近年はジェンダー(性差)に関する議論が国際的にも高まっており、英語学的には異論が出ているものの「ジェンダーフリー」という言葉をよく目にするようになりました。これらの議論がなされるたびに思想的出発点である「フェミニズム」が話題にされます。
フェミニズムは女性の権利向上を目指す思想なのですが、これと似たような思想で且つ過激な考え方で「ミサンドリー(misandry)」というものがあり、この思想を信奉する人を「ミサンドリスト」といいます。
あまり聞きなれない言葉ですが、このミサンドリストについてその歴史や、フェミニズム・ジェンダーフリーとの関係を踏まえて解説します。
記事の内容
- ミサンドリストとはどんな人たちなのか
- 歴史的事実としての男女の役割
- フェミニズムの勃興
- ミサンドリストとは?その意味
- 攻撃的・差別的になってしまう原因
- ミサンドリストの対義語
- twitter上のミサンドリストはツイフェミ?
- ミサンドリストを巡る誤解と混乱
- 日本におけるフェミニズム
- 田嶋陽子氏について
- どんな特徴があるか
- ミサンドリストのまとめで参考になる話
- もうミサンドリーという思想は時代遅れ?
- ミサンドリストとはフェミニストとも違う差別主義・被害妄想
- 総括
ミサンドリストとはどんな人たちなのか
ミサンドリストとはミサンドリーという思想を信奉する人たちのことを指す言葉です。これだけでは何のことなのか理解できませんし、まずはミサンドリーという考え方が発生した歴史や背景などを知らねばなりません。
こう書くと語弊がある時代になってしまいましたが、少なくとも生物学的には「人間には男と女の2種類しか存在しない」ということが出発点になります。そこを踏まえながらミサンドリストについて考えてみましょう。
歴史的事実としての男女の役割
現在でもスポーツ医学の分野では事実として「一般的に男性は女性に比べ筋力があり、体力もある」とされ、この差こそが歴史的に男女の役割の根本的な原因であることは明らかです。とくに古代から近世にかけての戦争では戦士は男が務めるものであり、その義務と表裏一体の関係で権利が与えられていました。
それが故に世界で信仰されているほとんどの宗教でも今の基準で考えるなら明らかな「男尊女卑」的な思想が見られます。中世ドイツの神学者で「宗教改革」の中心人物だったマルティン・ルターですら「女児は男児より成長が早いが、それは有益な植物より雑草の方が成長が早いのと同じである」と述べていることからも推察できます。
これら歴史上に見られる男女の役割については事実として捉えないと、「なぜ男女平等が必要なのか」という議論が成り立たなくなります。しばしば事実を無視した発言をする「平等主義者」がいるのですが、そのような主張は議論の邪魔をしているに過ぎないのです。
フェミニズムの勃興
フェミニズムとは「政治・文化・社会で生じる男女差別を明らかにし、平等な社会を目指す」という女性解放運動のことであり、歴史上「運動」として最初に確認できる事例は18世紀末フランス革命後の欧州で見られます。
フランス革命により「人間と市民の権利の宣言(フランス人権宣言)」が採択されたのですが、ここで言う「人間・市民」とは「市民権を持つ白人男性」のことであり、男性にだけ権利が与えられることに対する抗議運動が欧州で広がりを見せ、これがフェミニズムの誕生とされています。
ちなみにフランス人権宣言では女性ばかりではなく、有色人種なども完全な人間と見なさないという、現在の価値基準だと恐ろしく差別的な観念のものです。
その後20世紀になり第二次世界大戦後、アメリカ政府のプロパガンダと言われている「結婚して子供を持つ郊外住宅の主婦」という女性の価値観への反対活動として、再びフェミニズム運動が盛んになってきました。
日本においてはアメリカと違い専業主婦というスタイルが普通のこととして受け止められていたせいか、他国のフェミニズムとは違った経過をたどり、女性参政権なども運動の結果としてではなく敗戦後GHQの主導のもと実現するなど、現在も続くフェミニズムに関する誤解の原因となる歪なものとなりました。
ミサンドリストとは?その意味
ミサンドリストとはミサンドリーという概念を信奉する人たちのことですが、このミサンドリーとはどのような考え方なのでしょうか。ミサンドリーを訳すると「男性嫌悪」「男性憎悪」で、男性を性差別・中傷するような思想と言えます。
この手の話題に興味がない人たちにとってはフェミニストもミサンドリストも同じように見えてしまうかもしれませんが、両者には明らかな違いがあります。フェミニズムは女性の地位向上が目的であり、真のフェミニストは論理的であり抑制的なのです。
一方ミサンドリストの行動は男性蔑視が根底に存在して攻撃的であり、差別的な特徴がありますが、両者を見分けづらくしている一番の原因は、多くのミサンドリストが自分のことを「フェミニスト」と名乗っているからです。
本当のフェミニストから見るとすぐ分かることで、そんな人たちにとってミサンドリストは「無駄に男女対立を引き起こしているフェミニストの敵」という存在で、その被害の多くは社会的弱者が被っているという点も大きな問題です。
攻撃的・差別的になってしまう原因
男性に対し攻撃的で差別的なミサンドリストですが、彼女ら(一部男性もいるが)はなぜそのような思想や感情に支配されるようになったのでしょうか。これには複数の原因が考えられています。
あるケースでは過去に経験した親を含む男性との関りがトラウマとなって、自己防衛手段として男性を攻撃したり誹謗中傷したりするようになります。このようなトラウマを抱える女性は「男性恐怖症」になることも多いのですが、いずれにせよ心理的なものが原因です。
これとは違い厄介なケースは「フェミニストとして上手くいかなかったこと」が原因でミサンドリストになってしまうことです。
困ったことに多くの場合自分がミサンドリストだという自覚がなく、なおかつ上手くいっている(と思っている)フェミニストをも攻撃することも見られます。
いずれにしてもミサンドリストの行っている行為は新しい差別行為であり、行き過ぎた言動は「人権の蹂躙」そのものです。
ミサンドリストの対義語
男性に対し嫌悪を感じる人をミサンドリストと定義すると、その逆に女性に対しそのような感情を抱いてしまう人もいるのではと思いますがどうなのでしょうか。
実は女性に嫌悪を感じる人を「ミソジニスト」と言い、ミサンドリストの対義語にあたります。このミソジニストが抱える感情や思想を「ミソジニー」と言うのですが、少し複雑な部分があり男性がそう感じることは「女性嫌悪」「女性蔑視」と簡単に定義できます。
しかし女性がそう感じるケースでは「女らしい自分に対する嫌悪感」となって、これはすなわち「自己嫌悪」という感情になってしまうのです。この感情が行き過ぎると「女性らしい自分の体に対する嫌悪感」から拒食症などの摂食障害となってしまう事例も存在します。
twitter上のミサンドリストはツイフェミ?
最近はSNSで簡単に情報発信が出来るようになり、便利になったことも多いのですが、その反面である事案や意見に対して誹謗中傷のような書き込みも多く見られ、社会問題の一つになっています。
そんな中、twitter上でフェミニズム的な発言や行動をする人たちのことを「ツイフェミ」と呼ぶようになっており、そのツイフェミの言動を巡ってウェブ上の炎上騒ぎも起きています。
本来「ツイフェミ」と一括りに評価することは乱暴なことです。しかし過激なツイフェミは「これは女性蔑視」と思った対象に対し異常な攻撃性を見せるのは事実で、その対象は「著名人の発言や過去の言動」「企業のCM」「映像(音声)コンテンツ」「ポスターなどの広告物」など多岐にわたります。
これらを見ていくとフェミニストの立場での正常な意見と、過激な言動をみせる人々は分けて考えなければならず、後者の行動はミサンドリストの行動と同類の傾向が見られます。
とくにミサンドリストと見られるツイフェミの攻撃対象は、正常なフェミニストに向けられることも多く、ツイフェミという言葉が「否定的なイメージ」で語られる一番の要因なのです。
ミサンドリストを巡る誤解と混乱
ミサンドリストとフェミニストは同じ方向を目指しているように見えてしまうか方は多いでしょう。
それというのも日本において自称フェミニストという方たちの発言や思想が、もともとのフェミニズムから逸脱するケースが散見されることも影響しています。
近年ではSNSの発展もあり、よけいにミサンドリストとフェミニストの違いが分かりづらくなっているのも事実です。ここでは分かりづらい点を整理しながらミサンドリストの実態について考えていきます。
日本におけるフェミニズム
現在でも「日本は欧米と比べて女性の社会進出が遅れている」と言われることがあります。本来は「欧米が正しく日本は間違っている」という基準で判断することの方が危険なのですが、確かに政治家や企業の管理職に占める女性の割合は欧米に比べて低いのは事実です。これらの結果と日本のフェミニズムとは関係があるのでしょうか。
長くにわたる武家政権の影響もあって日本では家長制度の縛りが強く、「家長=家の中の高齢男性」の権威が強く維持されてきました。それが明治維新を契機とした近代化とともに変化していき、少しずつではあっても女性に対する差別的待遇は改善していきました。
しかし第二次世界大戦後までは参政権もなかったわけで、女性の権利獲得も「外圧による解放」という結果だったことは事実です。戦後の日本においてフェミニズムが目指したものは、「女性はかくあるべき」という束縛からの解放と、「貧困の撲滅によって女性を娼婦から解放する」ということがあります。
これらの活動が盛り上がったのは1970年代前半のことで、この主張の根幹には「女性は被害者」だという前提条件があったうえ、「プロレタリアート」などの言葉が出てくるあたりは、少しばかり共産主義的な革命の影響も見え隠れします。
しかしある意味「決めつけ」とも受け取れる主張は、その後のミサンドリストの出現とフェミニズムに対する否定的見解の遠因であることは間違いありません。
田嶋陽子氏について
田島陽子氏といえば日本を代表するフェミニストと思われていて、ご自身もそう思われているようです。彼女はラディカル・フェミニズムという「ポルノ撲滅運動」に代表される「女性の性的部分・性的な対象になることによる差別問題」という側面から男女間の権力関係を論ずるフェミニストのはずなのですが、特に最近の発言を見聞すると少しばかりズレている印象は否めません。
メディアに出演しては「男性社会が悪い」「専業主婦は奴隷」「女性は洗脳されている」など、フェミニストというよりはミサンドリストのような発言が目立ちます。しかも矛盾点や間違いを指摘されたときの反応がミサンドリストのように見えてならないのですが、これに関しても決めつけは良くないので、「そのような印象を強く受ける」と言うに留めておきましょう。
どんな特徴があるか
フェミニストとミサンドリストとは違う存在であることは理解できたことと思います。それどころかミサンドリストはフェミニストにとっても敵であるという意見もあるくらいです。
ではそんなミサンドリストはどんな特徴があるのか、いくつかの点を挙げておきます。先ずはお判りでしょうが「男性に対して差別的な言動をする」「男性というだけで否定をする」という点は明らかな共通点です。もう思想というより感情がそうなってしまっているのでしょう。
それ以外にも「論理性の欠如」「すぐ感情的になる」「自分は正しいと思い込んでいる」「SNSで男性へ対する異常な攻撃性」など、どれも困った特徴だらけです。このようなミサンドリスト的な特徴が見られる人には近づかないことが正解と言えます。
ミサンドリストのまとめで参考になる話
興味がない方にとっては表面上見分けづらいフェミニストとミサンドリストですが、ミサンドリストは差別的な思想に支配されているので、その言葉を注意深く観察することで簡単に分かるという話が、とあるまとめサイトで話題となっていました。
それによると「男(男性)」という単語を「イスラム教徒」、「性犯罪」を「テロ行為」、「性コンテンツ・ポルノ」を「コーラン」にそれぞれ置き換えて、その主張が良識的・常識的に聞こえたらフェミニストであり、侮辱的・差別的に聞こえたらミサンドリストだと言うのです。この置き換え方には賛否はあるでしょうが、試してみると妙に納得できるものです。
もうミサンドリーという思想は時代遅れ?
ミサンドリストがいかに差別的な考え方であるかは分かりましたし、この思想は時代遅れというより「平等や人権に対する敵対行為」とさえ言えるものです。これとは違うのですが、近年になりフェミニズムですら時代遅れの思想だという意見や認識が広がっていることをご存知でしょうか。
最近の若い女性ならそもそも男女差別を意識することなく育ってきた方がほとんどで、そんな彼女らからみるとフェミニストは「不当に男女差別を取り上げて騒いでいる」存在に映るようです。このような考えかたは日本だけのものではなく、海外でも「反フェミニズム運動」として話題になっています。
どのような思想にも時代にそぐわなくなる時はやってくるわけで、フェミニズムが不必要だということは、ある意味フェミニストが望んだ世の中になってきた証かもしれません。
総括:ミサンドリストとはフェミニストとも違う差別主義・被害妄想
記事のポイントをまとめます。
ミサンドリストはどんなものなのか:歴史背景
- 歴史的事実として女性は差別されていた
- 女性の地位向上を目指したフェミニズム
- ミサンドリストは男性を嫌悪する人たち
- 過去のトラウマでもミサンドリストになり得ます
- 対義語であるミソジニストには困った事例も
- ミサンドリスト?ツイフェミの迷惑な行動
ミサンドリストを巡る様々な話題
- ミサンドリストは「自称:フェミニスト」
- 欧米とは軌跡の違う日本のフェミニズム
- 田嶋陽子氏はミサンドリストの気が強い?
- ミサンドリストの特徴と見分け方
- もうフェミニズムは要らない時代なのかも
歴史的に男性唯の社会が続いてきた人間社会で、女性の地位向上を目指すフェミニズムという運動がミサンドリストの出発点でもあります。とはいえ過激を通り越して「人種差別」とも言えるようなミサンドリストの言動は問題も多く、フェミニストからすら敵視されるような困った人が覆うのが現実です。
最近はSNSで容易に情報発信できる反面、簡単に誹謗中傷を受ける怖い世の中となりました。特に性別にかかわる発言は、人種や宗教にかかわる発言と同じような慎重さが求められるということを、ミサンドリストの行動や攻撃から学ぶべきです。油断すると炎上が避けられないことを強く意識しましょう。
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