1997年に発売された初代プリウスから4半世紀になろうとしています。
「環境にやさしいエコカー」として確固たる地位を築いたハイブリッドカーですが、ある意味ハイブリッドゆえの宿命的トラブルが存在します。
突如ドライバーへ出される「ハイブリッドシステムチェック」という警告です。
一般のドライバーなら焦ってしまう「ハイブリッドシステムチェック」とは何を意味し、どう対処をすれば良いのでしょうか。
そこで、様々なケースに応じた対処法を解説していきます。
記事の内容
- ハイブリッドシステムチェックとは
- ハイブリッドカーとはどんな車か
- ハイブリッドシステムチェックが表示される原因
- ハイブリッドシステムチェックを放置したら?
- ハイブリッドシステムチェックで走行不能?
- ハイブリッドシステムチェックが表示されても走れる?
- ハイブリッドシステムチェックの消し方
一番確実な解除方法
サブバッテリーの端子を外してシステムを再起動
専用テスターを使って表示を消す - 車種ごとの注意点
プリウス
アクア
クラウン・ハイブリッド
エスティマ・ハイブリッド
レクサス車 - 総括
ハイブリッドシステムチェックとは
ある日なんの前触れもなく突然表示される「ハイブリッドシステムチェック」ですが、走行中など「ピー」という警告音とともに目にするとびっくりするものです。
これが何を意味するのか解説する前に、そもそもハイブリッド車がどのような仕組みのどんな車なのか理解しておきましょう。
ハイブリッドカーとはどんな車なのか
ハイブリッド(Hybrid)とは「異種のものを組み合わせ生み出されるもの」という意味であり、車でハイブリッドカーというと「内燃機関(エンジン)」と「電動機(モーター)」の組み合わせが一般的です。
巡航している時や下り坂走行、そしてブレーキング時などエンジン動力が必要ないときに充電し、発進時や上り坂走行などエンジンに負荷のかかる場面では、モーターを駆動させアシストするシステムです。
ハイブリッドを最大限効率よく活用するためシステムも複雑で、モーターを駆動させるためのバッテリーも大型のものが搭載されているのが特徴と言えるでしょう。
ハイブリッドシステムチェックが表示される原因
ハイブリッドシステムで他社に先行しているトヨタのシステムは、走行中あらゆる部分の電圧がチェックされており、異常電圧を検知したときに「ハイブリッドシステムチェック」と表示されるのです。
原因としては複数の可能性があります。電気配線の断線やインバーターの故障も考えられますが、一番多いのがメインバッテリーの劣化です。ここで「メインバッテリー」と書いたのでお気づきの方がいるでしょうが、ハイブリッド車には2つのバッテリーが搭載されています。もう一つのサブ(補機用)バッテリーは、ハイブリッドシステムを起動するための電源です。
メインバッテリーですが複数のセルが組み合わさったバッテリーで、ひとつのセルの電圧低下でも異常と認識してしまい、バッテリーの寿命は走行距離で15万キロから20万キロといわれています。
トヨタの場合、新車登録から5年以内もしくは10万キロ以内でバッテリーが寿命を迎えてしまった場合、バッテリーの無償交換サービスをおこなっています。
ハイブリッドシステムチェックを放置したら?
もし「ハイブリッドシステムチェック」が表示されたとき、それをその後も無視し続けた場合どうなるのでしょうか。先ほど解説したなかの断線などの場合は重大なトラブルに直結する恐れがありますし、直ちに対処する必要があります。
問題なのはハイブリッドシステムが複雑なので素人考えでは解決しないところにあります。何が原因で「ハイブリッドシステムチェック」の表示が出ているのかは、ディーラーで診断機にかけてもらえば分かります。その結果がバッテリーの劣化である場合(このケースがほとんどですが)、ディーラーではバッテリーの交換を当然勧めてきます。
しかしこの場合はディーラーの勧めに飛びつかず、どうするかを冷静の考えるべきです。
ハイブリッドシステムチェックで走行不能になる?
不意に「ハイブリッドシステムチェック」を目にしてディーラーへ行き、診断の結果がバッテリーの劣化だった場合は、その後の走行にすぐに問題がでることはありません。
警告音とともに表示を見てしまうと「走行不能になってしまうのではないか?」と焦るものですが、ディーラーで表示を消してもらったあと、たとえ警告が再び表示されたとしても急に走行不能になるようなことはありません。
もし走行不能な可能性のある不具合があった場合は、当然ディーラーでその旨を伝えられますし、その時には残念ながら即修理です。
ハイブリッドシステムチェックが表示されても走れる?
重大な不具合ではなくバッテリーの劣化だった場合、ハイブリッドシステムチェックの表示後に走行できるのでしょうか?「バッテリーの劣化」のケースでは警告表示後でもそのまま走行できることが多いようですが、場合によってはバッテリーへの充電がおこなわれないこともあるので、やはり最寄りのディーラーへ行き、テスターでチェックしてもらったほうが良いでしょう。
これというのもハイブリッドシステムが走行中にチェックしている箇所があまりにも多いので、「ハイブリッドシステムチェック」という表示だけでは問題の重大さまで分からないからです。
ハイブリッドシステムチェックの消し方
走行中に警告音とともに「ハイブリッドシステムチェック」が表示されたとき、その表示を消す方法はいくつか存在しています。
何かしら修理や交換が必要な原因で警告さえている場合は、一度表示を消しても再び「ハイブリッドシステムチェック」が表示されますが、ここではとりあえずの「消し方」を解説します。
一番確実な解除方法
ハイブリッドシステムチェックという表示がでたときの対処法で、一番確実で安心な方法はディーラーで対応してもらうことです。当たり前すぎて言うまでもないことでしょうが、先ほども解説したとおり「ハイブリッドシステムチェック」という表示だけでは重大な問題かどうかわからないので、チェックついでに表示を消してもらうは安全面でもお勧めです。
ただ難点と言えるのか微妙ですが、ディーラーでは当然のように「バッテリーの交換」を勧められるでしょう。メインバッテリーの交換だと車種にもよりますが17万円~20万円以上の費用、場合によっては(PHVタイプの場合)70万円くらいにもなります。
先にも触れましたが、バッテリーの交換が緊急を要しない場合は、安く交換する方法があるので、とりあえずは「ハイブリッドシステムチェック」の表示を消してもらうだけにしましょう。
サブバッテリーの端子を外してシステムを再起動
「ハイブリッドシステムチェック」という表示を消すための簡単な方法で、サブバッテリーの端子を外してシステムを再起動するという方法があります。これってパソコンがフリーズしてうんともすんともいわないとき、無理矢理電源を落としてしまうということと同義と言えます。
正直なところ「そこまで手間をかけて”表示”を消すだけ」という行為には抵抗感があるのですが、意外とやられている方が多い処置方法です。
ハイブリッドシステムの電源供給の遮断の仕方ですが、2つある電極のうちマイナス端子(赤いカバーがついていない方)をスパナで緩めて外すだけです。外した状態で10分ほど放置しておくと、車に搭載された電装品がすべて初期化されて、再始動したときには「ハイブリッドシステムチェック」も消えています。
専用テスターを使って表示を消す
テスターというとディーラーの整備員さんが使うような大袈裟なものを想像してしまいますが、実はアダプターを繋げてスマホやパソコンで操作するような簡単なものです。ネットなどでは1,000円台で購入できます。
作業には多少のシステム的な知識が必要になりますが、「ハイブリッドシステムチェック」という表示を消す目的のためだけなら一番手軽な方法と言えるでしょう。
ハイブリッドシステムチェック=車種ごとの注意点
色々と紹介してきた「ハイブリッドシステムチェック」にまつわる話でしたが、ハイブリッド車といっても種類が多いわけで、ここではトヨタのハイブリッド車を中心に「ハイブリッドシステムチェック」が出たときの注意点を解説します。
ただ一つ気を付けなければならないのが、ハイブリッド車と言っても初代プリウスが登場してから4半世紀近く経っているので、初期のころのモデルと最新のモデルとではかなりの違いがあることはご承知おきください。
プリウスのケース
言わずと知れたハイブリッド車の代名詞「プリウス」です。現在は4代目のプリウスとなりましたが、流通数も多いことから「ハイブリッドシステムチェック」の事例が一番多く見受けられる車種です。
ネットで「ハイブリッドシステムチェック」を調べるとプリウスでの対処法がたくさん出てくるので、ある意味一番メジャーなものです。
プリウスの補機用バッテリーはリアラゲッジスペース下のスペアタイヤ右側にあり、カバーを外すと簡単に見つかります。スペアタイヤ前方にはメインバッテリーが鎮座しており、ついでに見かけることになります。
ちなみに現行型プリウスの裏技として「イグニッションのONとOFFを3回繰り返す」ことで「ハイブリッドシステムチェック」を消すことができます。
アクアのケース
2011年に販売を開始したトヨタ・アクアは、プリウスより一回り小さい5ナンバーサイズのハイブリッド専用車です。
アクアは小型車のためか補機用バッテリーの設置場所がすこし変わっていて、右側リアシートの下にあります。シート下のカバーを外すとそこにバッテリーが現れます。
アクアの場合、メインバッテリーも他のハイブリッド車よりも小さく、やはりリアシートの下(補機用バッテリーのとなりに)に設置されています。
プリウスと比較すると容量が70%で、出力もプリウスの60kwに対して45kwとなっています。小型で軽量なアクアなので小さなメインバッテリーでも問題ないのです。
クラウン・ハイブリッドのケース
かつては「いつかはクラウン」というキャッチフレーズで、国産セダンの最高峰に位置していたクラウンですが、レクサスブランドという上位国際ブランドが登場してからは立ち位置が微妙な存在になってしまいました。
クラウンの補機用バッテリーはトランクルームの左端にあり、内張に覆われた状態で格納されています。
エスティマ・ハイブリッドのケース
1990年の登場から独特の丸みを帯びたデザインで異彩を放っていた大型ミニバン「エスティマ」ですが、2020年で販売を終了してしまいました。
エスティマ・ハイブリッドの補機用バッテリーは3列目シート左後ろにカバーで覆われた状態で格納されています。
ちなみにエスティマの場合、メインバッテリーの搭載方法も特徴的で、エスティマ後期型からは運転席と助手席の間に縦方向に搭載されており、これによって3列目シートのアレンジの制限や、荷室が狭くなるという欠点を解消しています。
レクサス車のケース
トヨタ系列の最上位である「レクサス」は1989年に北米でスタートし、本国日本では2005年から展開されたプレミアムブランドです。
レクサスと一口に言ってもハイブリッドのラインナップ車種は多く、最上位のLSシリーズから一番安価なCTまで9車種もあります。その中でHSだけがハイブリッド専用モデルで、日本国内のみ販売されています。
ここまでのトヨタ車と同じような場所に補機用バッテリーが搭載されています。
総括:ハイブリッドシステムチェックが出たときの正解
ここ20年以上にわたりエコカーの代名詞としてシェアを拡大してきたハイブリッド車ですが、いままで解説してきたとおりバッテリーの劣化は避けがたいものです。
そして”それ”を知らせる「ハイブリッドシステムチェック」というシグナルでした。
しかし愛車を長く乗ろうと思ったならば、不調の兆しを知らせてくれる有難い警告なのかもしれません。ここで得た知識を活かし、いざというとき冷静に対処されることを期待しております。