最近「絶対音感」という言葉を耳にする機会が増えた。何事も「絶対」という冠がつくと、何だかかっこいいような気持ちになる。「零度」と言うより「絶対零度」という方が、凄味が増すような気がするものである。
しかし零度と絶対零度の意味が違うように、「音感」と「絶対音感」の意味も違うのだ。歌手はみんな絶対音感があるかと言うとそういうわけでもなく、「絶対音感のある音痴の音大卒芸能人」も存在するらしい。なかなか興味深い話である。
今回はそんな「絶対音感のある芸能人」について調べてみたいと思う。
記事の内容
- 絶対音感の芸能人!の前に「そもそも絶対音感とは」
- 絶対音感のある芸能人3人
1.昭和の歌姫:美空ひばり
2.ピアノも弾ける!みやぞん
3.松下奈緒は音大出身 - 歌のうまさとは比例しない!?
- 絶対音感があるのに音痴な芸能人「山口めろん」
ピアノの方の腕前は流石! - 総括:絶対音感のある芸能人は少ない
絶対音感の芸能人!の前に「そもそも絶対音感とは」
「有名な『ドレミの歌』を今歌ってみて」と言われてアカペラで正確な音程で歌う事の出来たあなたは絶対音感の持ち主である。絶対音感とは、正しい音のイメージが頭に定着しており、いろいろな音を聞いた時に音名として捉えることの出来る能力のことを言う。絶対音感は個人差があり、エアコンの音やお湯が沸く時の蒸気のしゅんしゅんする音なども音名として聞こえてしまう人もいるらしい。
絶対音感も行き過ぎると耳障りとなり、生活に支障をきたすこともある。とはいっても、そこまで絶対音感が進んでいる人はほとんどおらず、たいていは電車の発車メロディを正確な音程で歌えるとか、救急車のピーポーの音が音名で言えるくらいである。
絶対音感のある人にとってはさまざまな音が音名として聞こえるのは当たり前の世界であるが、絶対音感を持ち合わせていない人には想像できない世界なので、絶対音感を持っている人が時に不気味にも思えるらしい。
絶対音感を持っている人はとても少ないようなイメージがあるが、割合としては全体の3%と言われており、100人に3人は絶対音感を持っているという事になるので、それほど稀有な能力というわけでもなさそうである。
絶対音感があると何か得をする事があるかと言うと、日常生活では特にないかも知れない。音楽を志す人にはかなり有利な能力であるが、日常生活では「今エアコンのスイッチ切った時のピーの音はラだよ!」「ふーん、すごいねー」程度の会話で終わってしまうだろう。すごい能力であるはずなのに、生活に活かせる場面がないのであまりすごいと思ってもらえないのが残念である。
絶対音感は生まれつきのものだと思われていたが、最近後天的なトレーニングでも身につく事が分かっている。主に音楽を志す人がトレーニングを行うのだと思うが、生まれつき絶対音感がある人には一切のトレーニングなしで身に着いているところを、トレーニングを重ねて天性のものに追いつくのはなかなか大変な事だろうと思う。
絶対音感のある芸能人3人
絶対音感を活かせる職業と言えば歌手がすぐに思い浮かぶ。
絶対音感と歌唱力はまた別のものだと思うが、絶対音感を持つと言われる歌手を何人か挙げてみよう。
1.昭和の歌姫:美空ひばり
誰もが知る昭和の歌姫美空ひばり。美空ひばりが「楽譜を読めなかった」という話は有名だが、昔の歌手は楽譜の読めない人が多かったらしい。楽譜が読めなかった美空ひばりは、新曲が出来上がると、作曲家にメロディを歌ってもらい、それを覚えて歌ったというエピソードがあるが、それは絶対音感としてのエピソードではない。
絶対音感はそのメロディを聞いた時に、音の高さを表す音名として表すことのできる能力なので、仮に作曲家と同じメロディで歌えたとしても、その音が何の音なのかを分かっていなければ、絶対音感ではなく「相対音感」なのである。
美空ひばりの絶対音感が示されているのは、数々の音楽番組やコンサートなどで私たちに見せてくれた「アカペラ」の能力である。曲の出だしの演出で楽器演奏が全くない中、正確な音程で曲の始まりの部分を歌える、これは絶対音感のなせる技である。
生歌の場合は、その独唱に続いて途中からオーケストラが音を合わせてきたりするので、少しでも音程がずれるとオーケストラが入ってきた時にそれが分かってしまう。こういった演出は音感に自信がないと出来ない事である。
美空ひばりは、伴奏がバックにあろうとなかろうとピッチが狂っているところを聞いたことがない。子供の頃からの歌声を収めたものを、一時期テレビ番組でよく見かけたものだが、常に完璧な音程でありそれは晩年の不死鳥コンサートでも同じであった。
病気の為声量はかつてのものではなかったが、音程は完璧であった。
2.ピアノも弾ける!みやぞん
バラエティーで大活躍のみやぞん。いつもギターを抱えているイメージだが、ピアノも弾けるらしい。そのピアノは習ったものではなく独学というから驚きである。
そして耳にしたことのある曲をピアノで再現できるのだそうで、これはまさに絶対音感を持っている人の能力…と言いたいところであるが、テレビ番組でその耳コピを披露した場面は「涙のキッス」で音程が4度ずれていた。この事から考えるとみやぞんの場合は絶対音感ではなく相対音感である。
ただ、正しい音程は4度下だとはわかっているが、4度上げた方がピアノとして弾きやすかった為あえて4度上げたのかも知れない。もしそうであるならば絶対音感の持ち主という事になる。絶対音感と相対音感の境目はわりとあいまいなものなのである。
3.松下奈緒は音大出身
NHKの朝ドラ「ゲゲゲの女房」で一躍有名になった女優の松下奈緒だが、東京音楽大学ピアノ科出身というプロフィールを持っている。女優業の他にも、NHK大河ドラマ「義経」の最後のコーナーでBGMとしてピアノを担当したり、幅広く活躍している。そんな松下奈緒にも絶対音感があるという。
日本の音楽大学出身者は50%~60%が絶対音感の持ち主だと言われているので、松下奈緒に絶対音感があるのも納得がいく。ピアノを志す人に絶対音感は有利に働く事は間違いない。
歌のうまさとは比例しない!?
絶対音感があれば、正しい音程をイメージする事は出来る。
しかし、歌を歌う事は「発声」であり、正しい音程で歌う事だけが歌がうまい全てではない。歌がうまく聞こえるには声そのものの魅力やビブラートなどの技術的な面もある為、絶対音感があるからと言って歌がうまいとは限らないのである。
絶対音感がなくても相対音感があれば音程は取れるので、そういった意味では絶対音感が全くなくても歌はうまく歌える、という事になる。
絶対音感があるのに音痴な芸能人「山口めろん」
前述したように、絶対音感があることと歌がうまい事は比例しないので、絶対音感があっても音痴な人はいる。音痴であっても味のある歌い方をする人もいる。カラオケの点数は良くなくても、もっと聴きたくなるような、クセになるような歌声や節回しで聴かせる歌を歌う人もいる。
「山口めろん」という松竹芸能所属の芸能人がいる。歌そのものはうまくなくても、絶対音感があれば音程は取れるのが普通であるが、この山口めろんという人は松下奈緒と同じように音大のピアノ科出身でありながら、あまりの音痴ぶりで出身大学の教授に出身大学名を出してくれるなと言われたくらいの「逸材」である。
ピアノの方の腕前は流石!
ピアノの方の腕前はなかなかのもので、「芸能界特技王決定戦TEPPEN」という番組のピアノ部門で優勝するほどの実力であるにも関わらず、である。
そしてこちらが弾き語りの動画である。
わざとではないかと思うほどの外れっぷりである。自分の歌声とピアノの不協和音を気持ち良くない、とは思わないのだろうか。本人曰く、弾き語りで歌っている時には音程を外している自覚は全くないのだそうだ。(「世界一歌がうまい」と思って歌っているらしい)
そして、自分の声を収録したものを後から聴いてみると、その時は客観的に聴くことが出来て、音程が外れている事を感じるのだそうだ。「弾き語りの時は、弾く事と歌う事という別々の事をしているので、その中で音程を見失う」とも本人は言っている。
確かにピアノを弾きながら歌を歌うというのは難しいものである。ピアノに限らずギターでもそうであるが、楽器を演奏しながら歌を歌うというのはわりと難しいものである。
そして、正しい音程での伴奏がありながら音を外して歌う、というのは絶対音感がある人にとってはかなりの高等技術であるらしい。なので、やはりわざとではないようだ。音大卒業生をもってしてもこの音痴ぶりなので、音痴でお悩みの方も、あまり気にする必要はないのかもしれない。
総括:絶対音感のある芸能人は意外と少ない
芸能界に歌手やバンドはごまんといるが、絶対音感を持っている人はそう多くはない。割合で3%と言われている絶対音感の持ち主なので、歌手の中でも絶対音感のない人がほとんどである。
しかし素晴らしい歌唱力をもっている歌手はたくさんいる。そうなると絶対音感のあるメリットというのはあまり明確なものではなくなる。
絶対音感は、絶対音感の持主にとっては当たり前の事で、逆に絶対音感のない世界が理解できない。
「テレビでコント番組を見ていると小道具の携帯の音が鳴ったがその着信音はドとミ#の和音だ」とか、いちいち頭で考えてからではなく、ごく自然にそのように聞こえてくるのだ。
新潟大学の研究によると、絶対音感のある人は音を言語のように左脳で処理しているらしい。
みやぞんにしても山口めろんにしても、話し言葉を聞いていると頭の回転の良さを感じる。
言葉を司る左脳をよく使っているからだろうか。音楽など芸術面は右脳が司るものだが、こと絶対音感に関しては特別で、絶対音感がある人が楽器の演奏をする時は、右脳も左脳も使っているということになるのかもしれない。
生活の中のいろいろな音が音名として聞こえてくる生活は、広い世界の音楽を聴きながら暮らしているようで、楽しいものである。目に見えて何かに役立つ能力ではないが、その能力がある人はより楽しい日々の生活を送れるだろう。
絶対音感の能力を活かして何かビジネスでも出来れば、面白い展開が待っているかもしれない。松下奈緒やみやぞんや山口めろんに期待したいところである。
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