戻した後、パニーニャにおしおきのゲンコツをしっかりとお見舞いしている。

「悪いことをしたら男女問わず報いを受けさせる」という意味では、この「鋼の錬金術師」も男女平等パンチの理念的なルーツと言えるのかもしれない。

ライトノベル「魔術士オーフェン」にも男女平等パンチのルーツが?

さらに男女平等パンチのルーツをさかのぼれる作品として、90年代の名作ファンタジーライトノベルのひとつ「魔術士オーフェン」が挙げられる。

本作のエピソードのひとつで、主人公オーフェンが女性警官のコギーに対してかかと落としを浴びせるという描写があった。抗議するコギーに対して「魔術士ってのは基本的に性差廃絶主義者なんだ」と語るなど、ここには「男女平等」の考えがあると考えられる。

アニメや漫画、ライトノベルなどのポップカルチャーシーンで「男女平等パンチ」的な考えの描写が辿られているのはここまでだが、世界の物語を調べていけば、もしかしたらもっと古くにこの考えを示している作品もあるのかもしれない。

男女平等パンチとフェミニストに関する議論は?

「男女平等パンチ」の賛否については、さまざまな意見が上がってきた。なかでも気になるのは、いわゆる「フェミニスト」と呼ばれる人々の声だろう。

意外にも、インターネット上では上条当麻の男女平等パンチについて、明確に「女性差別・女性蔑視だ」と主張する声で目立つものは見受けられない。

どちらかというと「場合によっては男性キャラクターが女性キャラクターにパンチするのも仕方ない」という声の方が多いように思われる。

ただ、これに関しては男女平等パンチという言葉自体の知名度の不足もあるのかもしれない。

男女平等パンチとフェミニスト

アニメ「このすば」は男女平等パンチで荒れた?

一方で、この「男女平等パンチ」に近いスタンスの描写が議論を呼んだ作品として「この素晴らしい世界に祝福を!」が挙げられる。

主人公のカズマと個性的な女性キャラクターによるパーティの冒険劇を、コミカルに描く本作。仲間同士で遠慮のないやり取り(ツッコミのためのどつき合いを含む)がくり広げられるシーンもあるが、そうした描写を指して「悪趣味な胸糞アニメ」と強く批判する匿名のブログ投稿が話題を呼んだ。

アニメ「このすば」が女性蔑視と言われてない理由がわからない

 

その主張を要約すると、本作は「女が全員バカに描かれ」ており、そのキャラクターたちが「主人公に暴力を振るわれて見下されながらもついていく」様を見て笑うのが見どころになっているという。

それに絡めて投稿者が自身の元夫との経験談を出し、「事あるごとに暴力を振るって自分を馬鹿にする元夫」を思い出したと書いている。

これに関しては「作品のストーリーを曲解している」「個人的な過去と無理やり繋げている」といった批判的な意見が、投稿への返信やSNS、ネット掲示板など様々な場面で集まっている。

匿名の書き込みなのでその男女比などは定かではないものの、確かに投稿者がこの作品を批判するために、一部の要素だけを極端に見ていると言えるのかもしれない。

また「男は皆こんなものを面白いと思うんですね」といった締め方が逆に男性差別的だという意見もあり、この一件に関しては「気に入らない作品を貶めるために悪意のある批判をした極論」という見方が大半のようだ。

男女平等パンチをリアルでやるとどうなる?

フィクションの世界だからこそある意味で痛快な描写として話題になってきた「男女平等パンチ」だが、これをリアルの世界でやるとどうなるのか?

当然ながら、他人にパンチを浴びせれば、相手が男性であろうと女性であろうと罪に問われる。

たとえ相手に非があろうと、個人的に恨んでいようと、他者へのパンチは暴行罪となる。相手が殴られても仕方ないと思えるような人物であっても、私刑は日本の法律では認められていない。

例外として、相手から暴行を受けていて、やむを得ず身を守るために反撃するのであれば「正当防衛」となる。「相手が女性で自分が男性だから、一方的に暴力を振るわれても我慢しなければいけない」ということはない。

しかし、正当防衛の適用は非常に厳格で、場合によっては過剰防衛と見なされる場合もあるため、現実社会で安易に男女平等パンチをくり出すのはやはり止めた方がいいだろう。

余談となるが、暴行や傷害、脅迫などの事件による被害者は、基本的に女性よりも男性の方が多いようだ。

これは男性同士のトラブルなども多いのかもしれないが、こうした物騒な事件に巻き込まれる確率は男性の方が高いということで、注意が必要かもしれない。

警察庁:罪種別 被害者の年齢・性別 認知件数(平成26年)

男女平等パンチをリアルでやるとどうなる

海外の男女平等パンチが話題に

SNSや動画サイトでは、時おり海外の喧嘩やトラブルを撮影した動画で「男女平等パンチ」が話題になることがある。

例として、ニコニコ動画では「男女平等パンチ」という動画タグまで存在し、その多くは先述の「とある魔術の禁書目録」の切り抜き動画などだが、なかには海外の映像を転載したものも見られる。

シチュエーションとしては「相手は男で自分は女だから反撃されない」と高をくくって相手に暴力を振るった女性が、予想に反して反撃を受ける……というものが大半。明らかに男性側の正当防衛と言えるものから、「これは男性も女性もどっちもどっちでは?」と思われるものまである。

本物の喧嘩沙汰の映像ということでなかなかショッキングな場面もあるので、視聴には注意が必要だ。

海外の反応は?

男女平等パンチの元ネタである「とある魔術の禁書目録」の上条当麻は、海外でも「Gender Equality Punch Man=男女平等パンチ男」というニックネームで一部のアニメファンからも知られているという。彼については、海外のアニメファンからも否定的な声は目立っていない。

あくまでフィクションとして受け入れられ、SNSなどでは冗談の意味も含むだろうが「彼は素晴らしい平等主義者だ」という声もある。

一方で、現実で「男女平等なら男性が女性を殴ってもいいんだよね」という意見を言う一部の男性については「そういうことではない」と批判する声が男女問わず圧倒的な多数となっているが、これは至極もっともなことだろう。

くり返しになるが、そもそも基本的に「人にパンチをすることは法律違反」である。老若男女問わず、人を殴ってはいけない。

総括:男女平等パンチはフィクションの話

意外にも批判意見の少ない「男女平等パンチ」だが、これはあくまでフィクションの話。

現実社会では、男女問わず、暴力に頼らずに話し合いでトラブルを解決することに努めるか、暴力沙汰に巻き込まれたら警察などの然るべき機関に助けを求めることが大切と言えるだろう。

社会の男女平等を推し進める流れが進む中で、アニメの描写にもこれから変化が訪れていくと思われる。

「男性だから」「女性だから」というジェンダー的な固定観念にとらわれない価値観が浸透したら、アニメの中の男女平等がどのように描かれていくのか注目だ。

男女平等パンチについて

 

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