青沼静馬と聞いてすぐに分かる方は「犬神家の一族」を良く知っている方でしょう。そう青沼静馬とは横溝正史原作の犬神家の一族に登場する架空の人物です。
犬神家の一族は金田一耕助シリーズの一作です。映像化回数の多い作品で、映画3本、テレビドラマ7作品公開されており、そのキャスティングも話題になります。
その劇中で視聴者にインパクトを与える人物の一人が青沼静馬です。今回は犬神家の一族と、劇中に登場する青沼静馬のエピソードについて解説します。
記事の内容
- 犬神家の一族と青沼静馬
- 犬神家の一族という作品
- 青沼静馬とは誰なのか
- 青沼静馬とスケキヨ
- マスクに隠された青沼静馬の顔
- 「青沼静馬だよ」というセリフとインパクト
- 青沼静馬にまつわるエピソード
- 役を演じた俳優
- なんとも不気味なフィギュア
- 総括:いろいろ考えさせられる青沼静馬の生き様
犬神家の一族と青沼静馬
犬神家の一族で重要な役どころとなる青沼静馬ですが、そもそも犬神家の一族とはどのような作品で、登場人物の相関関係を知らねば意味が分かりづらくなってしまいます。
とはいえ犬神家の一族と青沼静馬について解説すると、それだけで膨大な量になってしまうので、可能な限り簡単に触れていきます。
犬神家の一族という作品
「犬神家の一族」は横溝正史の長編推理小説で、金田一耕助シリーズの一つです。1950年1月から1951年6月まで雑誌「キング」に掲載され、1972年6月角川文庫から刊行されました。
この作品を一躍有名にしたのが、角川春樹の鶴の一声で映画化が決まり、市川崑が監督を務めた1976年公開の映画「犬神家の一族」です。映画は大ヒットし以後の金田一耕助シリーズに大きな影響を与えました
ところで犬神家の一族のあらすじですが、信州財閥の巨頭だった犬神佐兵衛の死による遺産相続をめぐるミステリーで、それを金田一耕助が解決するというものです。
犬神佐兵衛には腹違いの3人の娘(松子・竹子・梅子)がおり、その3人は自分たちが遺産を相続できるものと思っていました。
しかし佐兵衛の遺言状には「野々宮珠代が佐清(すけきよ)・佐武(すけたけ)・佐智(すけとも」の佐兵衛の3人の孫息子の中から配偶者を選ぶことを条件に、珠世に与えるものとする」さらに「珠世が相続権を失うか死んだ場合、犬神家の財産は5等分され3人の孫息子は各5分の1ずつを相続し、残り5分の2を佐兵衛の愛人・青沼菊乃の息子の青沼静馬が相続する」とあ、3人の娘は怒り狂い憎悪の炎を燃やしました。
これが事件の発端なのですが、松子の息子が佐清、竹子の息子が佐武、梅子の息子が佐智です。この遺言を知るまで3姉妹たちは佐兵衛が50を過ぎてから寵愛した青沼菊乃と、その息子の存在を忘れていたのです。
青沼静馬とは誰なのか
青沼菊乃は犬神佐兵衛最後に寵愛した愛人でした。その菊乃に子供を産ませ、犬神家の家宝(よき・こと・きく)まで渡してしまったことに3姉妹は嫉妬し、冬のある日菊乃の家へ押しかけ身ぐるみを剥がし寒空に引きずり出し、水をかけ棒で叩きつけ菊乃を折檻し、痛めつけて犬神家の家宝を奪い返しました。
3姉妹は赤ん坊の尻に焼け火箸をあてがい、さらに赤ん坊は佐兵衛の子どもではなく情夫の子どもであると無理やり一札書かせた(佐兵衛とは血縁ではないという一筆)のです。
この時の赤ん坊が青沼静馬で、つまり青沼静馬は犬神佐兵衛の子に当たります。
3姉妹に追い出されることになった青沼菊乃は去り際に「いつかこの仕返しをせずにはおかぬ。いまにその斧、琴、菊がおまえたちの身にむくいるのじゃ。」と言い残したと言います。その恨みは一人息子の青沼静馬に受け継がれたのです。
青沼静馬とスケキヨ
菊乃により津田家に預けられた静馬は21歳のとき津田静馬として徴兵され、ビルマの戦地で母菊乃の仇である犬神松子の息子犬神佐清と偶然出会います。2人は意気投合して友人になりますが、後に佐清の部隊が全滅したことを知り、佐清が死んだと思い込みます。そして静馬自身も顔に大火傷を負って復員してきました。
佐清が死んだと思い込んだ静馬は、母を襲撃した佐清の母、松子のことは根深く恨んでおり、顔のけがを利用して佐清になりすまし、犬神家の財産を奪うことで3姉妹に復讐しようと画策します。
マスクに隠された青沼静馬の顔
火傷を隠すためのマスク姿は映画でもドラマでも、インパクトが大きく印象に残るシーンです。
松子の息子佐清に成りすましていたので、本当の佐清かどうか怪しむ竹子・梅子を前に松子が「佐清、さあ顔を見せておやり」と言ってマスクを取るシーンは、ある意味見どころの一つでしょう。
「青沼静馬だよ」というセリフとインパクト
野々宮珠代を息子佐清と結婚させて犬神家の財産を独り占めするため、松子は邪魔になる佐武と佐智を殺害します。
そして珠代に佐清との結婚を迫る松子でしたが、珠代から思いもかけないことを言われてしまいます。「松子おばさま、この人は佐清さんではありません」と。
動揺して佐清と思い込んでいる青沼静馬に問いただす松子に対し、「フフフ・・・珠代の言ったことは本当だよ。あんたの大事な佐清さんは、とっくにどこかに消えちまったよ!」という静馬。
松子は「お前は一体・・・」と固まりますが、そこへ青沼静馬が言い放った言葉が「青沼静馬だよ。あんたとあんたの妹たちに痛めつけられ、責め苛められた青沼菊乃の息子、静馬さ!お袋が死んだのは俺が9つのときさ。最後まであんたたちを呪っていた、この犬神一族をな。俺は自分に誓った、必ず復讐してやる、お袋の恨みを晴らしてやるってな!」なのです。
しゃがれた声で不気味に言い放つその姿は、見たものの心に残るシーンでした。
翌日、湖で佐清と思われる逆さになった死体が発見されるのですが、神社に奉納された佐清の手形と一致しませんでした。佐清に成りすました青沼静馬なので当然のことです。青沼静馬も松子の手にかかって死んでしまいます。湖に静馬の遺体を遺棄したのは、死んだと思われていた本物の佐清で、こんなことをしたのは青沼静馬を殺してしまった母松子を庇うためだったのです。
青沼静馬にまつわるエピソード
犬神家の一族でのスケキヨに扮した青沼静馬の演技は、何とも言えない不気味さで見ている者に強烈な印象を残しました。
またその最期を描いたシーンはインパクトが強く、その後いろいろな作品に影響を与えたと言われます。
ここからは青沼静馬にまつわるエピソードを紹介していきます。
役を演じた俳優
犬神家の一族で青沼静馬の役どころは重要で、ある意味劇中で一番インパクトがある役なので、青沼静馬役の俳優が誰なのか話題になります。
1976年公開の映画ではあおい輝彦が犬神佐清と青沼静馬の二役を演じました。映画化された2番目の作品ですが「佐清・静馬といえばあおい輝彦」という方も多いでしょう。これは金田一耕助役の石坂浩二と同様なのかもしれません。
1954年公開の「犬神家の謎 悪魔は踊る」では石井一雄。2006年公開の映画では尾上菊之助があおい輝彦と同様、佐清と静馬の二役を演じて話題になりました。
テレビドラマ版でも、田村亮(故田村正和の弟)、椎名桔平、西島秀俊、賀来賢人など、実力派が犬神佐清と青沼静馬の二役を演じることが多く、犬神家の一族で重要な役どころであることが分かります。
なんとも不気味なフィギュア
世の中では色んなものがフィギュア化されますが、青沼静馬が成りすましていた「スケキヨ」のフィギュアもあるのです。羽織袴姿の青沼静馬です。
そして湖で発見された「逆さ状態の足だけ湖水の上に表れている」青沼静馬がこちらです。
犬神家の一族の劇中での不気味さがよく再現されていて、見るものを驚かせるようなフィギュアです。
総括:いろいろ考えさせられる青沼静馬の生き様
記事のポイントをまとめます。
犬神家の一族での青沼静馬
- 青沼静馬は横溝正史の代表作「犬神家の一族」の登場人物
- 犬神家の遺産相続がことの発端だが、一族の勝手が目立ちます
- 不幸すぎる青沼静馬の生い立ちと、酷すぎる犬神家の3姉妹
- 青沼静馬とスケキヨとの偶然の出会いが復讐の始まり
- 鬼気迫る「青沼静馬だよ」という場面ですが気持ちは分かります
青沼静馬のエピソード
- 西郷輝彦が印象深いが、青沼静馬役を演じた俳優たち
- 興味はあるが恐ろしい青沼静馬フィギュア
青沼静馬について解説してきました。小説に登場する架空の人物ですが、幼いころから母の復讐を考え続けて生きてきた哀れな男です。佐清の母たちの酷い仕打ちがなければ、もしかしたら幸せな人生を歩んでいたかもしれないと考えれば、青沼静馬が架空の人物であっても可哀想になってしまいます。
今後もリメイク作品があるかもしれませんが、次は誰が青沼静馬を演じるのか楽しみになるほど、インパクトある人物です。
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