自衛隊は日本の国防を担う組織で、政府見解では日本国憲法の制約もあり「軍隊ではない」という苦しい解釈ですが、国際的法上は軍隊という扱いになっています。
事実上軍隊である陸・海・空の自衛隊なので、服務規律に関しては厳しい運用がなされています。
自衛隊は若い隊員も多く、世代的にもオシャレに気を使いたい年ごろです。そんな自衛官たちの「オシャレと服務規律」の境界はどのようなっていて、髪型はどこまで自由が利くのでしょうか。
今回は自衛隊の髪型にまつわる様々な現実について解説します。
記事の内容
- 自衛隊の髪型に関する規則と現実
- 自衛官の服務規律を定めている自衛隊法
- 髪型に関する規則
- 入隊面接と教育期間の髪形
- 男性自衛隊員の髪型
- 女性自衛管隊員の髪形
- 部隊配属後は?
- 自衛隊の髪形をめぐる苦労や裏話
- 自衛隊でのおしゃれの限界
- 海上自衛隊について
- ツーブロックやパーマは大丈夫?
- 画像で確認する自衛隊の髪型
- 涙ぐましい髪形への抵抗
- 他国の軍隊では髪型に規則はあるか
- 国防を担う自衛官にとって髪型の優先順位は低い
- 総括
自衛隊の髪型に関する規則と現実
自衛隊員とは硬い言葉でいえば「防衛省の特別の機関である自衛隊任務を行う防衛相の職員」であり、「特別職国家公務員」です。
一般の国家公務員の身分は「国家公務員法」により規定されているのですが、特別職はこの法律の適用を受けない国家公務員です。
一般の国家公務員や地方公務員を見ていると、ヘアスタイルや服装などラフな方も結構いるイメージですが、特別職である自衛官の場合はどうなのかを自衛官の身分を規定する法律や、それに従う実際の運用状況について見ていきましょう。
自衛官の服務規律を定めている自衛隊法
自衛隊員は国家公務員であっても特別職にあたり、隊員に従うべき法律として「自衛隊法」というものがあります。
この法律の第一条の「この法律は、自衛隊の任務、自衛隊の部隊の組織及び編成、自衛隊の行動及び権限、隊員の身分取扱等を定めることを目的とする」と書かれており、実力組織である自衛隊が一般の公務員と違うことが分かります。
自衛隊法を見ていくと「やはり軍隊だな」といった内容ですが、そのなかに第五十八条に(品位を保つ義務)という条文があります。
そこには「隊員は、常に品位を重んじ、いやしくも隊員としての信用を傷つけ、又は自衛隊の威信を損するような行為をしてはならない」「自衛官及び学生は、防衛大臣の定めるところに従い、制服を着用し、服装を常に端正に保たなければならない」と書かれています。
実はこの条文が自衛隊での髪型に対する制約の根幹部分であり、髪型だけではなく服装や態度など態度・行動全般の判断基準になっています。
事細かに規定さえていないことが、見ようによっては「好きに解釈」できるともいえ、結局のところ各配属先の上官が「ダメと言ったらダメ」ということになります。
髪型に関する規則
自衛隊での髪型は自衛隊法第五十八条に書かれている「品位を保つ」という制約によって、自衛隊各所における伝統的かつ実質的な規則によって、許される範囲が決まっています。つまり明確に文章化されていない「不文律」といったもので、実に日本的な運用方法と言えます。
自衛隊は入隊面接にはじまり、そこをクリアすると半年間の訓練期間を過ごし、その後は決定された配属地・配属先に着任するのですが、この過程の最初の方になればなるほど髪型などに厳しいチェックが入ります。
これは最初の過程になるほど「自衛官として適格かどうか」という人としての本質部分を観察し、ある意味で「ふるいにかける過程」だからでしょう。
髪型や身だしなみすら従えない人間は、極限の環境では使い物にならないということです。
入隊面接と教育期間の髪形
自衛官候補生として面接を受けるときも髪型や身だしなみは重要なチャックポイントとなっています。
それだけで全てが決まるわけではありませんが、3人の面接官によって10分~20分行われる個別面接の受け答えと同程度の評価基準と言って差し支えありません。
これらの結果はA~Dに4段階の評価となり、C評価だと微妙でD評価だと不採用です。少なくとも真剣に自衛隊入隊を考えているなら、出来るだけ短くスッキリとした髪型で面接に臨むようにしましょう。
男性の場合であれば坊主の方が良いですし、女性も耳にかからないくらいの短さにしましょう。
面接も通過し自衛隊生活の中でも過酷だと言われる(感じる)6か月間の教育期間を過ごすため最初の駐屯地へ入るのですが、実はこの段階でも僅かながら微妙な髪の長さにしている人がいるようです。
当然「当日中に髪を切るよう」班長から指導を受け坊主になるのですが、それでも髪を切ることに抵抗するようだと入隊式を前に駐屯地を去ることになります。
政府が軍隊ではないといってもそれは建前上のことであり、髪を切ることすら拒否するような隊員が1人いることは、戦場では部隊に危険を及ぼす可能性のあることなのです。
どんなに抵抗しようが入隊するときにはスッキリした髪型になるので、無駄な抵抗など考えるべきではありません。
男性自衛隊員の髪型
教育期間の男性自衛隊員は坊主がスタンダードな髪型となります。
教育は前期教育の3か月と後期教育の3か月に分かれていて、特に前期教育は自衛官として基本となる敬礼や歩き方、集団生活そして小銃などの扱い方や射撃など、その後の自衛官人生の基礎を叩きこまれるので、非常に厳しい指導を受ける毎日です。
早朝起床ラッパで寝床から飛び起き、消灯・就寝まで分刻みのカリキュラムをこなす毎日のため、髪型にこだわっている余裕などないというのが実際のところです。
また入浴時間も限られているので、髪を乾かす時間的を節約する意味でも坊主が合理的と言えます。
女性自衛管隊員の髪形
教育機関において男性自衛官の髪形は坊主が普通であることが分かりました。では以前よりは増えてきた女性自衛官の髪形はどうなのでしょうか。
男女平等とはいえ女性自衛官も坊主ということはさすがにありませんが、男性と同様に教育期間の髪形については指導が厳しいのが現実です。
自衛隊の「自衛官募集のQ&A」に女性の髪形に関する回答があり、そこにはこのように書いてあります。
髪型については、黒髪で端正な髪型が基本となっています。髪が長い場合は、勤務中は髪を後ろでまとまるなどしなければなりませんが、自衛官としての品位を保つことができる髪型であれば、特に制限はありません。ただし、髪を金髪に染めるなどの奇抜な髪型は、他の公務員と同じく禁止されています
引用:
これを見るかぎり髪の長さに寛容に感じるのですが、多くの駐屯地で「耳にかかる長さの髪は切るように」と指導されています。少なくとも教育期間に関しては中途半端な長さでいるより、ある程度思いっきり切ってしまったほうが訓練に集中できます。
部隊配属後は?
6か月の教育期間が終わると配属先・職種が決まって、いよいよ国防の任に当たる自衛官としての生活が始まります。この部隊配属後は一端の自衛官と認められるためか髪形についての規制が緩くなります。とはいえ緩くなるのはほぼ女性の髪の長さに関してだけで、あくまで黒髪でいることと、男性は短い髪形でいなければなりません。
また女性の場合も長い髪は勤務中束ねるなどしなければなりません。
自衛隊の髪形をめぐる苦労や裏話
日本の国防を担う自衛隊の隊員たちは髪形など制約が多いことは分かりました。
とは言いながらも自衛隊員といってもオシャレに興味のある世代もいて、なおかつ恋をする年代でもあります。
そんな自衛隊の髪形をめぐる若手隊員たちの苦労やささやかな抵抗などの裏話や、部隊による違い、他国の軍隊での髪形の話にも触れておきましょう。
自衛隊でのおしゃれの限界
自衛隊へ入隊し教育期間を終え、配属先が決まった後もどんな髪型でも良いわけではありませんし。自衛隊員でいるかぎり帽子やヘルメットを身につけたときに見える部分は短くなければなりません。逆にいうと頭頂部などは比較的緩いとも言えます。
しかし転属や昇進など、折々に訪れる節目では見る目が厳しくなるので、基本的に坊主でいることがトラブル回避につながります。その坊主ですが短いに越したことはないのですが、多くの経験談によると15ミリくらいが許される限界のようです。というのも、それ以上の長さになると手で掴めてしまうので「格闘になったら不利のなる」という一見もっともらしい理由で短くするよう命令されてしまうのです。
海上自衛隊について
海上自衛隊というと陸上自衛隊に比べスマートでおしゃれなイメージを持たれる方も多いでしょう。しかしあくまで自衛隊であるので髪型は短くしなければなりません。さらに海上自衛隊は精神的に一番きついと言われることが多く、その理由が指導の厳しさと、何より一度航海に出ると嫌でも厳しい上官と同じ船内で過ごさなければならないからです。
ツーブロックやパーマは大丈夫?
ここまで自衛隊の髪型について解説したなかで何度か「見えている部分以外は緩い」と触れました。では帽子などで隠れる上の部分はどこまで許されるのでしょうか。
例えば横と後ろを借り上げて上だけ伸ばすツーブロックや、上だけパーマなどですが、結論からいうとこれらは許されます。ツーブロックに関してはむしろスポーツ刈りと並んで自衛隊の中で多い髪型です。
ただし上だけだからといって無制限に伸ばして良いわけでもなく、あくまで品位を重んじていると上官に思われる長さまでです。女性自衛官も短い髪でパーマは良いのですが、「華美な髪型」は禁止なのでそもそもパーマをかける意味があるのか疑問だと言えるでしょう。
画像で確認する自衛隊の髪型
何となくイメージができる自衛隊の髪型ですが、よく見られるものを画像で確認してみましょう。
入隊にあたりバリカンで丸刈りにされる様子です。入隊から教育期間は問答無用なのです。教育期間も終え部隊に配属されると少しは伸ばすことが出来ます。またツーブロックなどもよく見られます。
女性自衛官も基本的には短めの髪型が多く、一般人では当たり前になったヘアカラーは禁止なので皆黒髪です。
至極当然のことながら、オシャレをするために自衛官になるわけではありません。髪型も装備と一緒で、任務のため合理的なことが第一になるのが自衛隊なのです。
涙ぐましい髪形への抵抗
若い自衛官の中には「どうしてもオシャレをしたい」と思う隊員がいるもので、涙ぐましいほどの情熱をかける方もいます。自衛官は2週間ほど夏休みを取得できるのですが、その期間だけ思いっきり髪を染めてオシャレを満喫し、駐屯地に戻る直前に黒髪に戻すという隊員がいるのです。
他国の軍隊では髪型に規則はあるか
自衛隊の髪型に関する規則は「短い髪」というのが基本ですが、他国の軍隊ではどうなのでしょうか。やはり軍隊である以上規則は存在しており、何より戦闘や訓練の妨げにならないため規制は必要なのです。
しかしアメリカ軍は日本より緩やかな規則のようで、2021年2月からは奇抜な色でなければカラーも許可され、それ以外にもポニーテール・巻き髪や、口紅・マニュキア・イヤリングなども容認すると発表しています。
単純に比較できるものではありませんが、多民族国家になるほど規則も多様化するのかもしれません。
総括:国防を担う自衛官にとって髪型の優先順位は低い
記事のポイントをまとめておきます。
自衛隊の髪形について
髪形を規定する根拠と実際
- 自衛隊法の「品位を重んじ」が規則の裏付け
- 実際の良し悪しは各駐屯地の上官の判断
- 教育期間の男は坊主、女も短いことが絶対
- 髪形も勤務態度の評価です
- 配属先着任後は髪形もある程度の自由がきく
髪形にまつわる隊員たちの苦労話
- 自衛隊にいる以上、伸ばせてもたかが知れている髪形
- 陸自よりも厳しい海上自衛隊
- 髪形のアレンジはどこまでOKなのか
- 外国より厳しい髪形規制
一般的な印象でも自衛隊の人達は短く清潔的な髪形をイメージしますが、それは自衛隊法に明記されている「隊員は、常に品位を重んじ」を遵守させるための規則による結果なのです。若い隊員には少々酷な規則とも言えますが、国防の任に当たる重責を担い、組織の規律を保ち為には仕方のないことなのです。
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