厚生労働省による平成28年度の調査では、母子家庭が123万世帯を超えている。という事は、シングルマザーは123万人以上いる事になる。このシングルマザー達は日々、父と母の役割を兼ね、社会人と家庭人を兼ね、仕事や家事や育児に奮闘している。
身を粉にして我が子や会社に尽くす日々を送っている中で、どうしようもない寂しさに襲われる事はたくさんあるだろう。
一口に「シングルマザー」といっても、そうなった理由はいろいろある。離婚、死別、未婚の母…。多様な生き方が認められるようになった事と引き換えに、「さまざまな寂しさ」を味わう事にもなっている。しかし、寂しいばかりで人生が終わってしまってはあまりに自分が可哀想ではないか。
シングルマザーはもっと自分を大切にし、そして周囲からも大切にされ、子供が母を誇りに思うような、生き生きとした毎日を送るべきなのだ。そうした暮らしの中で、少しずつ寂しさが薄れていくものだと思う。
今回は「シングルマザーの寂しさ」について考えてみたい。日々の暮らしに追われ、自分の事は全て後回し。泣きたくなる時もたくさんあるだろう。そんなシングルマザーの寂しさが少しでも紛れればと願う。
記事の内容
- シングルマザーは寂しい?それは別れ方により異なる
- 死別による寂しさ
①病死の場合
②事故死の場合
③自殺の場合 - 離婚による寂しさ
①夫から別れを切り出された場合
②妻から別れを切り出した場合 - 未婚による寂しさ
- シングルマザーは寂しい:共通する「寂しい時」
夜になったとき
老後を考えるとき
彼氏がいないとき
子供が寂しいかも知れないと思うとき
不安になるとき - シングルマザーは寂しい=寂しさに打ち勝つ必要はない
- 総括
執筆:TANO
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シングルマザーは寂しい?それは別れ方により異なる
冒頭でも触れたが、厚生労働省による平成28年度の調査では、母子家庭が123万世帯を超えている。
そして、以下は厚生労働省のH28年度「理由別の世帯構成の表」をグラフ化したものである。
これによれば、夫の死亡によりシングルマザーになった人は全体の8%、離婚でシングルマザーになった人が79.5%、未婚でシングルマザーになった人が8.7%である。それぞれの別れ方によって、寂しさの内容も違ってくる。
死別による寂しさ①:病死の場合
全体の8%である「死別」が理由のシングルマザーは、「寂しさ」という表現は適切ではないかも知れない。辛すぎて、悲しすぎて、苦しすぎて、感情は一言では表せないだろう。
シングルマザーになるつもりはなく、夫と一生添い遂げるつもりでいたのに、愛する夫がこの世からいなくなるのだ。それは離婚や未婚の母としてシングルマザーになるのとは全く違う。
死別によりシングルマザーになった人は、悲しみが深すぎて「寂しい」というところまで辿り着けたとしたら、それは「気持ちが前向きになった」事を意味するのではないだろうか。
シングルマザーになる覚悟などないところに、夫が亡くなるという悲しみも連れて寂しさが襲ってくるのだ。また、夫が亡くなった理由によって、死別でも寂しさや悲しみの種類が違うだろう。
夫が闘病の末に亡くなったとする。夫の治療費の為に自分も働きに出つつ、忙しい中時間をやりくりして病院に詰め、夫のそばで快復を願う日々。休日と言ってもどこにも出かける事なく、行き先は病院という生活。
子供に我慢を強いている事は分かっているが、とにかく夫に元気になってもらいたい一心で、長い間看護を続けた願いも届かずに夫が亡くなってしまったら。
- 夫にしてあげたかった事がまだたくさんある
- 夫と子供と一緒に出かけたかった所がまだたくさんある
- 退院したら、一緒に美味しいご飯を食べに行こうって約束したじゃない
- 夫と話がしたい。そばにいて欲しい。私を置いて、何で死んじゃったの
こんなものではとても言い尽くせない。出会った頃からの思い出から始まり、結婚して子供が生まれて…素晴らしい時間を分け合って共に生きてきたのだ。そしてその時間はまだまだ続くと思っていたのだ。
葬儀が終わり、49日が終わり、一周忌を迎えても、離れがたくてお骨を自宅の仏壇に安置したまま、お墓に入れられない人もいる。
②事故死の場合
また、死別の理由が「事故」だったとする。直前まで普段通りの家庭生活がそこにあったのに、突如として夫がいなくなる。まさかそんな事になるとは思っていないから、よくある口喧嘩の仲直りが出来ていないままの人もいただろう。
そんな状態で夫が忽然とこの世から消えてしまう。気持ちのやり場がどこにもなく、悲しみと共に苦しみも続く。
闘病で夫を失った場合は、共に闘った期間がそれなりにあり、家族で最期を看取る事ができ、悲しみはあっても夫が最期まで生き抜いた記憶を子供達とも共有できる。
ただ、事故で亡くなった場合はその現実を受け入れる事がなかなか出来ず、家族で共に闘った結果というわけでもないので、夫に対する妻の思いと子供の思いがかみ合わない事があるかも知れない。
最期に何を思っていたのか、何か思う時間はあったのか。いや、そんな瀕死の状態ではとても苦しかっただろうから、そんなに苦しい時間がたくさんあっても可哀想だ。
でも家族の事を最期に思い出してくれただろうか、私の事を少しは思ってくれていたのかな、何で口喧嘩の仲直りをしておかなかったんだろう…などと、答えの出ない思いがずっと頭をめぐり、その気持ちは子供達と共有できるわけでもなく、悲しみと苦しみと孤独が長い間続いてしまうだろう。
子供達には前を向いて元気に生きていってもらいたいと願い、それには自分がまず元気にならなければと分かっていても、子供達は母の「元気なふり」をちゃんと分かっていて、それを受けて元気に振舞っているのが母にも伝わっていて、お互いに辛い。
夫が亡くなったことにより、家族のバランスもぎりぎりの所で保っているような状態になり、改めて夫の存在の大切さを知ってしまう。
③自殺の場合
事故死と同じように突然夫を失ってしまう自殺であるが、この理由で夫を失うと、悲しみもあるが、自責の念で長く苦しむ事になる。亡くなり方によっては他人に迷惑をかけているかも知れず、悲しみを抱えながらもその対応をしなければならない。
なぜ死を選んでししまったのか、何の理解も追いつかないまま葬式を出すのは相当の葛藤があるだろう。
そして、夫が死を選ぶほどの気持ちになるまでを、正解の出ないままに何度も思い返し
- 私のせいだったのではないだろうか
- あの時こう言ってあげればこんな事にならなかったんじゃないだろうか
- 私の存在は生きる理由にはなってくれなかったのだろうか
- これまでに結婚生活は、辛いものでしかなかったのかな…あの笑顔も無理していたんだろうか
夫の生きてきた軌跡をたどっても、夫が亡くなった時の心の状態に寄り添えるわけではないし、夫の為に何をしても、何を思ってももう夫はいないわけで、自己満足でしかないんだ…と思うたびにやりきれない気持ちになってしまう。
自殺は遺された人に大変な苦しみを与え、心に深い傷を残す亡くなり方である。そして妻の存在というものを最も否定してしまう亡くなり方である。
死別で夫と別れた人は「夫がいなくて、寂しいなぁ…」と、夫がこの世にいない事を受け入れられるまでにかかる時間は予想できない。もしかしたら一生受け入れられないかも知れない。
これらの事から、死別でシングルマザーになった人の「寂しさ」とは、もっと深い悲しみや苦しみの淵から這い上がって来ることができた状態、という事になるのではないだろうか。
離婚による寂しさ①:夫から別れを切り出された場合
夫婦再生の為のカウンセリングを行っている「夫婦図鑑」の調べによると、夫は5年ごとに離婚を考えるというサイクルのようである。
更に上記の資料によると、夫からの離婚の理由として、結婚5年目は「妻への不満」がトップであるが、10年目、15年目は「不倫が本気になった」という理由がトップになる。妻への不満を紛らわせる為に軽い気持ちで始めた不倫が本格化してしまった、ということであろうか。
真に身勝手な理由である。結婚10年目、15年目と言えば、妻は懸命に子育てに励んでいる時期である。その妻をないがしろにして不倫し、その不倫が本気になった為離婚したいと思うなど、愚かの極みである。慰謝料が発生する為、バレない限り不倫の事はひた隠しであろう。
こんな夫と離婚して寂しく思うのも癪にさわる話ではあるが、妻としては少々夫に不満があっても離婚までは考えていなかったとすると、やはりショックは大きい。
離婚にまつわる煩雑な手続きを何とか終え、改めて夫のいない家を認識すると、寂しさがこみ上げてくるに違いない。男性の方が何かと女々しいものではあるが、夫から離婚を切り出した場合は、もう家庭を振り返る事はないだろう。
夫から切り出された離婚でシングルマザーになった場合は、自分と子供だけになってしまった心細さで寂しい思いを味わう事になる。そして、街中で微笑ましい家族連れを目にするたびに、心がチクっと痛むのだ。
②妻から別れを切り出した場合
「寂しさ」という点では、妻が自分で決断をして離婚をした場合というのが、寂しさの程度は最も軽いものだろう。このパターンの妻が「寂しい」と思う時は、「相談できる人が誰もいない」と感じる時である。
週刊ダイヤモンドの調査によると、以下のように、結婚3年未満ですでに半数以上が離婚を本気で考えたり、実際に離婚したりしている。結婚10年目になるとその割合は約7割にのぼる。
夫が離婚を考える周期は5年ごとであると先に述べたが、実は妻の方がもっと早い段階で離婚を本気で考えているのである。
早い段階から離婚を本気で考えていても、結婚3年目と10年目共に、実際に離婚に至っているのは8%である。割合が変わらないのは子供の成長を待っているからである。離婚を考えていても、「子供が成人するまでは」と思いとどまる妻は少なくない。
勢いで離婚を決断するわけではないので、妻から離婚を切り出すときは、「決心が出来上がっている状態」と言えよう。決心などずっと前からしているのだ。何年にも渡って決心を強固なものにして離婚するのが妻から切り出す離婚だ。
そういうわけで、妻自身の気持ちとしてはすっきりしており、寂しさを感じる事はそれほどない。
しかし、父親がいない事で子供が寂しそうにしている、とか自分の家に父親がいなくなった事を子供が妙に割り切って納得しているような様子を見せた時など、「子供に我慢を強いているのではないか」と思うと、自分の決断のせいで子供を巻き込んでしまっているのではないか、でもこの相談をできる人もいない、と寂しくなる事がある。
未婚による寂しさ
平成28年の厚生労働省の調査では8.7%いる未婚のシングルマザー。死別でシングルマザーになるより高い割合で、未婚のシングルマザーは存在している。
未婚である理由は、いわゆる「不倫」で、相手が既婚者だったからという人もいるが、他にも結婚予定だったが結婚前に相手が亡くなった、行方不明になった、などいろいろある。
未婚のシングルマザーが寂しさを感じる時は、夫婦が協力しあったり、夫がそばにいてくれたら、と思う事を最初から望む事ができない中で、それを望んでしまう自分もいるという事を認めた時だろう。
覚悟の上で子供を産んでいるのだからという気持ちの張りは常にあるが、日々の出来事の中ではその気持ちを維持できない時もあるだろう。
若いシングルマザーなら尚更、自分の人生経験の浅さに加え、未婚のシングルマザーに対する周囲の理解の乏しさ、行政の支援体制の不足などで行き詰ってしまう事もあるかも知れない。
そうした時に「もし父親がいる普通の家庭だったら…」と思ってしまい、寂しくはなるが、「でも、自分が決めたことだから。自分がしっかりしなければ。子供の為にも」と寂しさを封印して前を向いているのが未婚のシングルマザーである。
シングルマザーは寂しい:共通する「寂しい時」
これまで、夫との別れ方によって「寂しさ」の種類は違うという事を述べたが、「シングルマザー」に共通する「寂しさを感じる時」というものもある。
それは季節や時間帯や年齢に応じて感じる気持ちで、もしかしたらシングルマザーではなく夫がいる妻でも感じる、女性としての寂しさかもしれない。
ここではその「寂しさ」をいくつか挙げてみる。
夜になったとき
日中忙しく仕事をこなし、夜子供が寝付くまでシングルマザーは常に誰かしらと関わる生活をしている。子供が寝付いてやっと一人の静かな時間が訪れるわけだが、生理的に言うと夜は「セロトニン」の分泌が減り、幸福感を感じにくくなる。
そういった時間に今後の暮らしの事や、今問題にしている事などを考えると、明るい答えが出しにくくなる。
夜に考え事をすると思い詰めてしまうので、夜は早く寝るようにした方がよい。疲れているのに夜遅くまで考え事をして、過剰に悪い結論を出すくらいなら、寝てしまった方がよい。
老後を考えるとき
毎日仕事と子育てに明け暮れて、お金のやりくりに悩み、子育てのあれこれに悩み、1年はあっという間で、この繰り返しで歳をとっていく。「私の人生はこんなふうに終わっていくのかな」と思うと寂しくなる事がある。
子供が独立したら自分は一人ぼっちになる。それは誰もがそうなのだが、老後をどうやって暮らしていこうかと思う時、寂しくなることがある。こうした事も、夜考えてはいけない。日中の、心も体も疲れていない時に考える事が良い。
彼氏がいないとき
平成27年の厚生労働省の調査によると、女性の再婚率は約17%(共に再婚・女性のみ再婚)である。再婚はしないと決めている女性も多くいると思うので、この数字は低いものではないのかも知れない。
別れによって一度シングルマザーになると「もう結婚はいいや」と思ってしまいがちだが、再婚まで至らなくともパートナーを探す事自体は、子供の理解さえ得られれば良い事だろうと思う。パートナーによる我が子への虐待がない事が大前提であるが。
人生100年時代とも言われている今日、新たに心を許して支え合えるパートナーが出来るなら、この先を心強く生きていけるだろう。今は婚活サイトも増えてきている。彼氏がいなくて寂しいのであれば、そういったサイトも利用して積極的に活動してみるのも良いだろう。
子供が寂しいかも知れないと思うとき
理由はどうあれ、子供にとって父親がいないという状況は、「両親揃って子供が2人」という形がモデルケースであるかのような今の日本では、子供同士の世界の中でも社会の中でも、まだまだ生きにくいものである。
母も大変な思いをして日々暮らしているが、子供もそれは同じである。母が毎日疲れて仕事から帰ってきて、更に家事もこなしている姿を見れば、辛くてもそれを母に打ち明ける事ができずに我慢しているかもしれない。
母は子供を気遣っているかもしれないが、それ以上に子供も母を気遣っている。
子供が寂しそうに見えた時には、それを見て自分も寂しくなる、のではなく子供をしっかりと抱きしめてあげなくてはならない。このパターンについては自分の寂しさは後回し、である。
不安になるとき
これまで述べたことを含め、シングルマザーにとって不安材料は尽きない。シングルマザーと不安はセットだ。母子家庭も今や120万世帯を超えているが、世の中の認識としてはまだまだ「はみだし者」のようなイメージのようである。
これからの子供との暮らしを考えると不安しかない、という人もいると思う。寂しい感情を無理に抑え込むとうつに発展しかねない。マイナスな気持ちは否定せず、子供の目に触れない所できちんと発散した方が良い。お風呂で泣くのも良いだろう。
不安に思ってばかりで私はこの先生きていけるのだろうか、と思ってしまう事もあるかも知れない。しかし、「この先の不安」というのは誰もが感じている事だ。経済的に余裕があっても病を抱えているかもしれないし、両親揃っていても、その子育てに悩み将来を悲観している人もいるかもしれない。
不安を抱えているのはあなただけではない。だからしっかり不安を認めれば良い。不安を感じる気持ちから目を背けていると、子供の不安にも気づきにくくなるかも知れない。
総括:シングルマザーは寂しい=寂しさに打ち勝つ必要はない
記事のポイントをまとめておこう
シングルマザーは寂しいことについて
シングルマザーの別れ方による寂しさの種類
- 死別:夫がこの世にいない事による寂しさ
- 離別:なくなってしまった「家庭」の姿を思う時の寂しさ
- 未婚:子供に父親を味わわせてあげられない寂しさ
シングルマザー共通の寂しい時
- 夜、一人でいる時
- 老後の事を考えた時
- 彼氏がいたら良いのになぁ、と思う時
- 子供の気持ちを思いやった時
- 不安を感じる時
シングルマザーにとって、今の日本はまだまだ生きにくい。経済的にも不安だし、子供が学校や職場で肩身の狭い思いをしていないか心配だし、自分自身も「シングルマザーはアウトローなんだ」と感じる場面がある。
事情を知らない人に聞かれ、シングルマザーである事を話したら「あら、聞いてごめんなさいね」と謝られたりする。なぜ謝られなければならないのだろう、まだそんな世の中だ。
こんなに生きにくい世の中そのものが、寂しい。シングルマザーが市民権を得るまでの、過渡期であるのが今だ。寂しい事も多くあると思うが、大切な子供がいる。子供にとって頼れるのはあなただけだ。
子供に寂しい姿を見せまいとする必要はない。見せまいと思っても子供は分かっている。親が強くある必要はない。親と子供、双方の寂しさを持ち寄って分け合って生きていけばきっと、心が和み「幸せだなぁ」と思うような出来事にも出逢えるだろう。