アメックスのスケルトンカードは実在するか：グレードの仕組みと正体

答えは「NO」であり、現状における最高グレードのアメックスは「アメックスブラック」「ブラックカード」とも呼ばれるセンチュリオンカードである。

スケルトンカードはしばしばホワイトカード、クリスタルカード等とも呼称され、このセンチュリオンを超えるハイステータスなカードであるともっぱらの噂であるが、そんなものは存在しないというのが事実だ。

しかしながらスケルトンカードの噂のモデルとなったカードは存在しており、これと混同されしばしば実在するものとして語られているというのもまた事実である。

そこで本記事では、アメックスカードのそもそものグレードやその発足の背景について改めて紹介するとともに、スケルトンカードの噂の真相を具体的に検証する。これを読めば、謎多きスケルトンカードを手に入れることも不可能ではない。

アメックスのスケルトンカードは実在する？グレードの仕組み

そもそもアメックスとはアメリカン・エキスプレスの略称であり、これはアメリカ合衆国の企業名を表す固有名詞である。

日本国内においては「ハイレベルなクレジットカード」というイメージが定着して久しいアメックスであるが、厳密に言えばごく一般的なクレジットカードとは異なる点が散見される、やや個性的なカードだ。

以下、一例

①については、柔軟に利用できるという利点がある一方で、必ずしも無制限に利用できるということではない。これは、②にも関連する部分であり、公式では明言されていないものの、極めて高額な買い物などに利用するにあたっては事前入金を求められる可能性が高いとされている。

このように、場合によっては「チャージカード」としての性質が色濃く打ち出されるという特徴があるのだ。

また、階級制度においても特徴があり、日本で初めてゴールドカードという概念を持ち出したという点も特筆すべき要素である。スケルトンカードの正体を追う意味も含めて、まずはこうしたランクの特色を確認してみよう。

スケルトンは最高グレード？幻のカードの正体

スケルトンというグレードの存在は明示されていないものの、アメックスには幻とも呼ばれるハイグレードな階級が存在する。アメックスには個人用と法人用（ビジネスカード）の区別や他社との提携カードなどのイレギュラーなものもあるが、ここでは純粋なアメックスブランドの個人用カードグレードについて紹介していこう。

基本となるグレードとして公式サイト上で案内があるものは下記の3つであり、そしてこれらを超える高級ランクを加えた計4種が、現状における実在グレードだ。

なお、各グレードの審査通過の目安となる年収は、公式から明確には示されていないため、広く認知されている情報をあくまで参考値として紹介することとする。

また、単なる年収額ではなく、定職か否か、その職種などによって判断される要素も多いとする見解が主流であるため、こちらも合わせて認識しておこう。参考までに日本国内の平均年収に関するデータも示しておくため、照合しながら読み進めると良いだろう。

（以下、センチュリオンを除く年会費の情報はすべて下記に基づくものである。

参考：アメックスのクレジットカード一覧（個人カード）｜アメリカン・エキスプレス公式サイト

グリーン（アメリカン・エキスプレス・カード）

一般的なクレジットカード同様審査があるが、アメックスブランドそのものがハイグレードであるため、他社のノーマルカードよりやや厳しい基準が設けられているものと考えられる。もっとも一般的なアメメックスカードであり、カード本体の色が緑色であることから、グリーンカードという呼称が定着している。

ゴールド（アメリカ・エキスプレス・ゴールド・カード）

グリーンカードより上位のグレードであることが明らかであるため、当然のことながらより厳しい審査がなされるものと考えられる。日本で初めて「ゴールドカード」という概念のもとに運用が開始されたカードであり、カード本体も豪華な金色のデザインとなっている。

プラチナ（プラチナ・カード）

「ゴールド以上のステータス」「招待制」という発足当初のイメージが根強く、今なお幻のカードとして誤解されることのあるプラチナ・カードだが、実務上はWEBから申し込み手続きを行うことができるフォームが用意されている。

また、招待制も残っているため、入手の選択肢としては「自ら審査を申し込む」「招待を待つ」の両方が用意されている。

具体的な取得条件は明示されていないという形にはなるものの、グリーンもしくはゴールドのアメックスカードを所持しており、利用履歴が優良であることが事実上の条件として有力である。その根拠として、公式の案内に下記の文言がある。

アメリカン・エキスプレス・カード、またはアメリカン・エキスプレス・ゴールド・カード会員様がプラチナ・カードへの切り替えをご希望の場合、現在お持ちのカード裏面に記載されている電話番号へご連絡ください。

アメックス公式サイトより引用

出典：プラチナ・カード（個人カード）アメリカン・エキスプレス公式サイト

このことから、憶測の域を出ないものの、「アメックスカードを所持し、優良なヒストリーを積んでいること」もしくはこれと同程度の条件があると見て良いだろう。

これを前提に、ゴールドカードよりもさらに厳しい審査が課されるものと考えられ、ステータスを語る上で存在感抜群のインパクトを誇る。

かつてはゴールドカードを超える上位ランクという側面をことさら強調する風潮が強く完全招待制であったが、2019年からは招待制ではなく自らの意思で申し込みを行えるようになったという経緯をもつ。

こうした流れを汲んでのことか、今なお「広く一般に申し込みの間口が開いている」とは言い難い状態であり、話題性に富むカードであるといえよう。

また、ゴールド以上のグレードを表すにふさわしいメタル製のカードが発行されるという点も、プラチナ・カードのプレミア感が際立つ要素の一つである。

加えて、公式における呼称は、グリーンやゴールドとは異なり「アメリカン・エキスプレス」を省いて「プラチナ・カード」となっており、この文言で商標登録がなされている。

「アメックスの」という前置きがなくともこのプラチナ・カードが他社のそれとは一線を画するものであるという、自信がうかがえるネーミングだ。

センチュリオン（アメリカン・エキスプレス・センチュリオン・カード）

現状においてアメックスの公式サイト上では確たる情報が明示されていないため、具体的な条件は不明といわざるを得ないが、利用履歴や社会的ステータスに関する総合的な判断のもと、アメックスからの招待が届くということが広く知られている。この招待に至るまでに、極めて厳しい条件が課されることは明らかだ。

しかしながら、カード本体の見た目が黒いということは広く認知されており、このことから「ブラックカード」「アメックスブラック」という愛称も定着している。また、所持にかかる初期費用としては、入会金と初年度年会費を合わせて約90万円ほどが必要になるとされているようである。

とはいえ、確実な情報は実際に招待されない限りは確認しようがないという現状である。確たる事実確認が難しい部分であり、所持資格を有する人にしかその実態を掴むことができないというこうした特徴こそが、幻のカードたる所以だ。

（参考資料：日本における平均年収の推移）

出典：2019年・国民生活基礎調査の概況｜厚生労働省

そして、スケルトンカードはこのセンチュリオンを超えるグレードとして存在が噂されているが、実在するのであれば「いったいどれほどハイレベルな条件が求められるのか？」と話題を集めるところである。しかしながら、現状においては実在しないというのが結論である。

スケルトンカードはなぜ存在が噂されるのか？

そもそもなぜスケルトンカードなる存在が噂されたのかというと、その起源の一つは発足当初のプラチナ・カードの話題性だ。ゴールドカードという斬新な概念を日本に持ち込んだアメックスであるが、他社による類似サービスの拡充によりその独自性が失われ始めたころ、「これを超えるカードを」という戦略から誕生したとされているのがプラチナ・カードである。

現在では条件を満たせば誰もが手にすることが可能といえるプラチナ・カードであるが、発足当初は完全招待制であり、ここにおいて「アメックスには一般人には手にすることのできない幻のカードがある」というイメージが定着し始めた。

つまり、日本で初めて幻のカードとして台頭したのが「プラチナ」というグレードであったことから、「無色」や「透明」の色彩的なイメージと「幻のアメックスカード」がセットで語られる風潮が誕生したのだ。

また、現在において実際に招待限定のカードとして不動の地位を誇るセンチュリオンをはじめ、超VIPなカードの代名詞として「ブラックカード」という愛称が一般化しているという点も、スケルトンカードの噂に現実味を持たせる要素の一つだ。

この「黒」と双極をなすというイメージからやはり「白」や「透明」のイメージが先行し、無色透明のカードがブラックカードと拮抗するという漠然とした噂がどんどん一人歩きしたといったところである。

このように各グレード制度上の背景と、色彩に関するイメージが複数合わさって、噂話にもっともらしい肉付けがなされていったといったところだ。

また、もう一つの要素として、実際に見た目が無色のアメックスカードがあるというのも、この噂に現実味を帯びさせる一因となっている。

アメックスのスケルトンカードの正体とは？無色は実在する

日本国内におけるアメックスカードのグレードはグリーン、ゴールド、プラチナ、ブラック（センチュリオン）のみであるが、海外においてはこれ以外に無色のカードが存在する。この事実が日本ではあまり知られていないため、上記の噂と結びつき、「幻のアメックスカード」「最高グレードは無色」というスケルトンカードの噂の全体像が完成した。

この正体はアメリカで発行されている「Amex EveryDay Credit Card」であり、「クリアカード」という呼称で親しまれている年会費無料のアメックスカードだ。

出典：Amex EveryDay Credit Card｜アメリカン・エキスプレス公式サイト（海外版）

グレードの定義を再確認しよう

アメックスのスケルトンカードを、「ブラックを超えるグレードのカード」と定義づけるのであれば、これは存在しない。

しかしながら、「無色のアメックスカード」「透明を意味する言葉のグレード」と定義するのであればこれは実在しており、見た目は無色、グレードの愛称は「クリア」という「Amex EveryDay Credit Card」がまさにそれだ。

また、現状においては海外でのみ発行されており、日本では案内が無いという意味合いにおいて、幻のカードといえなくもない特徴も有している。

このカードは海外版のアメックス公式サイトではその存在が明示されており、カードの実物画像も確認することができる。具体的な色味は判別しづらく、「透明」か「白」かを確認することは難しいものの、無色を基調とした色味であることは確実であり、ブラックと対をなすカードとして誤解されて然りの様相である。

しかしながらその年会費は無料であり、グレードとしてはグリーン以下といえるほどに手に取りやすいものであるため、ブラックを超えるグレードのカードであるとはお世辞にもいえない。

ここまでの結論として、再度アメックスの各グレードを所持コストが低い順に確認しておこう。

クリア（Amex EveryDay Credit Card）

年会費無料であるため、所持コストという意味でのグレードはグリーン以下であるといえる。現在は海外でのみ発行されており、日本での通常手配は不可である。

ブラック以上のグレードという意味合いで「スケルトン」というグレードを定義づけるのであれば、これは存在しない。

総括：アメックススケルトンカードの噂の実態

スケルトンカードという幻想と混同されやすいクリアカードは、「日本では手に入らない」「カード本体が無色」「クリアカードという愛称」といった要素から、「ブラックカード並みのプレミア感を持つカード」の噂の具体像を完成させた大きな要因だ。

このクリアカードは、現行の日本国内の枠組みでは手に入らないものの、所定の手順を経て海外での手続きを行えば手配することは不可能ではない。ジョーク用に入手し、自慢してみるのも一興であろう。

アメックスは日本初のゴールドカードという概念を打ち立て、そのステータスの高さを売りにファンとも呼ぶべき顧客の獲得に成功した。その話題性やステータス性といった点で自らのブランド化に成功した広告戦術は、まさに一流企業の手腕が光るところであろう。

日本におけるスケルトンカードへの注目は、アメックス側の意図したところであるか否かは定かではないものの、これもブランディング技術の副産物として見れば非常に面白いものである。

常に時代の先をゆくビジネス手腕で成功を収めたアメックスであるからには、今後スケルトンカードに該当しうるハイスペックカードが登場する可能性も否定できない。こうした経緯を改めて確認すれば、スケルトンカードという集団幻覚のような話題性も、ある意味アメックスの経営戦略の真髄であるといえよう。

最後に、アメックススケルトンカードの噂の真偽を下記にまとめておく。

1）アメックススケルトンの実在について

• アメックスカードの中には、入手しづらい無色のカードがあるというのは事実である
  ※Amex EveryDay Credit Cardという無色のアメックスカードが海外でのみ発行されており、「クリアカード」という愛称で親しまれている
• 無色のアメックスのグレードはグリーン以下であり、「ブラック以上のグレードのアメックス」は現時点では存在しない
  ※無色のAmex EveryDay Credit Cardは年会費無料の低グレードカードである

2）アメックススケルトンの噂が広まった背景

• 招待制の幻のカードとしてはじめに発足したのが、「プラチナ」という無色や透明を連想させる色調のグレードのものであった
• 現存するVIPカードとして「ブラックカード」という概念が定着しており、これと対をなすという意味合いから、「白」や「透明」がブラックカード以上のグレードを示すものとしてイメージだけが一人歩きした
• 実際に見た目が無色のアメックスカードが実在し、かつ日本では発行されていないものであるため、「一般人には入手できない無色のアメックスカードがある」という事実と、先述の「プラチナ」や「ブラック」のイメージが合わさり、「無色の超ハイスペックなアメックス」というスケルトンカードの噂が定着した