教習所マジックという言葉を聞いたことがあるだろうか。
嘘みたいにスムーズに免許が取得できる事、だと思う人もいるかもしれないが、残念ながらそうではない。
教習所マジックとは「教習所の指導員に恋をしてしまうこと」である。
そんな事があるのか?と思う世代の人もいるだろう。
何しろ一昔前の教習所といえば、指導員は「感じが悪いのが当たり前」だったのだ。
舘ひろし主演の「免許がない!」という映画を観たことがある人はお分かりだろう。
指導員といえば、横柄で無愛想なものだったのだ。
どんなに横柄で無愛想でも、その指導員から合格点をもらわなければ、免許は取得できないわけで、合格点をもらうために、指導員の理不尽な態度を耐え抜いた人もいるだろう。
ところが、今は違うらしい。
そこで、「教習所マジック」について掘り下げ、現代の若者の志向やあるべき教習所の姿について考えてみたいと思う。
記事の内容
- 教習所マジックとは
教習所マジックが生まれる背景
指導員は若者に気に入られることが大事 - 教習所マジックのあるある
- 二輪の場合の教習所マジック
- おじさんも教習所マジックで大変身
- あなたは教習所マジックにかかっていない?自己診断
- 教習所マジックの逆パターン~指導員側がかかるマジック~
- 教習所マジックは卒業後どうなる?
- 教習所マジックの解き方を知りたい!
- 永遠の教習所マジック~結婚に至るパターンも~
- 総括
教習所マジックとは
前述したように教習所マジックとは、指導員に恋をしてしまう現象である。「横柄で不愛想」が代名詞だった一昔前の教習所であるが、今は恋心が芽生えてしまうくらいに感じの良いものであるらしい。
それは、教習所が「学校」から「サービス業」に様変わりしたことが背景にあるだろう。若者の免許離れが進む今日、教習所はどうにかして生徒を確保しなければならないのだ。
現在の教習所は、生徒が指導員を指名出来たり、指導を受けたくない指導員を申告したりして良いそうである。
それは、嫌な担任でも我慢して時を過ごさざるをえないシステムであったかつての「学校方式」ではなく、好きな美容師を指名できるような「サービス業方式」に方針転換している、という事である。
こうした居心地の良さが、教習所マジックのベースになっている。
教習所マジックが生まれる背景
現在、免許取得のターゲットになる若者の数はどれくらいいるのだろうか。
総務省統計局:新成人の数をまとめたものによると、2000年に比べて2020年の新成人の数は約40万人も減っている。
そして、内閣府のデータによると、20代の免許保有率は男性で約80%、女性で約70%である。
40代が男女とも免許保有率90%以上である事に比べ、ただでさえ人口が減少している20代のうちの70~80%しか免許を保有していない、という事態は教習所にとっては見過ごせない問題であろう。
そこで教習所は少しでも評判を良いものにし、若者に気持ちよく免許を取得し卒業させ、良い評判を広めてもらわなければならないのだ。
指導員は若者に気に入られる事が大事!
現代の若者はいわゆるSNS文化の中に暮らしているので、もし指導員とトラブルになろうものなら、すぐにツイッターやブログでその事が全国に知れ渡ってしまう。
目の前の1人の若者が、全国への入口なのだ。
指導員は若者に気に入られなければならない。
気に入られるまでに至らなくとも、嫌われてはならない。
昔から教習所に勤務しているベテランの指導員になればなるほど、指導方針の変化にさぞプレッシャーを感じている事であろう。
現代の若者は昔に比べ、ストレスに対する耐性が低いとも言われる。
指導員は若者の心を捉えるべく、さまざまな工夫が求められている。
その工夫の成果が「教習所マジック」ということなのだろうか。
教習所マジックのあるある
教習所マジックのあるあると言えばやはり、運転を直接指導してくれる指導員に恋をしてしまうパターンであろう。
「的確なアドバイス、時には助手席から手を伸ばしてハンドル操作を助けてくれる…なんてカッコいいんだろう!この人とドライブに行ったらきっと楽しいだろうな…あ、指導終わりの記録のサイン!男性だけど、字もきれいなんだな…ますます好感度あがっちゃう!頑張って免許を取れたら、ドライブに誘ってみようかな…」といったところだろうか。
指導員に恋をする要素として、心理学的な側面から2つ挙げる事ができる。
①学習処女理論
自分の知らない事を教えてくれる人に対して好意を持ちやすい、という心理論。
ちなみにこの理論は、真面目な女子生徒が不良に憧れたり、女性と付き合ったことのない男性が、ホステスに入れ込んだりする事も含まれるそうである。
②単純接触の原理
接触する機会が多ければ多いほど、相手の事が気になり好きになってしまう、という原理。
指導員に何度も会ううちに、好感度が上がって好きだと思ってしまう、というしくみである。
この2つの要素に加えて、慣れない運転は不安定な吊り橋のようでもあり、いわゆる「吊り橋効果」や、自動車内が密室状態である事なども相まって、自動車の教習というのは、恋心が芽生えやすい状況が揃っている、と言える。
余談だが、教習所の受付の女性に恋をしてしまう男性もいるらしい。
受付女性は、教習所に足を踏み入れてから初めて関わる人になるので、てきぱきとした事務手続きや入所説明の手際の良さに憧れを抱き、恋心に変わる事もあるのだろう。
二輪の場合の教習所マジック
二輪の場合は、密室状態ではないが、二輪の雰囲気を体感させるために指導員が生徒を後ろに乗せて走る事もまれにあるらしく、そのようなシチュエーションであれば、それだけで恋心が芽生えてもおかしくない。
他にも、倒れた二輪を軽々と起こしている姿や、単純に二輪にまたがる姿だけでもカッコいいと思う事があるかも知れない。
女性の場合は男性に比べて非力なので、指導員が重量のある二輪をスムーズに操作するなど、通常の指導の中で生徒である女性に対し、無意識のアピールになっているような局面が多くあるようだ。
おじさんも教習所マジックで大変身!
20代の女性からすれば40代50代の指導員は「おじさん」という事になるのだろうが、この「おじさん」の指導は、なかなか味のあるものだったりする。
自らの過去の運転の失敗談や、なぜ指導員になろうと思ったのか、など単純計算でも20代の2倍以上は話のネタを持ち合わせているわけで、話題には事欠かない。
物事の見方や考え方も20代よりは経験値もあるので、深いものになっているだろう。
これに話術も伴ってくれば、教習所内での「素敵な大人」の出来上がりである。
あなたは教習所マジックにかかっていない?自己診断
- 指導員と自動車内で二人きりになるとドキドキする
- 指導員の声や会話の内容が、指導が終わって帰宅しても思い出されることがある
- 指導時間が終わると残念だな、と思う
- 指導員が、他の人の指導をしている姿が気になる
- 教習所に通う時のファッションを気にするようになった
- 免許は取得したいが、取得したら卒業だと思うともやもやした気持ちになる
- 指導員が既婚か未婚か、などプライベートが気になる
- ちょっとおぼつかない運転をしてみて、助けてもらいたいと思うことがある
こんなところだろうか。
当てはまるものが多い人は、教習所マジックにかかっている可能性があるかも知れない。
但し、「当てはまる、これも…当てはまる、かも知れない…」という、「当てはまる前提」で活用すると、教習所マジックを助長することになるので、ご注意願いたい。
教習所マジックの逆パターン~指導員側がかかるマジック~
教習所マジックは、生徒が指導員側に恋心を抱く現象であるが、逆に指導員側が生徒である女性に恋心を抱く場合もあるようだ。
指導員が未婚であれば、それも一つの出会いと呼べるのかも知れないが、指導員が既婚者である場合は、モラルが問われる事態となるだろう。
生徒である女性の、運転のおぼつかなさに初々しさを感じ、ときめいてしまう心情はわからなくもない。しかし、指導のプロならば、生徒が運転に集中できる環境を作る事が大切で、その為に必要な会話以外は本来すべきではない。
教習所マジックと、教習所マジックの逆パターンとでは雲泥の差がある。大人として、指導員として、大いなる自覚を促したい。
教習所マジックは卒業後どうなる?
教習所卒業後、指導員を実際にデートに誘ったりするケースもあるようだが、多くは2~3ヶ月で自然と熱は冷めるようだ。
もともと教習所そのものは学科も含め、免許センターで免許を取得するまでの過程は面倒なものでしかなく、卒業すれば大変だった記憶の方が勝ったりするので、指導員との淡い思い出はあっても、「ではもう一度教習所に通いたいか?」と自問するとそういうわけではない。
免許を取り、友人と楽しいドライブなどを重ねるようになると、だんだんと教習所そのものの思い出と共に、指導員への思いも薄れていくのが自然な流れであるようだ。
教習所マジックの解き方を知りたい!
これは恋の相手が指導員であるという事に限らず、恋の忘れ方という点で共通しているだろう。その恋心以上に心を占めるものを見つけ出すのが最も近道である。
もし、どうしても忘れられない、他の何も目に入らないほどであるのなら、それは「教習所マジックを解きたくない」状態なのだ。解こうとしても無駄である。自分で納得いくまで指導員にアタックしてみるのも良いだろう。
その結果、残念ながらフラれてしまった時に、心から教習所マジックの解き方を知りたくなるに違いない。その時が教習所マジックを解くタイミングであると言える。
すでに「教習所マジックの解き方を知りたい」のであれば、それは「解きたいと思っている」のであるから、他に没頭できるものを見つけられる心の準備は出来ているわけである。
解けるのは、時間の問題であろう。
永遠の教習所マジック~結婚に至るパターンも~
ここまでに、教習所マジックは一過性のものであるという事を述べてきたが、中にはまれに結婚にまで至るケースもある。こうなると、教習所での出会いが運命であったと結論付くことになる。
教習所での履修が終了すれば、指導員と生徒という関係も終わるわけであるから、そこから恋愛をスタートさせる事は特におかしな事ではない。中学や高校でも卒業生と担任がその後結婚するケースもあるくらいである。
教習所での指導を通じて互いに人間的魅力を見出したのであれば、結婚まで至るケースもあるだろう。
過剰にプライベートをひけらかし、生徒の気を引くような指導方法であればどうかと思うが、プロ意識に徹していても、人間が教えているのであるから、人間味が滲み出るのは当然のことであり、そこに気付いて好ましいと思ったのなら、教習所であるからといって全て封印することもないであろう。
教習所の出会いを通じて人生のドライブも共にするパートナーが出来たのであれば誠におめでたい話であると思う。
総括:教習所マジックについて
教習所マジックという言葉が生まれたのはいつなのだろう。少なくとも20年ほど前までは、教習所の指導員の人間性に興味を持つ事は皆無であったように思う。免許を取得する人が増加し、車の保有台数も増え、比例して事故件数も大幅に増加していた。
飲酒運転などに対する規制も現在ほど厳しいものではなかったため、免許を取得する段階で、運転者のモラルのようなものも厳しく叩き込まれたような時代であった。
指導員は、ストレートに免許を取得させること、かつきちんとした運転をさせることを目的とし、淡々と指導を重ね、そして容赦なく落第させ…という指導内容だったのではないだろうか。まさにそれは「学校」であった。
現在、教習所は「サービス業」であると言っても過言ではない。そうせざるを得ない指導員の中にはジレンマを感じている人もいるだろう。
学校であろうがサービス業であろうが、無事故無違反でマナーをしっかり守るドライバーに育てるのが指導員の務めである。
教習所マジックにかかった生徒が、卒業後に指導員の事を考えながら運転していたら事故を起こした、などという事態にだけはならないよう切に願う。