日本における少子高齢化が社会問題となって久しいのですが、これによって今後あらためて問題になるであろうことが「一人っ子が独身のまま過ごし天涯孤独」になってしまう人の増加です。
複数の要因がこれに拍車をかけており、国の施策も一つ二つでこれを解決することは困難です。
これから問題になる「天涯孤独な独身一人っ子」について、その原因を探るとともに、それによる問題点や解決策を考えてみましょう。
記事の内容
- 天涯孤独を生み出す一人っ子と独身の増加
- 戦後間もないころの一般家庭
- 少子化の進展と一人っ子
- 内閣府の分析:政府統計の総合窓口
- 晩婚化と独身の増加
- 厚生労働省「婚姻に関する統計」
- 未来の一人っ子の独身はどうなるのか
- 一人っ子が独身でいるとどう天涯孤独になるのか
- ある日「天涯孤独になってしまった」
- 一人っ子の将来を考えると怖いことが多いもの
- 孤独以上に困難な「天涯孤独」
- 一人っ子を抱えるママの意外な孤独
- 一人っ子だと天涯孤独になる前に苦労が絶えない
- 一人っ子の独身が天涯孤独にならないための対策
- まずは身内をつくる努力をしてみよう
- 仲間は多い?友達募集という選択
- 一人っ子の独身が集うコミュニティ
- 一人っ子の独身だからと天涯孤独なるとは限らないが・・
- 総括
執筆:KOJI
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天涯孤独を生み出す一人っ子と独身の増加
日本が第二次世界大戦の終戦を迎えた1945年から80年近く経っていますが、その間に家庭や子供に関する動態は大きく変化し、またかつては当たり前に誰もがした結婚についても価値観が大きく変わりました。
まずこれら社会変化の経過と、その理由について解説します。
戦後間もないころの一般家庭
1945年8月に日本が連合国に敗戦したことによって第二次世界大戦は終了しました。
戦地から兵士たちが帰国し終戦の安ど感もあって人々が子供をつくり「ベビーブーム(日本においては第一次ベビーブーム)」が起こりました。これは日本だけの事象ではなく世界中で起こったことです。
しかし日本のベビーブームは1947年から1949年の3年間(団塊の世代)で終わってしまいました。
この3年間の合計特殊出生率は4.5を超えていて、言い換えるとこのころの家庭は4~5人兄弟が普通だったわけです。兄弟も多く同世代の人数(友達)の非常に多い時代だったのです。
それ以外にも1947年の平均初婚年齢は男性が26.1歳、女性が22.9歳となっており、今から考えるとかなり若くして結婚していたことが分かります。
つまり若くして結婚しているからこそ、4~5人も子供を産むことができたと言えます。
少子化の進展と一人っ子
団塊の世代が結婚・出産適齢期へと差し掛かったころ、ある意味当然の結果ですが再び出生数の多い時期がやってきました。1971年から1974年にかけて出生数が200万人を超え「第二次ベビーブーム」と言われ、うまれた世代は「団塊ジュニア」と呼ばれました。
しかし「第一次ベビーブーム」の時と大きな違いがあって、合計特殊出生率は2.15前後であり半分以下となっていました。つまりこの頃になると平均して2人兄弟が標準的になっていたのです。
このブームが終わると出生数も合計特殊出生率もともに下がり続け、1993年には合計特殊出生率は1.5を下回り、2020年では1.34となっています。つまり15歳から49歳の女性が一生に産む子供の数が減り続けてきたわけですが、その原因はいくつかの指摘がなされています。
内閣府の分析では「未婚化の進展」「晩婚化の進展」「夫婦の出生力の低下」が主要因と分析されており、さらにその背景として「仕事と子育てを両立できる環境整備の遅れや高学歴化」「結婚・出産に対する価値観の変化」「子育てに対する負担感の増大」「経済的不安定の増大等」を列記しています。
つまり要約すると「高学歴化や女性の社会進出で結婚時期が遅くなったり出来なかったり」ということと、「子育てにお金がかかるうえ、経済不安が大きい世の中になった」から、そう簡単に生めないよね・・・ということです。
出典:政府統計の総合窓口
晩婚化と独身の増加
日本で晩婚化が顕著になってきたのは1970年代後半で、特に女性において顕著です。先にも書いたとおり1947年の平均初婚年齢は男性が26.1歳、女性が22.9歳でした。
しかし1980年には男性が27.8歳、女性が25.2歳となって、さらに2003年では男性が29.4歳、女性が27.6歳と平均初婚年齢は上がり続けています。
一般的には1972年に施行された「男女雇用機会均等法」により女性の社会進出が果たされた結果、女性の晩婚化が進んだとも言われますが、それとともに大学・短大進学率の上昇(高学歴化)も影響を与えています。
1962年までは20%未満だった大学・短大進学率は上がり続け、1973年には30%を超え、2020年では54.4%すなわち半数以上が大学・短大進学へ進学しています。
これらだけが原因とは言い切れませんが、晩婚化がすすむとともに未婚化が問題になってきました。1970年代まで2%前後で推移していた生涯未婚率(50歳時点で1度も婚姻していない人の割合)が、2000年代に急上昇し特に男性の未婚化が顕著に見られます。
2015年では男性が約23%、女性が約14%となっており、「少子化社会対策白書」は2040年には男性29.5%、女性18.7%まで生涯未婚率があがると推計しています。つまり独身は増え続けていくのです。
未来の一人っ子の独身はどうなるのか
少子化と晩婚化が進んでしまった日本の未来はどんな光景が広がるのでしょうか。少なくとも今までの価値観から考えると、「一人っ子が独身」でいる先に待っているのは「不幸で天涯孤独な老後」であるはずです。しかしそれは一人っ子も独身も珍しく興味の目で見られていたからです。
そのような人たちが当たり前の世の中になれば価値観も変わり、普通の存在になり新しい消費を生み出したり、人生観ができたりするかもしれません。とはいえ「天涯孤独=身内がいない存在」という事実ばかりは変えられません。
考えられるのは一人っ子独身者が多少は生きやすくなる未来です。
一人っ子が独身でいるとどう天涯孤独になるのか
くわしく調べなくても「天涯孤独」という言葉を聞くと寂しい雰囲気が伝わってきます。
この天涯孤独という言葉に意味は「身寄りがひとりもなく、ひとりぼっちであるさま」または、「故郷を遠く離れて、ひとりぼっちで暮らすさま」を表す言葉です。
もう「ひとりぼっち」という時点でなんとなく察しはつきますが、現在は兄弟のいない一人っ子が普通になり、親戚付き合いも気薄になったことから、一人っ子で独身者は天涯孤独になりやすい世の中なのです。
天涯孤独になるのも色々なケースが存在しており、彼ら彼女らがどう天涯孤独になり、どんな困難に直面するのかを解説します。
ある日「天涯孤独になってしまった」
一人っ子だけに限ることではありませんが、独身でい続けると親に死に直面した瞬間に「身寄りがいない」という現実に気づかされるもので、急に天涯孤独ということを実感します。最近ではこれが一番多いケースです。独身でいて一人っ子であると親族がいないということと、自分の年齢を考えて急に不安に襲われます。
「親を看取ったけど、自分はどうなるのだろう」ということに加え、「もう手遅れなのではないか」ということを考えると、それまで味わったことなない孤独感に苛まされるのです。できればそうなる前に手を打てば良いのでしょうが、突然「天涯孤独」になってしまう方が多いのです。
一人っ子の将来を考えると怖いことが多いもの
不意に天涯孤独になった一人っ子独身者には、嫌でも向き合わなければならない現実があります。そのまま独身でいて老後を迎えたらどうなるでしょうか。
誰しも元気で頭もしっかりした老後を過ごし、ある日突然亡くなることを夢見るのですが、実際はそう簡単にはいきません。
徐々に身体機能は低下していき、場合によっては認知症などを発症したとき、身内がいないということはとてつもないハンディキャップとなってしまいます。
病院や介護施設に入るにしても保証人が必要なことが多く、身内以外で保証人を引き受けてくれる人を探すのは非常に困難です。近年問題になりつつある「孤独死」ですら現実味を帯びてきます。
身内だけには限りませんが、一人っ子で独身しかも老後になると「自分の異変に気が付いてくれる人」がいないということは、非常に怖いことだと思っておくべきでしょう。
孤独以上に困難な「天涯孤独」
身内がいても孤独を感じることは誰にでもあることです。しかし心のどこかでは「身内がいる」という安心感は無意識でもあります。ところが親が亡くなるなどして身内がいなくなると孤独以上に辛い「天涯孤独」になってしまいます。
この境遇になってしまうのは様々なケースがあり、たとえ結婚していたとしても配偶者に先立たれた離婚したりしたら天涯孤独になり得るのです。
一人っ子を抱えるママの意外な孤独
自分が一人っ子で独身であれば「結婚して一人っ子とはいえ子供のいるママ」は孤独とは無縁に思えるものです。しかしそんなママも以外に孤独を感じることがあるのをご存じでしょうか。
一人っ子家庭は増えましたが、2015年の国勢調査の結果では子供のいる家庭のうち一人っ子家庭は約4割で、6割は2人以上子供がいるので、若干ながらまだ少数派と言えます。
そんな一人っ子家庭のお子さんを幼稚園へ通わせると避けられないのが「ママ友」のお付き合いです。
そのママ友の会話で必ずと言っていいほど出るのが「上の子が」とか「下の子が」といった兄弟の育児話で、一人っ子を抱えるママだと話に入っていけず孤独感や孤立感を感じてしまうのです。
一人っ子だと天涯孤独になる前に苦労が絶えない
「少子高齢化」という社会問題で「少子」はズバリ一人っ子そのものですが、同時に「高齢化」によってゆくゆくは一人で年老いた両親2人の面倒を見なくてはいけないという現実も表しています。
平均寿命は延びていても老後を健康で過ごせる健康寿命はそれほど延びておらず、それはすなわち介護が必要な期間があるということです。兄弟がいても大変な親の介護ですが、一人っ子であればその苦労は何倍にもなるでしょう。ましてや一人っ子で独身であればなおさらです。
よく介護は「いつまで続くか分からない」という精神的な負担も大きいと言われ、天涯孤独になる以前から苦労が絶えなくなってしまいます。
一人っ子の独身が天涯孤独にならないための対策
一人っ子である事実は変えられるものではありません。ハンディキャップとまでは言えませんが身内が少ないのは事実なのです。
しかしそこから先、独身のままで過ごすことや、ほんとに一人ぼっちで孤独を感じるようになるのかは、自分自身で変えることのできる未来と言えます。
そこで一人っ子が独身で天涯孤独にならないためには何をどうすれば良いのか、また同じ境遇の人が増え続ける現代だからこそ考えられる回避策などを考えていきましょう。
まずは身内をつくる努力をしてみよう
身内がいなければ身内を作るのが近道です。とは言ってもそう簡単なことではありませんし、何より年齢や年収、そして容姿や性格によって難易度が大きく違います。
しかしこれから将来に待ち構えているだろう苦労を考えると、パートナー探しにかかる労力など微々たるものだと思いませんか?
若ければ選択肢も多く「友人の紹介」や「合コン・街コン」、そして「マッチングアプリ」の利用など、まだまだ気軽に始める方法が選べます。近年は晩婚化の影響で中高年向けのサービスも増えましたが、思い立ったら早く活動を開始するのが成功の近道です。
仲間は多い?友達募集という選択
これも時代の流れなのでしょうが、一人っ子で独身という同じ境遇の人口は増え続け、そのような方たち向けの「友人募集」も増えています。
天涯孤独、すなわち身内がいないという境遇になるのはどうしても中高年になってからのケースが多く、それまで人付き合いを避けてきたような方であればハードルは高いかもしれません。
しかし天涯孤独な老後を友達や知り合いもなく過ごすことは、精神的・肉体的にもつらいことであり、「おっくう」などと思わず人付き合いを考えるべきなのです。
一人っ子の独身が集うコミュニティ
一人っ子に限ったことではないことですが、少なくとも独身でい続けると自然と独身同士の付き合いが多くなり、「独身コミュニティ」のような状態になっている集まりをよく見かけます。とくに30歳を過ぎた女性に多い印象です。
友達付き合いはとても大事なことで、それは続けていくべきことでしょう。しかし一つ問題があり、そのようなコミュニティでありがちなのが「結婚しない(できない)境遇を認め合ってしまう」という、予定調和のような独身の友情による「婚活の阻害」かもしれません。
天涯孤独を避けるためには凝り固まった行動パターンや、同じ人と会い続けるという環境を変えることも大事なのです。
総括:一人っ子の独身だからと天涯孤独なるとは限らないが・・
ここまで一人っ子の独身が迎えがちな天涯孤独について解説してきました。
記事のポイントをまとめます。
一人っ子で独身の天涯孤独について
日本で天涯孤独がふえている背景
- 短期間で終わった第一次ベビーブーム
- 女性が生む子供の数の減少
- 高学歴化と女性の社会進出による晩婚化
- 経済不安や晩婚化の結果未婚の増加
一人っ子独身者が抱える天涯孤独のリスク
- 急に気づく天涯孤独
- 天涯孤独で抱える老後のリスク
- 一人っ子だと親の介護が大変
天涯孤独から逃れるために
- けっして遅くはないパートナー探し
- 友達や知り合いをつくる努力
- 独身付き合いの意外な落とし穴
戦後日本が復興し現在に至るまでのあいだ進行し続けた「少子化」や「晩婚化・未婚化」が生み出した新たな社会リスクが「一人っ子の独身が天涯孤独になる」かもしれません。この先増え続けることが予想されるリスクですが、何もせず「その時」を迎えることは得策とは言えません。
考えてみるとやれること多いことを知り、そしてちょっとだけ今までより本気を出してみましょう。そう努力は報われるものなのです。