鳥は朝からさえずりはじめて夜は寝ている、と思っている人は多いのではないだろうか?実は、夜になったら鳴きはじめる鳥も多く存在する。
自然が多い地域に住んでいる人の中はもちろんのこと、都会に住んでいる人でも、夜にうるさく鳴くので安眠妨害だ!と思ったことがある人も多いはずだ。
そこで今回は、夜鳴く鳥にはどんな鳥がいるのか?鳴き声や生態、特徴を紹介する。もしも夜に鳥の鳴き声が聞こえたら、この記事でどの鳥なのかを調べてみるとおもしろいだろう。興味を持つことができたら、うるささもあまり気にならなくなるかもしれない。
記事の内容
- 夜鳴く鳥はうるさい!
- 代表的な2種類の鳥
①ゴイサギ
②ホトドギス - 夜鳴く鳥の鳴き声の特徴
ギャーギャー鳴く鳥
キーキー鳴く鳥
キョキョキョと鳴く鳥 - 夏に北海道に飛来する鳥とは?
- 夜鳴く鳥はどの季節に多い?
春の夜:17種類
夏の夜:9種類 - 総括
夜鳴く鳥はうるさい!
一口に鳥の鳴き声と言ってもさまざまなものがある。耳に心地良い声で鳴く鳥もいれば、大音響で鳴く鳥もいる。昼間は生活音や外での活動音があるためそううるさく感じない声も、静かな夜に聞こえるとうるさく感じることもあるだろう。
どんなに美しい声でも、寝ようとしている時に何回も大きな声で鳴かれると、うるさく感じる。また、一度気になると、その声に敏感に反応してしまうため、余計にうるさく感じるかもしれない。
そのため、夜に鳴く鳥の声は、余計にうるさく感じるのが実態ではないだろうか?
代表的な2種類の鳥
夜鳴く鳥にはどんなものがいるのだろうか?代表的なものを何種類か紹介しょう。
①ゴイサギ
ゴイサギは、ペリカン目サギ科、ゴイサギ属に分類される鳥で、「五位鷺」と書く。日本をはじめ、アフリカ大陸、北アメリカ大陸、南アメリカ大陸、ユーラシア大陸、インドネシア、フィリピン、マダガスカルなど世界の広い地域で生息している。
日本にいるゴイサギは、北海道に毎年夏になるとやってくるものと、本州よりも南の地域に一年中生息しているものの2つのタイプがいる。
全長58㎝以上でカラスくらいの大きさ。頭の上と背中が黒っぽい緑色で、翼、腰、尾は灰色、目の色は赤い。カラスに似ているため、ヨガラス(夜鴉)と呼ばれることもある。
夜行性で昼間は薄暗い森などにおり、夕方から夜にかけて活動する。「クワックワッ」と一声ずつ鳴きながら夜空を飛んでいる鳥がいたら、それがゴイサギだ。
②ホトドギス
ホトトギスは、カッコウ目カッコウ科に分類される鳥で、杜鵑・不如帰と書く。全長28㎝前後でハトよりは小さいがヒヨドリよりは大きい。
夏に飛来する渡り鳥で、ウグイスなどの巣に卵を産み、ウグイスに育てさせる「托卵(たくらん)」と呼ばれる繁殖習性を持っているのが特徴だ。
昼だけでなく夜も鳴く鳥で、オスの鳴き声が「キョッキョッ キョキョキョキョ」「ホ・ト・…・ト・ギ・ス」「テッペンカケタカ」「ホンゾンカケタカ」「特許許可局」「あちゃとてた(あちらへ飛んで行った)」など、さまざまな声に聞こえることでも知られている。
ホトトギスは、「目には青葉山ほとどぎす初鰹」の句や、「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」「なかぬなら鳴かせてみせようホトトギス」などの戦国武将の性格表した句など、古くから歌に多く詠まれてきた鳥でもある。
ただし、夜に鳴く時は短く「キョッ キョッ」と鳴くため、気がつかない人も多いと言われている。ウグイスと共に春や夏を告げる鳥としても知られている。
夜鳴く鳥の鳴き声の特徴
夜鳴く鳥の鳴き声には、いろいろなものがある。代表的な鳴き声と鳴き声の主をいくつか紹介しよう。
ギャーギャー鳴く鳥:2種類
夜中にギャーギャー鳴く鳥には、ムクドリやアオサギなどがいる。
1.ムクドリ
スズメ目ムクドリ科の鳥で、椋鳥と書く。全長24㎝前後でスズメとハトの間くらいの大きさの鳥だ。全体的に茶褐色でアゴから頭部にかけてと腰に白い部分があり、黄色い足をしている。
集団で飛来し、夜行性ではないが夕方に巣に戻ってきた時に一斉に鳴く。100羽以上で行動することも多いため、その騒音はかなりのものとなる。そのため、騒音被害を人間に与えるとして社会問題になっている。
鳴き声は、「ギャーギャー」「ギュルギュル」「ミチミチ」などだ。
2.アオサギ
アオサギは、鳥綱ペリカン目サギ科アオサギ属に分類される鳥で、青鷺、蒼鷺と書く。全長88~98㎝もあり、日本にいるサギ科の鳥の中で最大である。
青みのある灰色の羽毛をしているのでアオサギと呼ばれており、昼行性だが繁殖期には夜も飛ぶことがある。
「グワァ」「カァン」などと鳴くが、ケンカの時には「ギャーギャー」と鳴く。繁殖期になると集団でコロニーを作り、餌場ではあまり鳴かないが、コロニーの中では大きな声でよく鳴く。
キーキー鳴く鳥
夜にキーキーと鳴くのはトラツグミだ。トラツグミは、スズメ目ツグミ科に分類される鳥で、虎鶫と書く。
体長は30㎝前後でヒヨドリと同じくらいの大きさ。以前は「ヌエ(鵺)」と呼ばれており、夜の鳥の代表とも言える鳥である。
横溝正史の大ヒット作の1つ、映画版「悪霊島」のキャッチコピー「鵺の鳴く夜は恐ろしい」で全国的に有名となった。
こうして見るだけでもなんとなくおどろおどろしい雰囲気がする鳥だが、ブランコが風にゆれるような「キーキー」と聞こえるもの悲しい声で夜中から朝方にかけて鳴く。古くは万葉集で柿本人麻呂が、心の嘆きの枕詞、あるいは片思いの枕詞として句を詠んでおり、おどろおどろしい雰囲気はない。
近年では、朝の連続テレビ小説「あおぞら」や大河ドラマ「麒麟がくる」でも、早朝や夜のシーンに使われていたので、思い当たる人もいるのではないだろうか。
キョキョキョと鳴く鳥
キョキョキョと鳴く鳥にはホトトギスがいるが、ヨタカも夜にキョキョキョと鳴く。ヨタカはヨタカ目ヨタカ科の鳥で、夜鷹と書く。
全長29㎝で頭が大きく横長の体型をしている。全身が真っ黒で全身に小さな模様があり、オスは翼と尾に白い班がある。
夜行性で、夕暮れから夜明けまで「キョキョキョ」と鳴く。飛びながら口を大きくがま口のように開け、飛行中の昆虫などを捕まえて食べる鳥である。
夏に北海道に飛来する鳥とは?
北海道には、夏に繁殖のために飛来する夜鳴く鳥がいる。その鳥の名前は「エゾセンニュウ」。漢字で「蝦夷潜入・蝦夷仙入」と書き、その名の通り、繁殖するために蝦夷に飛来したので、この名前がついたと言われている。
スズメ目センニュウ科センニュウ属の鳥で、本州より南の地域には旅鳥として春に訪れる。また、その鳴き声がほととぎずに似ているように聞こえるので、「エゾホトトギス」とも呼ばれている。
鳴き声が独特で、はじめに「チュピチュピ」「ジョピジョピ」と鳴いた後、「ジョッピンカッタカ」「トッピンカケタカ」とさえずるのだ。
北海道では古い方言で「錠」のことをジョッピンと言う。そのため北海道では、夜になると「錠をかけたか?」と問いかけるように鳴く鳥として知られている鳥である。
夜鳴く鳥はどの季節に多い?
夜鳴く鳥は、春と夏に多く見ることができる。どのような鳥がいるのかを、ざっと紹介しよう。
春の夜:17種類
春の夜に鳴く鳥には、上記で紹介したアオサギやゴイサギ、ムクドリ、ヨタカの他に、次のような鳥がいる。
アオアシシギ
チドリ目シギ科クサシギ属。体長32~35㎝前後で他のシギ類よりもスマート。鳴き声は「ピョピョピョ」「チョーチョーチョー」。
ウトウ
チドリ目・ウミスズメ科に分類される海鳥の一種。体長38㎝前後で灰褐色をしている。親鳥が「ウトゥ」と呼ぶと雛が「ヤスカタ」と答えるという伝承がある。
オグロシギ
チドリ目シギ科オグロシギ属。体長は38㎝前後で、長く黒い足と長いくちばしが特徴。飛び立つ時には「キッ キッ」と鳴く。
オシドリ
鳥綱カモ目カモ科オシドリ属。体長49㎝前後。オスは派手で美しい羽毛を持つがメスは地味。つがいでいることが多く「オシドリ夫婦」の語源となっている。オスは「ウィップ」「ピュイ」、雌は「キュイ」「クァッ」と鳴く。
オバシギ
チドリ目シギ科に分類される。体長は28㎝前後。夏になると体の上面に赤褐色の斑が出る。「キッ キッ」とオグロシギに似ているがもっと小さい声で鳴く。
コノハズク
鳥綱フクロウ目フクロウ科に属する。体長20㎝で日本に飛来するフクロウの中で最も小さい。「ウッ・コッ・コー」または「ブッ・ポウ・ソウ」と鳴く。
コミミズク
フクロウ目フクロウ科に属する。全長38㎝前後。黄色褐色で翼の上の面に黒褐色の模様がある。「ギャーウー」と鳴く。
ササゴイ
ペリカン目サギ科ササゴイ属。全長52㎝前後。翼の上部に笹の葉のように見える白い縁取りがあるためこの名前がついた。「キューイッ」と鳴く。
シマフクロウ
フクロウ目フクロウ科シマフクロウ属(ワシミミズク属に含める説もある)。全長71㎝で日本最大のフクロウである。オスが「ヴォッヴォッ」と鳴くとメスが「オー」と鳴く。
タカブシギ
チドリ目シギ科クサシギ属。全長21㎝前後。頭から首、背、翼の上面が黒褐色で、黄褐色の斑点がある。「ピ ピ ピ ピ ピッ」と連続した声で鳴く。
タマシギ
チドリ目タマシギ科。オスは全長22㎝でメスは26㎝。一般の鳥と異なり、オスが子育てをしてメスが巣を守るためメスの方が派手な色をしている。「コーッ コーッ」と何回も続けて鳴く。
トウネン
チドリ目シギ科オバシギ属に分類される。全長15㎝前後。和名を「当年」と言い、今年生まれたものという意味。それほど体が小さい、ということが由来の名前である。鳴き声は「チュリッ」。
トラフズク
フクロウ目フクロウ科トラフズク属で、虎斑木菟と書く。全長38㎝で顔が平らである。「ウーウー」と低く鳴くが、猫のような鳴き声や犬が吠えるような声でも鳴く。
ドバト
鳥綱 ハト目 ハト科。全長33㎝前後。通信用に改良された伝書鳩などが野生化したもの。「クー クー グルッー」と鳴く。
フクロウ
鳥綱フクロウ目フクロウ科フクロウ属。全長50㎝前後。「森の物知り博士」、「森の哲学者」などの呼び名で知られている。「ホッホ ゴロスケホッホ」と低音で鳴くが「ギャアッ」という叫び声もあげる。
ホウロクシギ
チドリ目シギ科に属している。全長60センチ前後で、日本で確認されているシギの中で最大。「ホホーヘーン」「ホーヒーン」と聞こえる声で鳴く。
ミユビシギ
チドリ目シギ科に分類され、三趾鷸と書く。体長19㎝前後でほとんどの個体に後指がないのが和名の由来。「クリー」と鳴く。
夏の夜:9種類
春の夜に鳴く鳥で挙げた、アオサギやムクドリ、ゴイサギ、ヨタカ、ウトウ、オシドリ、コノハズク、シマフクロウなどは、夏の夜にも鳴く。
それ以外では、アオバズクが夏の夜に鳴く鳥として挙げられる。
アオバズク
鳥綱フクロウ目フクロウ科アオバズク属に分類される。体長29㎝前後で、頭から翼までの上面や尾は黒褐色。腹は白く黒褐色の太い点が繋がった縦班がある。「ホッホウ ホッホウ」と2声ずつ繰り返して鳴く。
総括:夜鳴く鳥を網羅解説
一般的に早朝から昼間に鳴くと思われている鳥類だが、種類によっては夜にも鳴く。中にはギャーギャーとうるさく、安眠妨害をするため問題となっている種類もある。
しかし、鳥が鳴くのには理由があり、その1つに危険を察知し、仲間に知らせるためというものがある。厳しい自然界を生き抜くためには、仕方がないことだと理解することも必要ではないだろうか。
都会で騒音が問題になっているムクドリも、本来は山の中にある広葉樹などに住み着いていたが、環境破壊によって都市部に現れたと言われている。
つまり、元を正せばムクドリによる騒音は、人間が自らまねいたことと言えるのだ。難しいことであるが、人も鳥も安心して暮らせる環境を作ることが、問題解決に繋がるのではないだろうか。