「通天閣打法」と聞いて皆さんは何を想像するだろうか。
「通天閣」だけに限れば大阪府大阪市に立つ展望塔のことであると多くの方が想像できる。まさに大阪の象徴だ。
高さは地上108メートルで、2007年5月15日に国の登録有形文化財となった。
それに「打法」をつけるとは…奇怪なネーミングである。
今回は「通天閣打法」について意味や打ち方、プロ野球で実践する選手たちについて紹介していく。
記事の内容
- 通天閣打法とは
大人気野球マンガ「ドカベン」坂田三吉が必殺技で使う?
通天閣打法が登場した大人気野球マンガ「ドカベン」について
通天閣打法の使い手「坂田三吉」について - 通天閣打法はインフィールドフライ? 野球のルールと照らし合わせて考える
通天閣打法のメリット・デメリット
野球日本代表「鈴木誠也」が目指す「通天閣打法」 - 地元大阪の阪神タイガースの黄金ルーキー「佐藤輝明」も通天閣打法を披露!?
- 総括
通天閣打法とは:ドカベンの主要キャラ「坂田三吉」が必殺技で使う?
通天閣打法とは、大人気野球マンガ「ドカベン」に登場するキャラクターの必殺技である。
真上に近い角度に非常に高いフライを打ち上げ、落球を誘うというもの。
このため打つときには極端なアッパースイングを行う。
ホームランを狙う打法でないため、ヒットになったときのことを想定して全力で走る。
名前は、高く上がった打球の軌跡を通天閣に例えたものである。
通天閣打法が登場した大人気野球マンガ「ドカベン」について
野球マンガの王様「ドカベン」をご存じだろうか。
1972年より連載された水島新司氏の代表作である。
神奈川県の明訓高校野球部に所属する主人公の「ドカベン」こと山田太郎と、同級生でチームメイトの岩鬼正美、殿馬一人、里中智、微笑三太郎などのライバル達の高校野球での活躍を描いている。
配球の読みなどのリアルな野球の描写と、キャラクター独自の打法や投球が水島氏の力強いタッチで描かれ、人気を博した。
主人公の山田太郎のモデルは、名選手・名将と名高い野村克也だったが、「少年誌ではウケない」との理由で一旦NGとなっているようだ。
そこから強烈な個性の岩鬼正美というキャラクターが生まれた。
編集者がNGを出していなければ、ここまでの名作漫画にはならなかったかもしれない。
この無印ドカベンの他に、大甲子園編、プロ野球編、スーパースターズ編、ドリームトーナメント編があり、シリーズ累計205巻となっている。
シリーズ累計としては作品終了時点で日本で最も巻数の多い作品となった。
その歴史は日本を代表するプロ野球選手たちにも多大な影響を与えている。
日米で活躍したイチローや球界の番長清原和博などもドカベンに対してのコメントを残している。
「(当時西武の4番だった)清原和博に『山田たちはプロに行かないんですか? 僕は山田から4番とはなにかを教えてもらったんです』と言われたのがプロ野球編を始めたきっかけ。 でも、清原が巨人に行ったときは『この裏切り者』とショックだった(笑)
ほかにもイチローから「僕のどんな球でもバットに当ててヒットにしようという発想は、悪球打ちの岩鬼のおかげなんです。岩鬼はバッティングの師匠」と言われたことも心に響いた。
あの天才打者イチローの悪球打ちが岩鬼から来ているとのことで非常に胸が熱くなった。
岩鬼はど真ん中が打てず、悪球が得意なバッターなのだが、イチローはどんなボールでも打てる…天才はやっぱり違う。
通天閣打法の使い手「坂田三吉」について
通天閣打法の使い手である坂田三吉は、大正時代に活躍した将棋の棋士と同姓同名だ。長身で特徴的な長い鼻を持っている。
金にはがめついが、人情がある、大阪気質というのが妙に当てはまるキャラクターだ。
山田や岩鬼たちのが所属する明訓高校とライバル高である通天閣高校のエースで4番。左投げ左打ちであり、甲子園優勝経験もある。
高校卒業後は近鉄バファローズに投手として入団したが、途中から打者転向し、主人公山田と打点王争いを繰り広げたこともある実力者だ。
投球時は超山なりにボールを投げる通天閣投球も使用していて、大阪出身の選手という個性を存分に発揮している。
ドカベンのゲームで再現されている通天閣打法と通天閣投球を見ると凄さが良く分かる。
野球をやっていたことがあるものからするとあんなに高く上げられると目測が合わず、落球はもはや必然かもしれない。
通天閣打法はインフィールドフライ? 野球のルールと照らし合わせて考える
通天閣打法はインフィールドフライじゃないか!って思う方もいることでしょう。
野球好きでも説明が難しいインフィールドフライについて少し説明したいと思う。
インフィールドフライとは、「無死または一死」で「走者1、2塁または満塁」の場面で打者が打ち上げた飛球のうち、審判員が「内野手が普通の守備行為を行えば、捕球できる」と判断したものをいう。
インフィールドフライと判断した審判員は、直ちに上空を指差し「インフィールドフライ」とのコールを行い、続いてアウトのジェスチャーとともに「バッターアウト」をコールする。
ただし、実際にバッターアウトとなるのは打球が捕球されるかフェアボールと確定した時点である。
インフィールドフライの判断は審判員の判断によってのみ決定されるもので、アピールプレイによって宣告されることはない。
攻撃側に不利なルールのように思えるが、そもそも守備側があえて打球を直接捕球せずにダブルプレーを取りにいくことを防ぐルールである。
通天閣打法は100メートル近く高々をフライボールを上げることにより、捕球を困難にさせるものであるため、インフィールドフライと宣告されることはほぼほぼないだろう。
ただ、審判によって宣告される場合があるかもしれない。
通天閣打法のメリットとは
通天閣打法のメリットを上げると次のようなものがある。
- 滞空時間が長いため、ただのフライがランニングホームランになる可能性がある
- 太陽の光や風を味方にすれば、より捕球されづらくなる
ランナーがいない、もしくは2死なら併殺を気にせず走ることができ大量得点も狙える。
アッパースイングで打ち上げるにはボールを点で捉えなければならないため、技術の高さの証明にもなる。
通天閣打法のデメリットとは
通天閣打法のメリットに触れてきたので、デメリットについても押さえておく。
- ランナーがいるとき、無死、1死のときは併殺の危険性を考慮しなければならない
- 内野陣の守備力が高い場合、普通に捕球される恐れがある
- ボールへのミートが難しい
- ドーム球場の場合、天井にあたる恐れがある
過去プロ野球でもドーム球場で天井にボールが当たることがあった。
基本的に当たってもインプレーとなり、そのまま捕球すればアウト。
捕れない場合は落ちた場所によってフェアかファールになる。
また、ボールが挟まった場合はエリアによって、フェア地域なら打者、走者ともに2個の安全進塁権が与えられ、ファウル地域ならファウルになる。
十分な高さに打球を打ち上げられない点、デメリットとなってしまうだろう。
野球日本代表:鈴木誠也が目指す通天閣打法
広島東洋カープに所属する鈴木誠也は、MLBに挑戦した場合「イチロー以来の衝撃を受けるだろう」と米メディアが報じるほどの選手だ。
日本代表では4番を任されることもあるスラッガーだが、2021年の打撃フォームのテーマは「通天閣打法」だという。
なぜ、通天閣打法をテーマに掲げているかにはしっかりと理由がある。
野球というのは投手が小高いマウンドからボールを投げており、ボールの軌道としては上から投げ下ろされている感じだ。
地面と水平にバットを振ること、いわゆるレベルスイングを行うことが日本では良いとされている。
しかし、鈴木誠也はバットの軌道をボールの軌道に合わせてアッパースイングで行うほうが、ボールを線で捉えられると独自の理論を持って打撃フォーム改善に取り組んでいる。
真上に打ち上げるイメージで打ってもちょうどいいくらいとのことだが、力強いスイングがなければとてもできない芸当だ。
この理論についてはスポーツ番組の対談で語っているので、ぜひ確認してみてほしい。
MLBではフライボール革命といって打ち上げることでより多くのホームランを打つ、そのために打者がアッパースイングすることが定説になりつつある。
二刀流で活躍中の大谷翔平も結構なアッパースイングをしている。
現在もホームラン王争いを演じているがスイングにはホームランを打ちやすい要素がたくさん含まれているようだ。
日本にはホームランバッターと呼ばれる選手は多くはないが、徐々にこの考え方も広がっていくことだろう。
地元大阪の阪神タイガースの黄金ルーキー:佐藤輝明も通天閣打法を披露
通天閣がある大阪の球団、阪神タイガースの快進撃は目を見張るものがある。
その中でも2020年のドラフト会議で1位指名されたルーキー佐藤輝明の活躍は本当にすごいの一言だ。
ルーキーにしてオールスター投票1位で球界を代表するスラッガーとなっている佐藤輝明だが、通天閣打法を披露していると騒がれている。
守備側を錯覚させる驚異的なスイングスピードと滞空時間の長い弾道で打ち損じのフライでもなかなか打球が落ちてこず、守備陣が見失うこともしばしば。
本人的には「ただの打ち損じ」とのことだが、規格外のルーキーの活躍をこれからも期待したい。
総括:通天閣打法について
通天閣打法についてここまで丁寧に説明してきた。
マンガの世界だけでなく、現実のプロ野球でも話題になるところがドカベンの偉大さを物語っている。
以下今回の要点をまとめておく。
- 通天閣打法とは真上に近い角度に非常に高いフライを打ち上げ、落球を誘うというもの
- 通天閣打法はドカベンのライバルキャラ「坂田三吉」の独自打法
- 広島東洋カープの鈴木誠也の2021年の打撃テーマが「通天閣打法」
- 黄金ルーキー佐藤輝明は通天閣打法の使い手
通天閣打法を知ってるだけでプロ野球が楽しくなるかもしれない。