「ゼネコン」この響きを1度は聞いたことがあるだろう。ゼネコンとは、規模の大きな建物の建設工事全体をとりまとめる建設業者をさす。工事の計画から施工まで、大規模な工事にはさまざまな業者の力を借りなければならない。ゼネコンはその業者達をまとめ、工程を管理し、計画通りに工事を進める事を業としている。
具体的には鹿島、清水建設、大林組、長谷工コーポレーションなど、いずれもCMでおなじみの企業で、中でも売上高1兆円を超える大手ゼネコンは「スーパーゼネコン」と呼ばれ、大林組、鹿島、大成建設、清水建設、竹中工務店などがそれにあたる。
さて、聞けばだれでも知っているような有名企業であるゼネコンだが、ゼネコン勤務の男性は結婚できない、と言われているようだ。なぜだろう。年収か企業イメージか人柄か労働環境か…どこかに問題があるのだろうか。
そんなわけで、今回は「ゼネコンに勤務する人は結婚できない」というジンクスについて調べてみた。
記事の内容
- ゼネコン社員が結婚できないのは労働環境が原因か?
- 平均年収は鹿島がトップで1,139万円
- ゼネコンに就職希望する人の出身大学
化学ネットワーク「大成建設の学歴重要度」 - 就職した後の配属先が結婚を妨げる一因
事務系
技術系
組織図 - 大手であるほど結婚できない
日建協2019時短アンケート - 「ゼネコン社員は結婚できない」を覆した人も多い
- 「建設業の人とは結婚したくない」とは思われていない!
- ゼネコン社員の離婚率は低い
- 建築・土木部門は転勤族にならざるをえない
- スーパーゼネコンに勤める夫をもつ妻はしんどい
- ゼネコン社員は結婚できないのではなく、少しハードルがあるだけ
- 総括
執筆:TANO
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ゼネコン社員が結婚できないのは労働環境が原因か?
「ゼネコンに勤務する人は結婚できない」と言われる原因について、労働環境がハードで女性と知り合ったりデートをする時間が作れないからなのではないかと推察している。
そこで、労働環境について調べてみた。
平均年収は鹿島がトップで1,139万円
ゼネコンに勤める社員の年収はどれくらいなのだろうか。「年収ランキング」の調べによると、ゼネコンで最も給料が高いのは鹿島で、平均年収1,139万円。全体の58位で登場する。
3737位までの企業がランキングされている中で58位とはなかなかの健闘ぶりである。平均年収1,139万円なら、収入だけを見れば結婚相手として申し分ない。散財しなければ妻が働きに出なくても充分暮らしていける年収だろう。
続いて大林組が83位、平均年収は1,053万円。従業員数8753人の大企業である。こちらも年収としては申し分なく、年収の面からみると「ゼネコンに勤める人が結婚できない」とは考えにくい。
ゼネコンに就職希望する人の出身大学
例として大成建設の採用実績を見てみよう。
順位 |
大学名 |
採用実績(過去29カ年) |
1 |
日本大 |
792 |
2 |
早稲田 |
394 |
3 |
東京都市大 |
204 |
4 |
東京理科大 |
201 |
5 |
明治 |
170 |
6 |
芝浦工業大 |
158 |
7 |
法政 |
157 |
8 |
東海大 |
149 |
9 |
東工大 |
146 |
10 |
慶應 |
139 |
大手ゼネコンは、日本大学や早稲田大学出身者が多い。日本大学についてはマンモス大学であり、卒業生の数も大変多い為、さまざまな業種で出身大学トップになっている。
一流大学や理工系のスペシャリストを排出する単科大学など、出身大学も申し分ない。年収や出身大学だけを見ている分には結婚を妨げる要素はひとつもない。
就職した後の配属先が結婚を妨げる一因
次に、就職した後の配属先を見てみよう。
ここでようやく「ゼネコンに勤務する人は結婚できない」と言われる理由の一端が見えてきた。ゼネコンに勤務する人はとにかく忙しいらしい。
ゼネコンの部門には次のようなものがある。
事務系
- 営業…主に支店勤務の人が、営業をかけて受注を取ってくる
- 調達…受注された建物の建設に必要な資材を調達する。コストパフォーマンスの良い資材 を調達するのは、予算を考えても非常に重要
技術系
- 施工管理…計画通りに建設が進んでいるかを管理する。日、週、月ごとの工程管理表を作成し、滞りなく建設が進んでいるかを管理する
- 設計…専門の知識をもった社員が設計図を作成
他にも包括的に工程を管理するエンジニアリング部門や、海外事業の部門もある。例として、鹿島の組織図を挙げてみた。
組織図
大手のゼネコンになると、建設の規模も大きいため、全ての作業単位が大規模になり、非常に忙しくなる。新入社員はこのような部署のいずれかに配属されるわけだが、内勤と現場勤務で休日の取り方には差があるようだ。現場勤務は土日で休みを取ることはなかなか難しい。
逆に内勤はカレンダー通りに休みをとる事が出来る。社としては休暇を推奨しているようだが、なかなか思うようには取れないようだ。現場勤務の部署に配属されると、デートの時間はなかなか割けないようである。
大手であるほど結婚できない
施工管理など、現場勤務の部門は、工程の管理に加え、マネジメントの側面も持っているので、1日の終わりが「現場からの報告終了後に自分の残務整理をしたあと」と言う事になる。従って毎日22:00定時などは当たり前の世界のようだ。
そして、朝もスムーズに現場が作業に入れるよう、先に出勤してその日の準備やチェックをしておかねばならない。これが、工事完了まで続くのである。
下記は、その労働時間を表にしたものである。
外勤の土木・建築業務は、内勤の事務に比べて3倍以上の労働時間である。もはや「ブラック」の域かも知れない。大手ゼネコンは建築も規模も大きく、こうした労働が常態化している。
建築や土木に関わる仕事がしたくてゼネコンに就職しても、日々これではデートや結婚どころか、身体がもたない。年収は多いかもしれないが、決して割が良いわけではない。実際に土木作業員として従事するわけではなくても、これは立派な肉体労働である。
「ゼネコン社員は結婚できない」を覆した人も多い
かなり過酷な大手ゼネコンの施工管理部門の業務を紹介したが、それでは皆結婚していないかというと、そんな事もないだろう。
結婚し子供がいて、いわゆる普通の家庭生活を営んでいる人も多い。
「建設業の人とは結婚したくない」とは思われていない!
「恋愛の先に結婚がある」という考えに縛られていると結婚できないと思いがちだが、ゼネコンに勤める人は、時間の制約が多すぎて恋愛には不向きかも知れないが、結婚には意外にも向いているのだ。
何しろ「高給取り」「忙しすぎて浮気の心配がない」「大手ゼネコンは安定している」という、条件だけなら是非お願いしたいくらいの好条件ではないか。最初から結婚を視野に入れたお付き合いをしてみるのもよいのではないだろうか。同棲も大いにあり、である。
ゼネコン社員の離婚率は低い
ゼネコンを始め、建設業界は、いまだに「男社会」である。やはり建設・土木は男がやるもの、という風潮がいまだにあるし、男性の方がこうした業界ではセンスを発揮しやすい、とも言える。
しかし、日々男社会に揉まれて過ごしていると、妻や家庭の存在は、心身のバランスを保つためには欠かせないものになってくる。夫側から離婚を言い出すことは少ないだろう。
妻のほうでも「亭主元気で留守がいい」を地でいっているような夫の暮らしぶりは、図らずも夫とのほどよい距離感を生み出し、マンネリ化することなくお互いをリスペクトしながら生活していける。おのずと離婚率も下がってくるだろう。
建築・土木部門は転勤族にならざるをえない
建築や土木部門は転勤が多い。共に「作業現場に近いところへ転勤」という性質があるので、1つの建設が終了すると転勤という流れになり、1~2年で転勤を余儀なくされる。
土木部門は、環境が整っていないところに道路を敷設したりトンネルを作ったりする。工事が長期にわたる為、建築部門ほどの転勤の頻度ではないが、交通の便が悪いところに住まざるをえない。妻も、子供が出来るまでは夫の転勤についていけても、子供が生まれるとそれも難しくなってくる。
夫は単身赴任になり、家族で住むために購入したマイホームには妻と子供だけが暮らすことになる。「亭主元気で長期間の留守」になってしまうわけだ。
スーパーゼネコンに勤める夫をもつ妻はしんどい
ある程度覚悟の上で結婚しても、転勤の多い夫をもつのはしんどい。次の転勤はもう少し近いところに帰ってきてくれるかと思いきや、今より更に遠いところに転勤になってしまったり、子育ては完全にワンオペ育児になるので、おちおち働きにも出られない。
夫の給料がよく、働かなくても暮らしていけると周囲から羨ましがられるかも知れないが、日常生活の全てを自分で決定しなければならず、また双方の親に万が一何かあった時なども、夫が僻地にいる可能性もあるので自分が対処しなければならない。
夫も転勤続きで辛いが、妻も1人で家庭を守るのは相当なプレッシャーだろう。
総括:ゼネコン社員は結婚できないのではなく、少しハードルがあるだけ
記事のポイントをまとめておこう。
ゼネコン勤務の人が結婚できない原因は労働環境
- 年収は申し分ない
- 学歴も申し分ない
- 配属先が現場勤務に関わる部署だと多忙を極めプライベートの時間がない
ゼネコン勤務で結婚している人もいる
- 夫は転勤が多すぎて単身赴任せざるをえない
- 夫の収入は良いかも知れないが、妻のプレッシャーは相当なものである
ゼネコンに勤務する人の労働環境という視点で結婚できないというジンクスについて考えてみた。ゼネコンと言っても内勤であればデートの時間にもそれほど困らないようである。
問題は施工管理などの外勤部門で、転勤も多く、自宅に帰れるのは月2回、などという話もある。すべては配属先によるが、配属先によって過酷さにも差があるのであれば、当然給料にもその差が反映されるだろう。
「発言小町」にゼネコンに勤める彼氏との結婚を悩む女性の相談もある。
外勤部門に勤める彼氏とはデートの時間などはとても取れそうにない。男性の方も、女性と知り合う機会がなかなかない為、お付き合いをした女性とはそのまま結婚を考える前提にあるようだ。
そして収入面では生活していくのに不足はないため「仕事を辞めて自分についてきて欲しい」と考える男性も多いようである。
この令和の時代に、昭和のような話であるが、ゼネコン自体も「男社会」である為に、このような考え方があまり違和感なく生じるのかもしれない。
子供がいない場合は、妻が仕事を辞めなくてもそれぞれの夫婦のスタイルで暮らしていけば良いかもしれないが、子供が生まれればそういうわけにもいかないだろう。
ゼネコンに勤める彼氏と付き合ったり結婚したりする場合は、女性はどこかで、何らかの形で「腹をくくる」必要があるのかも知れない。
今の時代には減少している傾向ではあるが、家庭に入り、不在になりがちな夫が帰宅した時に安らげるような温かい家庭を築くことに力を注ぐというのも、一つの生き方ではあるだろう。