世界には「怖い絵」と称される作品が数多くあることをご存知だろうか。
何だか恐ろしくておどろおどろしい絵を想像してしまうが、実際にそう呼ばれる作品が必ずしも恐怖を題材にしているとは限らない。
美しく魅力のある絵画、子ども向けの絵本、何の変哲もない画像。
なぜそれらが「怖い」と言われるのか。
男性だけが見てはいけない絵とは?
「怖い絵」の謎に迫る。
記事の内容
- 世界一怖い絵・絵画:解説付き
①レディ・ジェーン・グレイの処刑
②ビール街とジン横丁
③メデューズ号の筏 - 世界一怖い絵【絵本3選】
①うろんな客
②いるのいないの
③ねないこだれだ - 世界一怖い絵:本当にヤバい!超怖い画像3つ
1.あなたには笑う?笑わない?世界一怖い女の絵
なぜ?「男は絶対見るな」の理由 - 「○回見ると死ぬ」怖い絵
2.美大ボール - 3.ベクシンスキーの絵
- 総括
世界一怖い絵・絵画:解説付き
インターネットの普及によって世界中のあらゆる情報を知ることができる現代。事故や事件はもちろん、社会問題や歴史についても様々な人が見聞きし議論できる世の中だ。
しかしそれ以前の時代では、隠された真実を暴く役目の一つを絵画が担っていた。政府が隠蔽し、論じることを禁じられた社会の現実を、絵を通して大衆に知らせたのである。人の死や腐敗をありのまま表現しているからこそ、見る者に恐怖を感じさせる。
そうした絵の中でも、歴史・社会風刺・告発の点から世界一怖い絵画として知られる作品を紹介しよう。
①レディ・ジェーン・グレイの処刑
1833年、ポール・ドラローシュ作。
「怖い絵画」といえば必ず名前が挙がる作品で、ベストセラーとなった中野京子作『怖い絵』シリーズの3巻「泣く女篇」では表紙を飾った。
中央の目隠しをされた女性がジェーン・グレイだ。彼女はイングランドの最初の女王であり、在位期間はわずか9日間。政争に巻き込まれ、16歳という若さでこの世を去った。
その処刑の直前を描いた作品で、自分が斬首されるための首置台を司祭に支えられながら手探りするジェーン、左には泣き崩れる侍女たち、右には斧を持った死刑執行人がいる。目の前には血を吸うための藁が敷かれており、これから起こることをまざまざと連想させられる。
処刑というだけでも恐ろしい印象を受けるが、戴冠式のためにロンドン塔に入った彼女が生きて外に出ることのなかった運命を考えると、その時代の残酷さと少女の悲しみを感じずにはいられない。
②ビール街とジン横丁
1750-51年、ウィリアム・ホガース作。
「風刺画の父」と呼ばれたホガースが描いたのは、ビールを飲んで健康的にいきいきと暮らす人々の『ビール街』と、安酒で体も心もボロボロになった貧民街の『ジン横丁』。
当時のイギリスではジンによる健康被害と治安の悪化が社会問題となっており、「ビールは健康!ジンは悪!」と対照的な表現をすることで反ジンを訴えた。
活発で楽しそうな生活をしている『ビール街』に対し、『ジン横丁』の様子はまさに地獄である。
中央の女性は授乳中だろうに赤ん坊が落ちても気付く様子はなく、犬と共に骨をしゃぶる人や死体、子どもや赤ん坊までジンを飲んでいる。
当時のジンは安くて税もかからず貧民街の人でも手に入る酒であったが、健康に悪く中毒性も高かったことから廃人のようになってしまう人が激増した。そうした社会的な恐怖はもちろん、いくら風刺といえど格差や貧困をここまで直視させられるのは怖い。
③メデューズ号の筏
1818-19年、テオドール・ジェリコー作。
小さな筏にたくさんの人が乗っているこの作品は、実際に起こった海難事故を描いた告発が目的の絵画である。
メデューズ号は、とあるフランスの官僚を輸送するために出航したが、船長は経験も知識もない亡命貴族であった。案の定船を座礁させた貴族は、救命艇には自分たち上流階級の者だけ乗せ、それ以外の人間は筏の上に置き去りにした。
小さな筏に残された147人は、13日間の漂流の末、救出されたのはわずか15人だったという。この事故は国際的にも政治的にも大きなスキャンダルとなったが、政府はそれを隠蔽しようとした。
この出来事に強い憤りを感じたジェリコーは、生存者に取材をし、筏の上で起こった飢餓や脱水、食人による狂気を実物大で描写した。よりリアルに表現するため、実際の大きさで筏の模型を作ったり、死体の様子や人間が腐る過程をスケッチするため病院へ赴き死体も入手していたという。
その努力は見る者に衝撃を与え、多くの反響を呼んだ。正確に再現された絵そのものはもちろん、作者の鬼気迫る怒りの感情や、歪な社会構造と人間の恐ろしさを感じる作品である。
世界一怖い絵【絵本3選】
怖いのは美術館にあるような絵画だけではない。子どもを楽しませる絵本の中にも怖い作品は数多く存在する。
中には子どもが読んだらトラウマになってしまいそうな明らかに大人向けの絵本もあれば、子ども向けだからこそ怖い作品もある。
①うろんな客
最も有名な怖い絵本作家といえば、間違いなくエドワード・ゴーリーだ。
大人向け絵本に興味がある人は必ず目にするであろうゴーリーの作品は、独特な世界観と不条理さが魅力であり、緻密な線で描かれたモノクロなイラストは芸術界でも高く評価されている。
そんなゴーリーの代表作の一つが『うろんな客』だ。
ある一家のところへ突然謎の生き物が入り込み、壁に向かってじっと立ってるかと思えばウロウロと徘徊したり、一緒に食事をとってるかと思えばイタズラをしたりする。そうした訳の分からない行動を繰り返すも、一家は追い出すでもなく17年間もその生き物を住み込ませる。
よく分からない生き物と住むというだけでかなり怖い話だが、その正体に関する様々な解釈を読むのがまた面白い作品でもある。ただ怖いだけでなく、その裏にあるゴーリーの揶揄や風刺を感じ取るのも一興だ。
②いるのいないの
『百鬼夜行』シリーズなどを手掛ける京極夏彦作、絵は町田尚子である。古くからの怪談や妖怪をモチーフにした作品の多い京極氏ならではの絵本だ。
しばらく祖母の家に住むことになった「ぼく」が、家のあちこちで暗い隙間からじっと何かに見られているような気がする。一度気付くと、気になって気になって仕方ない。
そんな少年の純粋な恐怖がただ淡々と書かれている。祖母の家はとても古く、天井も梁がわたっているのがそのまま見えている状態で、上から見つめられているような気がして「ぼく」は怯えている。気付いているのかいないのか、全く気にかけない祖母も怖い。
不気味な絵と相まって、読む人を怖がらせるために作られた完璧な「怪談絵本」である。
③ねないこだれだ
最も知名度の高い子ども向けの怖い絵本といえばこの作品である。
子どもを早く寝かしつけるための教育用の絵本でもあり、夜の9時を過ぎるとオバケがやって来るので、その時間まで起きている子どもは連れて行かれてしまうというストーリーだ。
切り絵のようなイラストで大人からするとオバケも可愛らしく見えるが、絵本の結末では子どもが実際に連れ去られるシーンも描かれている。悪いことをしたから連れて行かれたという単純明快な話なのだが、まさかと思いつつも内心ドキドキしていた子どもも少なくないだろう。
世代を問わず親しまれている絵本で、今ではオバケのグッズも人気である。
世界一怖い絵:本当にヤバい!超怖い画像3つ
上述した怖い絵画や絵本は、作品そのものより描かれた背景やその内容が怖い作品が多かった。たしかに怖いのだが、そうは言っても作者も分かっていれば販売元もあるわけである。
しかしネット上には誰が何のために投稿したのか、出どころ不明の怖い画像が無数に存在する。日々公開されるそれらの中には本当に怖い画像が含まれているのだろうか?
1.あなたには笑う?笑わない?世界一怖い女の絵
男性には世界一怖い絵 pic.twitter.com/trHgrpx93B
— 華焔@どすこいの愛人 (@G3Z17qL69Wnu6l6) March 17, 2020
この画像は、一時期Twitter上で「世界一怖い絵」として話題となった。一見とても可愛らしい女性の絵なのだが、なぜそこまで恐れられているのだろうか。
噂によると、この女性の顔をずっと見続けていると突然ぱっと笑い出したように見えるらしい。たしかにどこか微笑んでいるような気がしないでもないが、明らかに笑っていると判断できるような絵ではない。
目の錯覚で次第に笑顔に見えるアートなのかとも思ったが、どうやら噂によると顔が変化するのは"男性が見た時だけ"のようだ。
なぜ?「男は絶対見るな」の理由
この絵のモデルはパキスタンに住む女性で、彼女は愛する恋人の浮気が原因で自殺してしまったという。悲しみと後悔と自責の念にかられた男は彼女の肖像画を描き、それがこの絵というわけである。
しかし男はこの絵を描き上げた直後に死亡。その後も所有者となった男性が次々と発狂し、いずれも苦しみながら死んでしまったという。
今でもこの絵は男性が見た時だけ笑いかけてくるため、「男は絶対見るな」と言われる世界一怖い絵となった。
もちろん真偽は不明であり、実際に絵が笑ったと証言する男性もいれば、実際は台湾人が描いた絵なんだ等、あくまで噂の域を出ない。しかしどことなく不気味に感じる絵なのは間違いなく、勇気ある男性諸君は是非一度試してみてはいかがだろうか。
「○回見ると死ぬ」怖い絵
ネットで拡散されている画像の中には「○回見ると死ぬ」「○回見ると不幸になる」と噂される絵もある。
もちろんそれ自体は都市伝説であり、はっきり言ってデマなのだが、もしかしたら一枚ぐらいは本物があるかもと思いながら見るのも面白いかもしれない。
2.美大ボール
美大ボール pic.twitter.com/zXMgQI74FI
— ニックだよ🐧 (@Nick_Zipang) September 7, 2019
『美大ボール』は作者不明で、タイトルも通称である。
砂漠の中に大きな丸い球体が浮かんでいるような絵で、5回見ると死ぬと言われている。
しかしこの作者は「UDK姉貴」と呼ばれる配信者ではないかという説があり、そこから更に派生してその配信者はこの絵のせいで受験失敗したとか死亡したとか、根も葉もない噂に更に尾ひれが付いたような状況である。
3.ベクシンスキーの絵
「3回見たら死ぬ絵」として有名なのがベクシンスキーの作品である。
怖い絵、っていわれるとベクシンスキー思い出すね。
「3回見たら死ぬ絵」シリーズで腐るほど見たよ… pic.twitter.com/Y5ckvNXUdp— れん (@ren3A15) February 25, 2019
「終焉の画家」と呼ばれたベクシンスキーの絵は、不気味で退廃的なインパクトのある作風からか、呪われた絵と称されることが多い。特にこの椅子に女性の生首のようなものが置かれた絵は「3回見たら死ぬ絵」として有名だ。
ベクシンスキーの絵にはタイトルがないので、鑑賞者が感じた恐ろしい印象がそのまま絵の名前のように言われてしまうことも多く、この絵も「呪われそう」というイメージから広まった作品といえる。
総括:世界一怖い絵・なぜ人は恐怖に惹かれるのか
いつの時代も「怖い」という感情は人を惹きつけてやまない。
恐ろしいのに見たい、なぜかずっと見てしまう。そんな不思議な魅力がある「怖い絵」は時を越え形を変えて今も多くの人に鑑賞され続けている。
描かれた背景や作者の感情に思いを馳せるもよし、ただただ怖いという感情を楽しむもよし、各々が自分の受け取り方で世界の怖い絵を堪能していただきたい。